フランソワ・オゾンの最新作『Summer of 85』の主演フェリックス・ルフェーヴルの魅力とは?

世界三大映画祭の常連にして、世界中から新作を待ち望まれているフランス映画界の巨匠フランソワ・オゾンの最新作『Summer of 85』が、8月より公開となる。それに先駆け、本作の主人公アレックスを演じたフェリックス・ルフェーヴルの魅力に迫る。

『Summer of 85』は、英作家エイダン・チェンバーズによる青春小説「DanceonmyGrave」(邦題:おれの墓で踊れ)を原作に、運命的に出会った二人の少年の美しくも儚い初恋を描くラブストーリー。1985年の夏、フランスの海辺の町を舞台に少年が愛に溺れ永遠の別れを知るまでの6週間を色鮮やかな映像美で映し出していく。

本作の主人公アレックスは、進路に悩むシャイな高校生。アグレッシブで刹那的な生き方をしているダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン『EMMA/エマ 人工警察官』)と運命的な出会いを果たし、ひと夏の間に初めての恋と永遠の別れを経験することになる。そんなアレックスを演じたのは、『ル・シャレー 離された13人』、『Infidèle(原題)』など出演歴はあるものの、ほぼ無名の新人であったフェリックスだ。

17歳で原作小説と出会って以来、映画化を熱望していたオゾンにとって、主人公のアレックスは適役を見つけられなければ製作そのものを諦めようとしていたほど重要な存在。そんな中、「童顔で笑顔も子どものように愛くるしくて、生命感に溢れている。それでいて目にはどこか哀愁があり、80年代人気だったリヴァー・フェニックス(『スタンド・バイ・ミー』)の雰囲気がある」とフェリックスを一目見て絶賛し、オーディションで抜擢した。

フェリックスはアレックス役のオーディションに臨んだ際、その場で渡されたシーン以外は何も情報もなく、主役だということさえ知らなかった。それでも、オゾンに主役をできるかと訊かれたときには迷わず飛び込んだ。「もし1年か2年前の僕だったらちょっと戸惑っただろうね。だけど僕ももう大人になっていたし、『自分のやりたいことをやる、絶対に尻込みはしない』と、ずっと前に決めていたので、問題はなかったよ」

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見事に主役の座を射止めたフェリックスは、脚本を読んだ際「よく練られた、美しいドラマだな」と感じたと語る。「出会った頃のぎこちなさ、歩み寄り、初恋、成長、自己の解放......アレックスは人生の大事なことを一夏で経験する。経験した喜びと悲しみから、人生を前進させる力をもらい、成長していく」と読み解いて役作りに臨んだ。

フェリックスは、オゾンがアレックスの参考にしたというJ.D.サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」や、80年代に流行した『ラ・ブーム』、『スタンド・バイ・ミー』などを徹底的にリサーチ。「のちに作家になるアレックスには知性がある。飲み込みも早く役に対して意欲的だったフェリックスなら、その信ぴょう性を醸し出せると思った」という監督の予想通りの知的なアプローチでアレックスのイメージを完成させていった。役を演じることで一皮剥けていく自分自身と重ね合わせて、内気な少年が人生を揺るがすほどの初恋とその喪失を経て成長していく様を全身全霊で表現した。

本国での公開後は「フェリックスに心を奪われた」「完璧な美しさだ」とその知性を秘めた美少年ぶりが注目を集め、バンジャマンと共に、第46回セザール賞で有望若手男優賞にノミネート。「ロマンティックな作品の祭典」といわれるカブール映画祭でも新人男優賞を受賞した。

世界中が注目するフェリックスの名演技が堪能できる『Summer of 85』は、8月20日(金)より全国の劇場で順次公開予定。(海外ドラマNAVI)

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『Summer of 85』© 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES