刑務所から飛び出したマカレナに安息の地はあるのか?『ロック・アップ:オアシス』

真っ当な生き方をしていれば、絶対に知ることのない刑務所での生活。重罪を犯した犯罪者たちが収容されている「刑務所」という塀に囲まれた場所には、独自のルールが存在し、一種の社会が形成されている。より凶悪な罪を犯した囚人は刑務所内を取り仕切り、ほかの囚人たちを従えている。逆らったら最後…地獄のような生活が待ち受けている。まさに“塀の中のジャングル”と呼ぶに相応しい場所なのである。

そんな「刑務所」を舞台とした物語は、これまで長きにわたり、人々を惹きつけてきた。クリント・イーストウッド主演『アルカトラズからの脱出』(1979)、フランク・ダラボン監督による名作『ショーシャンクの空に』(1994)といった映画は、今なお語り継がれる伝説と化している。それだけではない。海外ドラマの世界にも「刑務所ドラマ」の傑作は数多い。古くは米HBO製作の傑作『OZ/オズ』、日本でも社会現象を巻き起こした“三大海外ドラマ”の一つとして名高いタイムリミット・サスペンス『プリズン・ブレイク』などがその最たる例だ。

近年は、オーストラリアの刑務所を舞台とした『ウェントワース女子刑務所』や、計7シーズンが製作された『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を初めとした「女子刑務所」をテーマとした作品も数多く存在している。そう、今まさに「刑務所ドラマ」は新時代を迎えているのだ。

中でも新時代を語る上で絶対に外せない作品が、『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』である。同作のファイナル・シーズンとなる『ロック・アップ:オアシス』上陸を記念して、ここでは、前作を簡単に振り返りながら、最新作の魅力を紹介しよう。

『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』とは?

人種、同性愛、暴力、ドラッグといった様々なテーマを扱いながら、自由を夢見る囚人たちの生活を映し出す…それが「刑務所ドラマ」最大の魅力である。それでいて視聴者は、重要人物がいとも簡単に命を落とすなど、先行きが気になりすぎて夜も眠れなくなるクリフハンガー描写といった“スリル”も同時に求めることだろう。それらのいわば「刑務所ドラマ」の真骨頂とでも言うべき要素に充実しているのが『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』だ。

物語の主人公は『ケーブル・ガールズ』のマギー・シバントス演じるマカレナ。不倫関係にあった上司に騙され、会社から金を着服した罪で懲役7年を求刑されてしまい、凶悪犯たちが集うクルス・デル・スール刑務所へとやってくる。殺人、強盗、売春…実に多種多様な罪を犯してきた囚人たちと肩を並べるには、マカレナはあまりにもかよわすぎた。

『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』シーズン4 場面写真

同房のアナベルには大きな借りを作ってしまい、ある囚人からは「恋人になろう」と詰め寄られ断るも、それがきっかけで別の囚人の反感を買ってしまう。挙句の果てには、刑務所内で一目置かれる存在であるスレマにまで目をつけられ…。入所早々、居場所を失ったマカレナだったが、暴動、脱獄騒ぎ、移送など、数々の修羅場を潜り抜けていくうちに、逞しく成長を遂げていく。そして、いつしか刑務所内で一目置かれる存在へと成り上がっていくのだ。

『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』は、刑務所の中だけを描いているわけではない。マカレナが生き残ろうと必死にもがく中で、塀の外ではマカレナの家族をも巻き込んだ900万ユーロを巡る熾烈な争奪戦も勃発。塀の中と外の2本のストーリーラインで視聴者の焦燥感を煽るのだ。

さらには登場人物の突然の死、看守たちの秘めたる思惑、毎話気になるところで幕を閉じるクリフハンガーといった、「刑務所ドラマ」に求める要素がふんだんに盛り込まれていることから、一度ハマってしまったら抜け出せない魔性の魅力を秘めた作品である。

ついにファイナル・シーズン!『ロック・アップ:オアシス』の見どころは?

『ロック・アップ:オアシス』マカレナ

そして、ついに『ロック・アップ』の物語が終幕の時を迎えようとしている。これまで4シーズンにわたり描かれてきた女子刑務所内での物語は幕を閉じ、ファイナル・シーズンでは刑務所を飛び出したマカレナたちの姿が映し出される。『ロック・アップ:オアシス』と装いを新たにするのだ。

前シーズンのラストで刑務所から出所したマカレナは、あろうことか宿敵だったスレマと手を組んでいることが明らかに。どうやら、共に強盗を生業としているようだが、一体なぜこのような展開になったのだろうか? その真実が明らかになるのが、ファイナル・シーズンだ。

