かつて国民的アイドルだった俳優が30代半ばになり、仕事が低迷する中、久しぶりに大きな作品のオファーが来たかと思ったら、スマホがハッキングされ、ヌード画像が拡散! 主人公のイタすぎる日々を過激な描写で綴る最新ブラックコメディ『超サイテーなスージーの日常』。『ドクター・フー』のローズ役で有名なビリー・パイパーが、自らの経歴と似たようなキャラクターを熱演。ストーリーと世界観に引き込まれる本作の魅力を深掘りしてみよう。
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国民的アイドルから落ち目の俳優に転落した主人公が直面する人生最大のピンチ
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本作の主人公スージー・ピクルスは、10代で歌手として成功し、その後、俳優に転身してSFドラマで国民的人気女優に。プライベートでも、大学教授のコブと結婚して一人息子を儲けるなど順風満帆な人生を送っていたが、30代半ばになった現在は落ち目の俳優になってしまっていた。そんな折、久々に大きな仕事が舞い込んだ矢先、ヌード画像が拡散されるという大ピンチに!
本作には、エミー賞受賞の大ヒットドラマ『Fleabag フリーバッグ』に通じる魅力があり、『Fleabag』にハマった人にはぜひ見ていただきたいのだが、その共通点は、主人公は周囲から見れば美しい女性であり、やりたい仕事に邁進している充実したキャラクターに見えても、仕事は思うようにいっていなかったり、家族との間に問題を抱えていたり、性格面にもやや難ありで、その上、性的欲求が強めなために日常生活に支障を来すといった、キャラクターのイタい要素を余すところなく映し出しているところだ。
スージーはとある人物と不倫をしてしまったばかりにトラブルを招いたのだが、「そんな、すぐにバレそうなことをなぜしちゃった!?」と突っ込まずにはいられない。
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『Fleabag』を見ていても、銀行の融資申し込みの場で急に服をめくり上げたりする主人公に対して「えっ、そんなことする!? やめておけばいいのに……」と突っ込みつつ、自分の気持ちや欲求に正直すぎる彼女は見たこともない斬新なキャラクターだったので、自分なら絶対にやらないけれど、主人公の破天荒ぶりに笑ってストレスを発散することができた。本作のスージーは、世間の注目を集めるセレブでありながら、あまりにも浅はかなのだが、『Fleabag』同様、突っ込みながら楽しめるところがオススメだ。
賛否両論が巻き起こりそうな過激でダークな表現も用いられているが、セレブの日常を覗き見する感覚や、「セレブだって私たちと変わらないんだ」と思える共感ポイントもあり、脚本の秀逸さに感嘆する。時に見苦しくても、スージーの動向から目を離せなくなる非常に面白い本作は、『Fleabag』のクリエーター兼主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジも大ファンだと公言している。
コメディでありながら深みのあるストーリーを“悲しみの5段階”をモチーフに描く
スージーは、彼女の長い芸能生活で最大の困難に見舞われるが、その困難を彼女が受容していく過程を、精神科医のエリザベス・キューブラー=ロスが提唱した、死や喪失などの悲しみを受け入れるまでの5段階のプロセス“悲しみの5段階”を8段階にアレンジして、ストーリーに盛り込んでいるのが面白い。
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「衝撃」「否定」「恐怖」「羞恥」「取引」「罪悪感」「怒り」「受容」という8段階を、シーズン1・全8話の各エピソードタイトルにし、段階に合わせた内容に仕上げている。これによって、コメディというジャンルにとどまらない深みのあるドラマになっているのだ。
特に、第1話の「衝撃」では、スマホがハッキングされ、ヌード画像が拡散されたことを知って衝撃を受けたスージーが、夫のコブはそれをいつ知るのか、仕事にはどう影響するのかなど、いろいろな思いが頭をめぐり、大きく動揺する中で、タイミング悪く自宅に取材チームがやって来て、撮影するために厚めのメイクを施されていくスージー。すぐにコブにはバレて、家を出て外をさまよう、化粧が崩れたスージーの顔面のアップが多用された演出には、見ている側もスージーと一緒に大きく動揺してしまう。
エピソードごとにこだわりが感じられる演出も魅力で、有力批評サイトRotten Tomatoesでは95%の高評価を受け、早くもシーズン2の製作が決定していることにも納得だ。
『ドクター・フー』で人気俳優となったビリー・パイパーの自虐のような熱演が凄い!
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本作の主演であるビリー・パイパーは、スージーと同じように15歳でポップ歌手としてデビューし、1998年にリリースしたデビューシングルはUKチャート第1位の最年少記録を樹立。その後、俳優に転向し、英国の最長寿SFドラマ『ドクター・フー』のヒロイン、ローズ役を演じて俳優としても一躍人気者になった。ビリーが共演したドクター役は、クリストファー・エクルストン(9代目ドクター)とデヴィッド・テナント(10代目ドクター)が演じたが、特にビリーとデヴィッドのコンビはポップな雰囲気が楽しかった。ちなみに、本作の劇中、スージーは“SFの女王”と呼ばれて人気を博しているが、ビリー自身を思い浮かべずにはいられない。
ビリーは舞台でも活躍し、英国に存在する舞台関連の賞レース6つすべてで主演女優賞を獲得した唯一の人物。国民的スターから落ち目の俳優に転落しているスージーとは異なるが、製作総指揮も務める本作では、自らの経歴と似た部分もある主人公を自虐的に熱演。ビリーだからこそ、スージーというキャラクターを体現でき、視聴者を惹き付けることができるのではないだろうか。
若くして芸能界に入り、人生のすべてを他人によって定義されてきたスージーが30代半ばになり、ようやく自分自身をどう定義するか考え始める姿や、彼女の感情の変遷を見事に表現したビリーの演技は高く評価され、本作で英国アカデミー賞(BAFTA)主演女優賞にノミネートされた。
『キング・オブ・メディア』も手掛けるヒットメーカー、ルーシー・プレブルはビリー・パイパーの親友
ビリー・パイパーは本作の主演、製作総指揮、そしてクリエーターでもあるが、ビリーと共に製作総指揮とクリエーターを担当し、さらに脚本も手掛けているルーシー・プレブルは、エミー賞常連の大ヒットドラマ『キング・オブ・メディア』の製作総指揮も務めるヒットメーカー。
ルーシーとビリーは、過去にもTVシリーズや舞台などでタッグを組んでいる親友同士であり、二人の経験が本作にも盛り込まれているというから興味深い。お互いの私生活を知り尽くしたルーシーとビリーが作り出す世界観だからこそ、よりリアルに感じられるドラマになっているに違いない。(文/清水久美子)
『超サイテーなスージーの日常』配信・放送情報
【配信】スターチャンネルEX
<字幕版・吹替版>独占日本初配信中。
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【放送】BS10スターチャンネル
【STAR1 字幕版】10月11日(火)より独占日本初放送開始。毎週火曜日23:00ほか
※10月8日(土)13:00より第1話先行無料放送
【STAR3 吹替版】10月13日(木)より放送開始。毎週木曜日22:00ほか
作品公式サイトはこちら
Photo:『超サイテーなスージーの日常』 © 2020 Sky UK Limited. All Rights Reserved.