声優さん"ほぼ"リレー・インタビュー!<第2回:『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』多田野曜平さん・てらそままさきさん>【前編】

今回の声優さん"ほぼ"リレーインタビューは『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』オンエア記念として、主役のナッキー・トンプソン役の多田野曜平さん、そしてナッキーと敵対するニューヨークのマフィア、アーノルド・ロススタイン役のてらそままさきさんのスペシャル対談を敢行!
『ナース・ジャッキー』のエディ『White Collar 天才詐欺師は捜査官』のモジー、はたまたクリント・イーストウッドまで演じる個性派声優、多田野さんと、『ER 緊急救命室』のコバッチュや、『グレイズ・アナトミー』のオーウェンなど、イケメン声で魅了するてらそまさん。
『ボードウォーク・エンパイア』では敵対する役柄ながら、気心知れた仲ならではの絶妙なコンビネーションで、作品の魅力を語ってくれます。

『ER』を超えた!? 破格のドラマは吹き替え現場も破格のスケール!

―― 吹き替え版を拝見させて頂きましたが、みなさんすごくキャラクターに合ってますよね。そこにまず感激しました!

てらそま 「そうなんですよ」

多田野 「もう生き写しですよ、みんな(笑)。ね?(てらそまさんに同意を求める)でも俺はあんまり似てないけど(笑)」

―― このドラマは全米でも高い評価を得ている作品ですが、最初にドラマを見た印象はいかがでした?

てらそま 「面白かったですよ。今までのドラマとはちょっとタッチが違うところとか。例えばカポネだったら、普通は彼をメインにマフィアとしての彼の生き様といったところを追っていくけど、このドラマではカポネはサブ・キャラクター。しかも大物マフィアでもなんでもなく、まだ駆け出しのチンピラに近い存在で。こんな歴史に残るマフィアを脇役にして、それでいてそんな彼が今後どうのし上がっていくのか、サイドストーリーとして丁寧に描いていたりする点がすごい! とにかくすごく細かくストーリーが積み上げられてるんですよね、このドラマは。さすが賞を取るだけのことはあるな、と思います」

多田野 「いや~、僕もすごいと思ったよ。なんてったってスコセッシだし(笑)。それに古い話だけど新しいんだよね。CGとかも結構使ってるんでしょ?」

―― そうですね。背景とか。20年代のアトランティック・シティの街並みなんかはCGだそうです。

てらそま 「あれにはビックリしましたね」

多田野 「ハンパなくすごい! つまらない...と言うとちょっと御幣があるかもしれないけど、あまり楽しめないドラマだってあるものだけど、これは本当に面白い! ファッションとか音楽も、かえって新しく感じるし。特に音楽はね、毎回最高にいいんですよ。もうグっとドラマに惹きつけられる」

てらそま 「上手いですよね、ホント」

多田野 「それにてらさんも言ってるけど、本当にキャラクターが一人、一人良く描けてるんですよ」

―― それでいてこのドラマ、登場人物がとにかく多いですよね。

てらそま 「多いですねぇ(笑)」

―― (スタッフが)登場人物はここ数年の中でも一番多い作品なんですよ。

てらそま 「ホント、他の作品ではあり得ないくらい。いや、もう『ER』を超えましたよ(笑)。『ER』も相当多かったんですよ。一番多い時で45、6人くらい出てましたからね。このドラマはそれに匹敵します」

多田野 「そもそもキャスト表も人数多すぎて一マスに二人入ってるくらいですからね」

てらそま 「だからスタジオにずっと居られないんですよ(笑)」

―― (スタッフ)普通の吹き替えとは収録の仕方も違うんです。

多田野 「テストしなかったりしますからね。まるでPK戦のような緊張感(笑)。でも役者のテンションを大事にしてくれるし、もう少々噛んでたってOK! だから聞こえないシーンがあるかもしれないけど(笑)、気持ちが画面に伝わってるからOKを出してくれるんです」

てらそま 「でもテクニカル的に言っても、やっぱり1回目の吹き替えっていうのは新鮮だったりするんですよ。それが相手にもきちんと伝わってて、1度でOKが出やすいってこともあると思うんですよね。もちろん修正するべきところがあれば修正するんですけど、上手くミックスしてくれてるんだな、と」

多田野 「僕たちもみんなそれが分かってるから覚悟してるよね。テストでも録られてるかもしれないと思って常に緊張感を持ってる。だからもう毛が抜ける、抜ける(笑)」

―― ある種とってもスリリングなアフレコ現場ですが(笑)、そんな中でキャラクターを演じる上で気を配っている点はありますか?

