シリアルキラーに注目せよ! 『デクスター~警察官は殺人鬼』

連続殺人鬼の視点からストーリーを語るという斬新な脚本と、そのオフビートなユーモアで日本でも中毒者が続出している『デクスター』。
昼は好青年、夜は連続殺人鬼という2つの顔を巧みに使い分ける主人公デクスター。そのあまりにリアルな人間像は、「現実にもいそうで怖い!」という気分にさせられるが、実際デクスターもビックリのシリアルキラーが現実にも数多く存在している。有名な連続殺人犯となると、映画やドラマ、小説のモデルになったりして、ファンまでいるから困りもの。まさに"事実は小説より奇なり"というように、ここでフィクションに影響を与えた有名なシリアルキラーを追ってみよう。

ジョン・ゲイシー
スティーブン・キングの『IT』のモデルであり、キラー・クラウンの異名を持つシリアルキラー。休日にピエロの格好をして福祉施設をまわっていたことからこの異名がついた。1972年から78年までの間に33名の少年から青年を殺害したことが判明。レイプした後殺害し、その遺体を自宅の床下や近所の川に破棄。建築業者として成功した地元の名士であり、チャリティー活動にも熱心だった慈善家だったことから、彼の逮捕は世間に大きな衝撃を与えた。彼の犯行の動機は自分がゲイであることを隠すためだったといわれているが、そのルーツには幼い頃から自分を罵倒し続けた父親への屈折した愛情と、父の「お前なんてホモになるんだ」という言葉が実現しつつある現状に怯えたという理由があったとか。

テッド・バンディ
1974年から78年の間に若い黒髪の白人女性ばかりを強姦殺害。30件以上の犯行を告白するも、未だその総数は明らかになっていない。女性を気軽に誘うだけのウィットやユーモアを持ち合わせ、そのハンサムなルックスで一見"まとも"な人物に見えたが、殺害後は遺体を切り刻み、さらに屍姦を繰り返すという残虐極まりない犯行を行っていた。他人に共感を覚えるという感覚が欠落していたともいわれ、ハンサムで頭脳明晰、共感力欠如という点では最もデクスターのモデルに近い人物かも。シリアルキラーという言葉は彼を指すために生み出された言葉だったことからも、後のフィクションに与えた影響は大きい。

ジェフリー・ダーマー
1978年から91年にかけて17人の少年、青年を殺害。ミルウォーキーの食人鬼との異名を取るように、死姦、遺体切断ののち、その肉を調理して食べていた。睡眠薬で眠らせてから殺害→解体というパターンを繰り返し、一時は自己流のロボトミー手術も行っていたが結局失敗。何度か被害者が逃げ出したことがあったが、その都度ダーマーは「ゲイの単なる痴話げんか」と言葉巧みに疑惑をかわし、犯行を続けていた。殺害は常に自身のアパートメントであり、その部屋は彼の逮捕後、ダーマーの神殿として有名に。事件発覚後に明らかになったその部屋は、それほどに異様な光景だったのだ。

ヘンリー・リー・ルーカス
ハンニバル・レクター博士のモデルとなったシリアルキラーのひとりであり、全米17州で300人以上を殺害したといわれている。人格異常の母親に虐待を繰り返され、14歳のときに初めて殺人に手を染める。その後母親も手にかけ40年の刑を宣告される。しかしベトナム戦争がドロ沼化し、財政が逼迫していた国の方針で早期釈放が決定。「釈放されたら人を殺す」と明言していたにも関わらず彼は釈放され、収容されていた刑務所からわずか数ブロックのところで女性を殺害。1983年に逮捕されたときに3000人の殺害を自白するが、実際に殺人罪が確定しているのは9件でしかない。

最後に連続殺人犯とは少々違うが、フィクションに絶大な影響を与えた人物として忘れてならないのが、エド・ゲインだ。幼い頃から母親によって厳格なキリスト教教育を受けてきたゲイン。その狂信的な母親の教育は、ゲインを狂気へと追い込み、やがて墓を荒らして人間の皮膚でスーツやランプシェードを作った。あの『サイコ』のノーマン・ベイツのモデルであり、『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルや『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスなど、彼をモデルにしたエピックなキャラクターがこれだけ多いということからも、ゲインの異様な犯行がどれだけインパクトがあったのかがわかるというもの。これぞ事実は小説より奇なりの象徴。

これら現実のシリアルキラーたちの犯行を見てくると、血への欲求に駆られてとはいえ、一応、正義の基準を持って犯行に及んでいるデクスターがまともに見えてくるから不思議だ。これぞ事実は小説より奇なりの象徴。
ちなみに『クリミナル・マインド』には実在のシリアルキラーの犯行の手口から心理分析までバンバン登場するので、さらに連続殺人鬼の奥深い(?)世界を知りたいなら『デクスター』と『クリミナル・マインド』を合わせ見るのがオススメだ。

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