『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンが原作者の次回作をボイコット、共著者の人種差別を非難

大ヒット大河ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のファンが、原作者であるジョージ・R・R・マーティンの次回作をボイコットしている。どうやら、マーティンと共著したライター二人が繰り返し発している、人種差別的な発言が原因となっているようだ。

ファンから怒りの反応

米Varietyによると問題となっているのは、10月25日に米国で発売される新著「The Rise of the Dragon: An Illustrated History of the Targaryen Dynasty, Volume One(原題)」。本著は、ウェスタロスの最も強力な一族であるターガリエン家について、彼らの歴史や詳細を綴った「デラックスな参考書」として宣伝されている。先週、マーティンが本著をSNSで宣伝したところ、何千人ものファンから怒りの反応があったという。その多くは、共著者のリンダ・アントンソンとエリオ・M・ガルシア・Jr.夫婦による一連の“人種差別な発言”に対する指摘で、「リンダとエリオが関わるものは買わない」とコメントを書き込む人もいれば、マーティンに二人と関係を断つよう促す人もいた。

まずは、マーティンと夫妻の関係性を説明しておこう。三人は、マーティンの小説「氷と炎の歌」シリーズが、『ゲーム・オブ・スローンズ』としてドラマ化される前からコラボレートしている。1999年にアントンソンとガルシアがオンラインフォーラム「Westeros.org」をローンチした後、マーティンは「氷と炎の歌」シリーズ第四篇「乱鴉の饗宴」の事実確認者として彼らを起用。2014年には小説シリーズの図解版コンパニオンブック「The World of Ice & Fire(原題)」で、三人は共著者を務めている。

文脈を無視して抜粋された発言

夫妻をボイコットする『ゲーム・オブ・スローンズ』や小説シリーズのファンは、過去10年以上に遡り、夫妻がブログに投稿してきた人種差別的な発言を問題視している。例えば、2012年3月の投稿では、黒人俳優のノンソー・アノジーが、小説では白人として描かれているザロ・ゾアン・ダクソスに配役されたことに不満を示していた。その5カ月後には、米HBOが有色系の俳優を探しているとの報道があったにもかかわらず、ダーリオ・ナハーリス役に白人のエド・スクラインが決まったことに喜んでいたという。

またアントンソンは、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』で黒人俳優のスティーヴ・トゥーサントがコアリーズ・ヴェラリオン役を演じていることにも苦言。ヴェラリオン家とターガリアン家の共通の祖先について、「黒いヴァリリア人は存在しないし、この番組に登場させるべきではない」とブログに綴っている。

Varietyの取材で、アントンソンはネット上で広がるファンの非難に対し、「自分は人種差別主義者ではない」と主張。ファンは、「文脈を無視して抜粋された発言を批判している」とし、「私は世界観の構築にのみフォーカスしてきたのに、人種差別主義者のレッテルを貼られるのは迷惑だ」とコメント。そしてガルシアは、「マーティンの原作について自分が意見を貫くことで、攻撃を受けていると感じる」と語っている。

『ゲーム・オブ・スローンズ』では、主要キャラクターを演じるキャストがほとんど白人であることが非難されたため、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』では多様性を意識した配役がなされている。

マーティンは、夫妻がネット上でファンから非難の集中砲火を浴びていることを知っているそうだが、その批判の声が、将来的に三人のコラボレーションに影響することはあるのだろうか。今後の動向に注視しておきたい。『ゲーム・オブ・スローンズ』は、U-NEXTにて見放題配信中。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、U-NEXTにて毎週月曜日に新エピソードが配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:ジョージ・R・R・マーティン©HUBERT BOESL/FAMOUS/ ジョージ・R・R・マーティン公式Twitter(@GRRMspeaking)より