昨年アメリカでスタートし、6月から日本でもオンエアが開始される『NIKITA/ニキータ』。昨シーズン始まった新ドラマの中である意味一番の驚きだったのがこのドラマでした。というのも正直、去年ニキータがリメイクされると聞いた時は、「またかよ!? なんでアメリカ人ってそんなにニキータが好きなわけ?」とあまり期待してなかったんですが、いざ始まってみたらこれが面白いじゃないの~! 何と言っても初のアジア系ニキータが誕生したというのが嬉しい話。演じるマギーQは美貌はもちろん、ジャッキー・チェン仕込みのアクションが持ち味ですからね、期待を裏切りません。
さてこのニキータ、私が「またかよ!?」と思ったように、もう再三リメイクされている作品なわけです。そもそもは1990年に製作されたリュック・ベッソン監督のフランス映画『ニキータ』がオリジナルとなるわけですが、この映画ではベッソンが当時の嫁アンヌ・パリローをヒロインに、政府の秘密組織によって暗殺者として養成されたニキータの孤独な戦いを描き、作家性に傾きがちなフランス映画にしては珍しく監督の個性とエンターテインメント性が両立したサスペンス・アクションとして大ヒット。ベッソンにとってもハリウッドへの足がかりとなったエポックな作品でしたが、アメリカにとっても"不良少女が無実の罪を着せられ、政府の秘密組織の手によって暗殺者に育て上げられる"というストーリーが相当ツボだったようで、93年にはブリジット・フォンダ主演で『アサシン/暗・殺・者』としてリメイクされることに。こちらのリメイクは設定もストーリー展開も、そしてヒロインの髪型までもほぼオリジナルと一緒という、完全にベッソンのオリジナリティに乗っかったせいか評判はいまいち。(たった2年前に公開された映画でまんま焼き直しじゃ仕方ない)オリジナルから逸脱しすぎてもダメだけど、忠実すぎてもダメ。この辺りがリメイクの難しいところです。
通常ならば1度リメイクされてはい、おしまい。なのですが、やはりあちらの人はニキータが忘れられなかったらしく、ほとぼりが冷めた1997年、今度はテレビドラマ『ニキータ1997』として復活。カナダで製作されたこのドラマは5シーズン続いたなかなかのヒット作に。さすがにドラマは長丁場なので、キャラクターの基本的な要素や、ストーリーの大まかな部分は原作と同じだけれど、途中からは2重スパイや複数の秘密組織が登場するオリジナルな展開に。ヒロインを演じたペータ・ウィルソンは初のブロンドのニキータ。これまでのニキータに比べてがっしり体型のせいか、いまいち垢抜けない感はあるものの、体当たりアクションで頑張ってました。
そして10年以上の時を経て、今回の『NIKITA/ニキータ』での再々リメイク。でも今回のニキータが成功したのは、これまでさんざん描かれてきたベッソン版『ニキータ』の焼き直しではなく、あれから3年後の設定にしたのが大きなポイント。誰もが知ってるニキータだけど、誰も知らないストーリーが展開されるという知名度と新鮮味の一石二鳥を見事にやってのけ、しかも映画版、ドラマ版それぞれの要素を取り入れたまさにハイブリッド版ニキータというわけです。
ちなみに先ほどアジア人初のニキータと書きましたが、1991年の香港映画『BLACK CAT/黒い女豹』も実は『ニキータ』のリメイク。キャラクターの名前からして変えられているのであえて外しましたが、これを含めるとわずか20年そこそこで4度のリメイクとなるわけで、"優れたコンテンツが持つ力"というものを実感すると共に、これだけリメイクを繰り返されても色褪せないアメリカ人(とカナダ人)の"ニキータ"という作品に対する深すぎる愛情に「どんだけニキータが好きなんだよ」とは思わずにはいられないのでした。(だって、このコラムの中で何回ニキータと書いたことか......(苦笑)
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