『グレイズ・アナトミー』サンドラ・オー、新作ドラマで演じたアジア系アメリカ人像を語る

人気ドラマ『グレイズ・アナトミー』のクリスティーナ・ヤン役でブレイクし、スパイドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』では主演のほかに製作総指揮も務めたサンドラ・オー。そんな彼女が最新作の役柄について語った。米Hollywood Reporterが報じている。

アメリカ人の意識が強すぎてアジア人であることを否定

米HBOの新作ドラマ『シンパサイザー』は、ピュリッツァー賞を受賞したヴィエト・タン・ウェンによる同名小説を原作に、パク・チャヌク(『オールドボーイ』『スノーピアサー』)とドン・マッケラー(『ブラインドネス』)が共同制作した全7話のリミテッドシリーズ。南ベトナムの警部でありながら、実は何年も前から北ベトナム共産党政権の潜入捜査官として働いていた男、“ザ・キャプテン”を中心に描いたスパイスリラーで、キャストにはサンドラのほか、ロバート・ダウニー・Jr(『オッペンハイマー』)などがいる。

10年前に『グレイズ・アナトミー』を卒業したサンドラは、大きな力には大きな責任が伴うことを悟っている。だからこそ、アジア系アメリカ人としてのアイデンティティというニュアンスを表現することに情熱を注いでいる。

『シンパサイザー』の主人公である“ザ・キャプテン”は、1975年のサイゴン陥落の際にアメリカへの逃亡を余儀なくされる。ベトナム人の母と家にいないフランス人の父の間に生まれた彼は、どこにもなじめなかった。同作でサンドラが演じるソフィア・モリは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に似た大学の東洋学学部の日系アメリカ人秘書で、ザ・キャプテンと肉体関係を持つように。二人は余所者という感覚を共有することで絆を深めていく。

ザ・キャプテンが欧米で居場所を得られないことに悩むアジア系難民の視点を代弁しているのに対し、「とてもリベラルで現代的で解放された女性」だとサンドラが表現するソフィアは、自分は余所者であると感じないために自己防衛行為として同化する必要性を感じてきたアジア系アメリカ人の世代を代弁している。

サンドラは自身が演じるソフィアをこう語る。「彼女はアメリカ人であるということを、初期段階で少し強く意識し過ぎています。彼女は難民コミュニティの外で自分自身をどのように認識しようとしているかという点で、ザ・キャプテンに対してさえも反発するのです。例えば、あるシーンで人種差別主義者の教授から“エキゾチック”と呼ばれた時、彼女は自分がカリフォルニア州ガーデナで生まれたことを述べることで“アメリカ人”であることを強調し、その過程でアジア人であることを事実上否定するんです」

また、物語の中で、時間の経過とともにソフィアがだんだんとピリピリした雰囲気からゆったりした感じに変化することも述べた。「ある意味、本作への出演は、仕事上の人間関係に基づいた選択でした。そして、劇中だけでなく撮影の外の場でも、俳優としてどうありたいかという目的意識も含まれていました」

大きなプロジェクトのセットに初めて足を踏み入れたキャリア初期時代に(アジア系俳優にとって)あったら良かったと思うサポートを、今は自分が提供できるようにしたいと語るサンドラ。「そういうことに尽力するのが、自分にとって大事だと思うようになったのです」

(海外ドラマNAVI)

参考元:米Hollywood Reporter