映画『ネイバーズ』チーム再結集!Apple TV+『プラトニック』の愛おしさと懐かしさと面白さ

Apple TV+にて配信されているコメディドラマ『プラトニック』が抜群に面白い! 人は誰しも年を取る。日々、着実に年を重ねていくわけで、早く大人になりたいと思っていた子供時代から数年もしないうちに「もっと若ければ」「いつまでも若さを保ちたい」「若い頃は良かったな」などの感情が芽生え始めていく。人はそれを「中年の危機」と呼ぶ。突如として若作りを始めたり、古い友人に連絡を取ったり、年相応ではない無理な言動を取ったり…これらが中年の危機を迎えた人間に見られる特徴と言えるだろう。そんな「中年の危機」の“あるある”を描いた傑作コメディドラマが『プラトニック』である。ここでは本作の魅力を紹介しよう。

テーマは「中年の危機」と○○!?複合的なテーマを扱った傑作

『プラトニック』あらすじ

『プラトニック』の物語は、とある男女を中心に展開されていく。ある日、旧友であるウィル(セス・ローゲン)が離婚したことを知ったシルヴィア(ローズ・バーン)は、数年ぶりに彼と連絡を取る。シルヴィアは仕事を退職し、子供三人を育てる立派な主婦として毎日を過ごしていたが、一方のウィルはバーを経営しながら自由気ままな日々を送っており、離婚した妻のことを少々引きづっている節がある。全く持って正反対の生活を送っていた。かつては気心の知れた関係で、お互いバカをやって過ごしていたものだが、時の流れと放置してきた過去の産物によって、微妙な距離感が生まれてしまいショックを受ける二人。そんな彼らは、次第にお互いがお互いを必要とする関係性へと巻き戻っていく…。

中年の危機

本作は、40代男女に訪れた「中年の危機」を主なテーマとしている。自分もしくは友人の「離婚」を機に、人生について考えさせられ、楽しかった“あの時代”へと逆戻りし、人生を謳歌しようとする男女の姿が映し出される。さながら、名作TVドラマ『ラリーのミッドライフ★クライシス』を彷彿させるようなモキュメンタリー風のタッチやまるでアドリブであるかのようなリアルなリアクションが最大の魅力となっている。劇中で描かれるコメディ要素は、どこかバカバカしくてくだらないものではあるのだが、なぜか共感してしまうものも多く、なんとなく愛おしささえも感じてしまうのだ。

それは恐らく人間誰しもが過去を振り返り、仲の良かった友人との楽しい思い出や過去の栄光に浸りたい時間を必要としているからなのではないか。本作を視聴していると、観ている側にも、昔の淡い記憶を呼び起こさせる作用をもたらし、言いようのないノスタルジーを感じさせる。それは劇中で流れる楽曲やセリフの中に登場する懐かしいモノなどから影響を受けてのことだろうが、主人公二人が童心に帰って羽目を外す様にも憧れを抱いてしまうからなのではないかと筆者は思う。すでにその時点で筆者も「中年の危機」に似たような感情を抱いているのかもしれないが、筆者は未だアラサーの身であり、まだまだそんな年ごろではない。そこまで長く人生を経験していない未熟者がそんな感情を抱くのだから、本当の意味でのミドルエイジを迎えた視聴者ならば、さらに共感できること請け合いである。

男女の友情は成立するのか?

さらに本作は「中年の危機」と共に、もう一つ大きなテーマを扱っている。それは「男女の友情は成立するのか?」というものだ。異性の恋愛を抜きにした友情は果たして成立するのかという問題は人々の永遠のテーマである。いつの時代も映画や小説などの題材となり、そのたびにハッキリとしない答えが提示され続けてきた。本作でも、夫と子供のある女性と離婚してフリーになった男性との恋愛感情を抜きにした関係性が前面に描かれているが、傍から見れば奇妙な関係性であるといったことが周囲の人間の目線から明確に描かれているのだ。そういった描写を見ると、アメリカ人の多くは男女間の友情について半ば否定的な意見を持った人間が多いということが伺えるわけで、物語が進むにつれて、二人の関係性は一体どのように発展していくのかという、まさに実験バラエティのような印象も受けるのである。当初は、主婦としての生活に辟易したシルヴィアが、自由気ままなウィルへ連絡を取る形であったが、後半に入るとウィルからシルヴィアへ助けを求める連絡をするといった形へと変化していく。どちらから連絡を入れるのかという点からも注目である。

『ネイバーズ』チーム再結集!監督&主演コンビの相性

現代アメリカン・コメディの旗手

本作で監督・脚本を務めているのは、現代アメリカン・コメディの旗手と言っても過言ではないニコラス・ストーラー。2014年に公開され、全米でスマッシュヒットを記録した傑作コメディ映画『ネイバーズ』で知られる人物である。ストーラーと言えば、かつてはジム・キャリー主演『イエスマン“YES”は人生のパスワード』(2008)や『伝説のロックスター再生計画!/寝取り男はロック★スター』(2010)といった、大人になり切れずに拗らせちゃった大人たちの姿を描くことに非常に長けた存在である。その特徴は『ネイバーズ』シリーズにも顕著に表れていたが、『プラトニック』もまたその系譜を受け継ぐ作品に仕上がっている。

2大スターの共演

それでいて主演コンビにも注目だ。本作はローズ・バーンとセス・ローゲンという、こちらもアメリカン・コメディを代表する2大スターの共演となっている。
さらにこの二人のコンビと言えば『ネイバーズ』で夫婦役を演じていたことも記憶に新しい。本作が『ネイバーズ』シリーズの“続編”もしくは“スピンオフ”ですよと言われても、全く違和感がないほどに酷似した世界観と圧倒的な相性の良さを披露して魅せる。そして、二人のコメディ演技には、まったく衰えを感じさせない相変わらずキレの良いリアクションが多く、文字通り抱腹絶倒で、いつまでも人々を楽しませてくれる天性の才能を持った俳優たちであることを証明してくれる。ニコラス・ストーラー、ローズ・バーン、セス・ローゲンの三人による化学反応を体験するにはもってこいの一本と言えるだろう。

40代の男女が童心に帰って楽しむ様を見事に描き出した、傑作コメディ『プラトニック』。主人公二人の関係性がどのように変化するのかも楽しみだが、こういう大人になりたいなと思わせる、愛おしい“笑い”も非常に魅力的な作品である。

(文/Zash)

Photo:『プラトニック』Apple TV+にて独占配信中