『ロック・アップ:オアシス』マカレナとスレマ

強盗で生活費を荒稼ぎするマカレナであったが、その生き方に違和感を覚え、足を洗う決意を固める。そんなマカレナにスレマは、最後の大仕事として麻薬王から2000万ユーロものダイアモンドがあしらわれたティアラを強奪する考えを披露。これにより、かつての囚人仲間や友人たちが顔を揃え、計画を実行に移そうとする。計画が成功した暁には、砂漠の真ん中にある「ホテル・オアシス」に集合という手筈だったのだが…。

ファイナル・シーズンの舞台となるのは息苦しい塀の中の世界ではなく、解放的な砂漠のど真ん中にある「ホテル・オアシス」だ。刑務所を出所した女囚たちの逃避行ともとれる自由を謳歌する姿が映し出される。しかしながら、この「ホテル・オアシス」にも大きな秘密が隠されており、計画前と計画後のストーリー双方が同時に進行していく形をとる。つまり視聴者は、物語を前後から追体験していくことになるのだ。

『ロック・アップ:オアシス』スレマ

なぜ敵対関係にあったマカレナとスレマが手を組むことになったのか? という謎にもフォーカスされており、犬猿の仲だった二人が、まるで“ボニーとクライド”のような相性抜群の関係性へと発展している様は実に小気味いい。それでいて、もともと極悪人だった先天的な悪であるスレマと、刑務所で性格が一変した後天的な悪であるマカレナの対比も見事に描写されており、より二人の輪郭がハッキリしているのも面白いシーズンだ。

全体的には映画『オーシャンズ11』のようなクライム・アクション的な魅力に充実しており、どこか西部劇のような印象さえも与える部分がある。これまでのシーズンよりもエンターテイメント性に優れていると言えるだろう。自由を手にしたマカレナたちであったが、果たして彼女たちに安息の地はあるのだろうか? 囚人は塀の外でも囚人のまま……マカレナとスレマが歩む道の終着点に注目だ。

こちらもオススメ!『ウェントワース女子刑務所』

女子刑務所を舞台とした新時代の「刑務所ドラマ」。そのジャンルを確立した作品として知られているのが、Huluにおいて『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』と双璧を成す人気を誇る『ウェントワース女子刑務所』だ。

Huluプレミア『ウェントワース女子刑務所』シーズン8

同作は2013年にオーストラリアで放送が始まり、国内外で数々の賞を受賞してきた傑作。虐待を続ける夫への殺人未遂容疑で収監されることになった、ごくごく普通の主婦ビー・スミスを主人公に、「刑務所ドラマ」の常識を打ち崩した斬新な物語が展開されることから、大注目を浴びてきた。

同作が登場するまで、女子刑務所を舞台とした作品は、あからさまなエロ描写と暴力に次ぐ暴力によるグロ描写で成立しているものがほとんどだった。しかし、『ウェントワース女子刑務所』は純粋に脚本力というもので勝負し、細部まで緻密に練られたストーリー構成や魅力的な登場人物たちの存在感で視聴者を惹きつけてきたのである。

まさに近年大変な注目を集めている「女子刑務所ドラマ」の先駆者もとい元祖とでも言うべき作品なのだ。そんな『ウェントワース女子刑務所』のファイナル・シーズンとなるシーズン8がHuluでは独占配信中。オーストラリアで最も長く続いた長寿ドラマのラストも併せて楽しみたい。
(文/zash)

【配信情報】『ロック・アップ』&『ウェントワース女子刑務所』

Huluプレミア『ロック・アップ:オアシス』タイトル

『ロック・アップ:オアシス』(字幕版・吹替版)

4月19日(火)よりHuluにて独占配信スタート。毎週火曜日に1話ずつ更新
※『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』シーズン1~4はHuluで独占配信中

『ウェントワース女子刑務所』(字幕版・吹替版)

シーズン1~8がHuluにて配信中。シーズン8の最新エピソードは毎週火曜日に更新

【イベント情報】
Huluでは、本作のグランドフィナーレを記念して、シーズン1から登場しファンからの根強い人気を誇るビー役のダニエル・コーマックとフランキー役のニコール・ダ・シルバの2名を迎え、オーストラリアと中継を結んだトークイベントを4月16日(土)19:00~開催。詳細はこちら

Photo:『ロック・アップ:オアシス』Una producción GLOBOMEDIA en colaboración con FOX NETWORKS GROUP ESPAÑA ©GLOBO MEDIA, SLU (2019) Basado en el formato de ATREMEDIA TELEVISIÓN. 『ロック・アップ/スペイン 女子刑務所』シーズン4 Una producción de GLOBOMEDIA en colaboración con FOX NETWORKS GROUP ESPAÑA ©GLOBOMEDIA SLU (2018) basado en el formato de ATRESMEDIA TELEVISIÓN 『ウェントワース女子刑務所』シーズン8 © FremantleMedia Ltd.