 

てらそま 「もちろん。すごくあります。僕が演じるロススタインというのは強いんですがどこか浮遊してるような感じがあって、それでいてふっと怖さが出てくる。何かを露骨に強制することはないけど、真綿で締め付けるようにじわじわと攻めてくるというような人間の怖さを彼からはすごく感じるので、できるだけそういうセリフになるように気をつけてはいますね」

多田野 「僕は普段は昆虫とか小動物の声が多いんですよね......」

てらそま 「そうだね~(笑)」

多田野  「だから今回は神頼みと体力しかない!(笑)。僕、本番前に必ず愛宕山の愛宕神社に行って神様にこの番組の成功をお祈りして、なおかつ84段の石段で下半身を鍛えて、収録のある時間に一番ベストなコンディションになるように体力づくりをしてるんですよ」

てらそま 「でもそれで怪我してたよね?」

多田野 「そうなんだよ、ちょっと出世の階段から滑り落ちちゃってさ(笑)。3週目にちょっと足滑らせて、5段くらい落ちて、未だに背中が痛いんだよ。って、これじゃ神頼みの意味がない(笑)」

てらそま 「いや、その気持ちが大事だよ」

多田野 「まぁね。そのくらいの気合が入ってるってことで。最初のうちはね、役と同じようにサスペンダーもしてたもん(笑)。形から入らないとこの役はできないと思ってさ」

―― そうやって形から入ることは他でもよくあるんですか?

多田野 「僕の場合は劇団出身だからね。衣装を着て初めて役に入るというか。てらさんは違うかもしれないけど(笑)」

てらそま 「舞台に立つということに関して言うとそれもあると思うんですけど、吹き替えということでは僕自身はそれほど形から入ることはないですね。精神的なものは重視してますけど」

―― 声だけで演技をすることの難しさもあると思うんですが、自分なりのコツなんかはあるんですか?

てらそま 「いや、でもそれはそんなに変わらないよね?」

多田野 「うん」

てらそま 「声だけだからと言って、無理に声を届けようとはあまり思わないですね。例えば自分が演じているロススタインだったら、彼の心をいかに自分に置き換えていくかと考えてやっているので、それが結果的に聞いているお客さんたちに心地良く聞こえていればそれはそれでいいと思うし、芝居さえ立っていれば、むしろ心地良く聞こえなくてもいい時もあると思ってます。そういう気持ち的なものが一番気をつけていることでもありますね」

―― 隣で多田野さんが感心するように頷いてますが(笑)

多田野 「いやいや、てらさんみたいに良い声の人ならいいけどさぁ、俺なんか良い声なわけじゃないからさ(笑)。さっきの衣装じゃないけど、形から入って自分がその役を演じてるつもりでマイクの前に立たないととてもじゃないけど、ねぇ」

てらそま 「なに言ってるの。良い声じゃない。なんと言っても主役ですからね。これが初主役?」

多田野 「いや、初めてってわけじゃないのよ、一応。主役はやったことあるの。ま、昆虫とかだけどね(笑)」

 

始終笑いが絶えないお二人の対談ですが、話はいよいよ最深部へ。
"ナッキー"と"アーロン"が『ボードウォーク・エンパイア』の見どころを語ります!(後編に続く)

 

■プロフィール

多田野曜平:1962年3月10日生まれ。福岡県出身。舞台俳優・声優。主な出演作は、『ナース・ジャッキー』のエディ・ワルツァー、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のチュウシン、『TIGER & BUNNY』(オデュッセウスファイナンスCEO)など。

てらそままさき:1962年5月8日生まれ。大阪府出身。俳優・声優。主な出演作は、座・新劇『村岡伊平治伝』の村岡伊平治、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』の飛段、『仮面ライダー電王』のキンタロス、海外ドラマ『ER緊急救命室』のルカ・コバッチュなど。