『SHERLOCK/シャーロック』とは真逆の描写に財団も反応!? ホームズ家の新たな"ヒーロー"に胸アツ

あの名探偵シャーロック・ホームズに"妹がいた!"という大胆な設定で描かれた米作家ナンシー・スプリンガーのヤングアダルト小説シリーズを映画化した『エノーラ・ホームズの事件簿』。歴代のホームズ作品では体験したことのない新たなミステリー・アドベンチャーが本日よりNetflixにてついに配信された。【映画レビュー】

舞台は1884年、イギリスの田舎町。16歳(小説は14歳)の誕生日を迎えたエノーラが目を覚ますと、母親が謎の暗号を残して行方不明に。連絡を受けて二人の兄、シャーロックとマイクロフトが帰郷するが、お転婆娘のエノーラはこっそり家を抜け出し、母を探しにロンドンへ向かう。だが、旅の途中、テュークスベリー侯爵と偶然出会ったことから、政権を揺るがす巨悪な陰謀に(自ら?)巻き込まれていく。

男勝りの主人公エノーラを演じるのは、Netflixの大ヒットドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のイレブン役で知られるミリー・ボビー・ブラウン(製作も担当)。列車から飛び降りたり、母仕込みの柔術で敵を仕留めたり、ハードなアクションに挑戦しながら、恋と推理と大冒険を繰り広げる新たなヒーローを見事に演じている。そんな彼女に翻弄される周囲のキャラクターとそのキャスティングも、実に豪華で面白い。

その筆頭は、なんと言ってもヘンリー・カビル(『マン・オブ・スティール』)演じるシャーロック。筋肉の厚みでスーツがパンパンなのも新鮮だが、『SHERLOCK/シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ版のようなエキセントリックで気難しいキャラクターとはまさに真逆。優雅で思慮深く、エレーナに対する愛が深い。「お前は変人だ!」と兄マイクロフト(サム・クラフリン『世界一キライなあなたに』)はことあるごとにシャーロックを揶揄するが、"そういうアンタの方が神経質でピーピーうるさい変人だろ!"とツッコミたくなるくらい、本作のシャーロックは、"ザ・ジェントルマン"なのだ。

ただ、この心優しきシャーロックの描写にアーサー・コナン・ドイル財団が反応した。著作権が保護されている1923年から1927年に出版されたラスト10作品のみに描かれている、ホームズとしては珍しい"感情描写"が無断で使われたと主張しているのだ。その訴訟の行方は専門家にお任せするが、今回のシャーロックは、それくらいエレガントでエモーショナルな佇まいが際立つ"レアモノ"であることを強調しておきたい。

その他、エノーラに勉強やスポーツ、護身術を教え込み、突然失踪してしまうホームズ家の母親役に『ザ・クラウン』で本年度エミー賞助演女優賞にノミネートされ、映画『ハリー・ポッター』シリーズのベラトリクス役でも知られるヘレナ・ボナム・カーター、花嫁学校の教師ハリソン役に『キリング・イヴ/Killing Eve』で同じく本年度エミー賞候補のフィオナ・ショウ、殺し屋リントホーン役に『ゲーム・オブ・スローンズ』のバーン・ゴーマン、テュークスベリー侯爵の祖母役に『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』のフランシス・デ・ラ・トゥーアら芸達者な名優が勢揃い。『Fleabag フリーバッグ』『キリング・イヴ』でメガホンを執ったハリー・ブラッドビアのもと、競い合うように個性をぶつけ合う演技合戦も実に楽しい快作だ。

『エノーラ・ホームズの事件簿』は、Netflixにて配信中。

(文/坂田正樹)

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Netflixオリジナル映画『エノーラ・ホームズの事件簿』