
『セブン』や『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーが監督・製作総指揮を務めるNetflixの犯罪捜査ドラマ『マインドハンター』は、実在の事件を基にした精巧なストーリーテリングとリアリティのある演出で高く評価された。しかし、専門家によると、シリーズの中には事実と異なる点も存在するという。特にシリアルキラー、エドモンド・ケンパーの逮捕シーンに関して、不正確さが指摘されている。
『マインドハンター』のリアルな描写と評価
『マインドハンター』は、FBIの行動科学班がシリアルキラーの心理を解明し、犯罪プロファイリングの基盤を築いていく過程を描いた作品。実在のFBI捜査官による著書「マインド・ハンター:FBI連続犯罪プロファイリング班」を原作としており、1970〜80年代の犯罪捜査を詳細に再現していることで知られる。
元殺人課刑事のパット・ポスティリオーネは、事件描写の正確性を検証する番組『How Real Is It?(原題)』において、『マインドハンター』のリアリズムを高く評価した。特にシーズン2で描かれた「アトランタ児童連続殺人事件」の再現度は満点の10点と評し、証拠の収集方法やFBIの張り込み戦略が、実際の捜査手法と一致しているとコメントした。
ポスティリオーネは、アトランタ事件の捜査手法について以下のように語っている。
「FBIは、連続殺人犯が遺体を川に遺棄する可能性があると考え、特定のエリアを張り込みしていた。これは実際に私が経験したケースと同じ手法だ。警察は、特定のファストフード店を狙う強盗殺人犯を捕まえるために、その店を徹底的に張り込んでいた。このような"教育された推測"による捜査は非常にリアルだ」
こうした考察を踏まえ、ポスティリオーネは『マインドハンター』が多くの点で正確に事実を再現していると認めている。
ケンパー逮捕シーンの"ありえない"演出
しかし、一方で『マインドハンター』には「絶対にありえない」と断言する不正確なシーンもあったようだ。それが、シーズン1最終話(第10話)で描かれたエドモンド・ケンパーの逮捕シーンだ。
ケンパーは少なくとも8人の女性を殺害した実在のシリアルキラーであり、FBIのプロファイリング研究において重要な存在だった。『マインドハンター』では、彼が病院のベッドに片足だけ鎖で繋がれ、FBI捜査官1人と対峙するシーンがある。
この描写について、ポスティリオーネは「ケンパーのような殺人鬼が、こんなにも自由に動けるはずがない。彼のような人物には複数の看守がつき、徹底的に監視される。彼が片足だけ鎖で繋がれ、しかも自由に歩き回れるような状況は絶対にありえない」と批判している。
『マインドハンター』は、プロから見るとリアリティを損ねている演出もあるようだが、実際の事件を巧みに取り入れたリアリティのあるストーリーが魅力の作品。フィクションならではの演出がキャラクターの心理描写をより深め、ドラマとしての完成度を一層引き上げていると言えるだろう。『マインドハンター』シーズン1〜2はNetflixにて配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:Netflixオリジナルシリーズ『マインドハンター』シーズン1~2は独占配信中