今は亡きゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロの代表作『ゾンビ』をリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)で長編映画監督デビューを果たしたザック・スナイダー。"走るゾンビ"を生み出した彼が、本日より配信開始のNetflixオリジナル映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』で17年ぶりにゾンビ映画に帰ってきた。今度は"さらに進化したゾンビ"が登場するが、ここまで来ると、もはやゾンビ映画の域を超えたモンスター・パニック・バトル・ムービーだ!
『アーミー・オブ・ザ・デッド』あらすじ
ある事故をきっかけに、ゾンビが大量発生。壮絶な戦いの末、ラスベガスにゾンビを隔離することに成功し、人類は平穏な暮らしを取り戻すが、謎の男タナカが無謀な強盗計画を画策する。それは、ラスベガスのホテルの地下金庫に眠る大金強盗計画...。経験豊富な強者スコットは命知らずの傭兵たちをかき集め、大量のゾンビが巣喰う危険エリアへと突入する。
スナイダーが監督・脚本・製作を務め、主人公スコット役を『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのドラックス役で知られるデイブ・バウティスタ、その娘ケイト役を『マレフィセント』のエラ・パーネル、強奪計画の首謀者タナカ役を『モータルコンバット』が待機中の真田広之がそれぞれ扮している。
ラスベガス、精鋭集合、そして大金強奪...これはまさにゾンビ版『オーシャンズ』ではないか?! しかも、ラスベガスにゆかりのあるエルヴィス・プレスリーの「サスピシャス・マインド」(筆者が初めて買った洋盤。ちなみには初めて買った邦盤は「黒ネコのタンゴ」)で幕が開くなんて、ザック監督の遊び心、嫌いじゃない。
ちなみに"走るゾンビ"も彼一流の遊び心だと思うが、のちにジョージ・A・ロメロが、「ゾンビは走らない、進化も必要ない。だって死んでいるのだから」と米コミコンでコメントしたことも影響し、ザック監督版ゾンビが賛否を生むことになるが、「噛まれてゾンビ化する」ルールが守られていれば、個人的にはこのチャレンジ精神、大いにいらっしゃいという感じだ。
もちろん、「走るなんて許せない!」という方がいてもしごく当然、ゾンビ愛あふれる映画ファンにも、ぜひ本作を体感していただき、いろんな意見を交わしてほしいのだが、ここに登場するゾンビは、凶暴で、俊敏で、なぜか筋肉質で、とにかく強い。ラスベガスが彼らの隔離先というか"王国"になるわけだが、そこには何となくのヒエラルキーもあって、マントをひるがえし、颯爽と登場するイケメン(?)のゾンビ・キングも存在するから笑ってしまう(いい意味で)。まさに人類VS.ゾンビの構図だが、噛まれるたびに傭兵を亡くし、その分、敵が増えるという緊張感の中、壮絶な戦いが繰り広げられる様は、正直、ホラーを超えたモンスター・アクション大作だ。
真田の出番は多くはないが、ハリウッドでしっかり地盤を築いたからこそ生まれる風格がオーラとなって画を引き締める。「面白さ」という観点では、自信を持ってオススメしたいが、「ゾンビ論」という観点で、鼻息を荒くされている方には、ザック監督が生み出した進化系ゾンビを思う存分に論じていただきたい。
『アーミー・オブ・ザ・デッド』はNetflixで配信中。
(文/坂田正樹)
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Netflixオリジナル映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』