不気味でクセが強すぎる『コンサルタント』をクリストフ・ヴァルツが怪演!彼は悪魔か、救世主か

ゲーム会社コンプウェアの若きCEOが事件(事故?)に巻き込まれ、ある日、コンサルタントを名乗るリージャス・パトフという男が代理で会社を仕切ることに。だが、こいつがまぁ~謎だらけ。仕事はできるが腹黒く、何を考えているかサッパリわからない。そして、このクセ者に扮しているのが、『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』で2度のアカデミー賞🄬に輝く名優クリストフ・ヴァルツ。まさにこのドラマ『コンサルタント』、彼の独壇場! 憎々しく、感情を逆撫しながら、次第に視聴者を引き込んでいく惡の華…一度足を踏み入れたら、一気見必至の作品だ。

Amazonオリジナルドラマ『コンサルタント』とは

『ザ・キャプチャー 歪められた真実』にも通じる監視カメラやネット社会の怖さを背景にしているが、このドラマは、シンプルにトラブルを起こした優良企業に巣食う一人のミステリアスなコンサルタント、パトフにスポットを当てている。それだけに、一筋縄ではいかないこのキャラクターを演じる役者の力量に成否がかかっていると言っても過言ではないが、クエンティン・タランティーノ監督をも虜にしたクリストフの怪演は見事の一言に尽きる。

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『コンサルタント』見どころ

クリストフ・ヴァルツの怪演

猛毒をポケットに忍ばせた老紳士…それくらいなら並みの役者でも雰囲気で演じることはできるだろう。しかしパトフは、理解しがたい奇行で周囲を不愉快な気持ちにさせながらも、巧みなコントロール術でCEO不在の会社をどんどん立て直していくかつてないキャラクター。いつ、どんな時でも会社に居座り(こいつ、寝てないのか?)、夜中の3時であろうが打ち合わせを強要する。気に入らない社員は容赦なくクビを切り、奇妙な会員制クラブで妖しさを醸し出したかと思えば、「今日から社内は裸足だ」と宣言したりする。ほかにも階段恐怖症(?)や異常な食へのこだわり、社員の盗撮も日常茶飯事と、挙げ出したらキリがないほどクセのカタマリ男。こんな役をしたたかに演じられる役者は、クリストフを置いて他にはいない。

社員がどんどん“パトフ化”

さらに気になるのは、なぜか会社が右肩上がりという点。のんびり遊び感覚で働いていた社員の意識が明確に変わり、役職ポストを巡って社員同士が掴み合いの喧嘩を始めるくらい社内は出世欲に満ちあふれてくる。ブリタニー・オグレイディ(『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』)演じる最も寛容だった企画アドバイザーのエレインもどんどん“パトフ化”し、逆にパトフに懐疑的なナット・ウルフ(『ネイキッド・ブラザーズ・バンド』『きっと、星のせいじゃない。』)演じるゲームクリエイターのクレイグは、どんどん精神的な闇の世界に堕ちていく…。この現象は実に興味深く、このドラマにミステリアスな魅力をプラスしている。

ベースにあるのは?

「これは悪魔の仕業よ!」というセリフが出てきたり、敬虔なカトリック教徒がパトフに翻弄されたり、キリスト教をベースにした節もあるが、ならば「パトフは悪魔の化身なのか?」と考えたら、個人的に急にチープに思えてきて、この解釈は却下。人格はともあれ、会社だけはどんどん大きくなり、急成長を遂げている、というところに着目すれば、「この作品は、荒療法で某自動車会社を立て直したカルロス・〇ーン氏からヒントを得た」と言ってもらったほうが面白いかも…まぁ、絶対にそんなことはないと思うけどね。
(文/坂田正樹)

Photo:『コンサルタント』@Amazon Studios