【お先見!海外ドラマ日記】恐竜が看板娘のSFドラマ『Terra Nova』

ヒトはなぜ恐竜に魅かれるのだろう。
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昔観た怪獣映画への郷愁? いやいや、怪獣の多くは恐竜をモチーフに作られたものだろう。恐竜こそ、元祖・怪獣だ。それでは、自分よりはるかに巨大で強力な者への畏怖? 今では誤って踏みつぶせるほどに小さな爬虫類が、かつては我々人間など簡単に踏みつぶせるくらい大きかったという、生物の進化の不思議。さらには「太古のロマン」というフレイバーも加わり、恐竜という生き物は実に興味深い。

理由はどうあれ、今も昔も子供たちは恐竜が大好き。そして子供の心を引きずった大人(=私)も、恐竜には目がない。今から18年前(!)、かのスピルバーグ監督が映画『ジュラシック・パーク』で、恐竜をかつてないほどのリアルさとスピード感で描いた時、私はただただ動く恐竜見たさに、三度も映画館に足を運んだ。そして今、そのスピルバーグ御大が製作する新TVシリーズ『Terra Nova』で、再び恐竜が動き出すという。これを見逃すわけにはいかない。

物語は近未来の22世紀から始まる。環境汚染が進み、特殊なマスクをつけなければ安心して呼吸もできぬほどに空気が汚れた西暦2149年。雲も月も見ることができず、ナチュラル・フードを入手することも困難な、殺伐とした世界。この「人類が絶滅の危機に瀕している」感じ、どこかで見覚えがあるなと思ったら、『宇宙戦艦ヤマト』の冒頭部分に少し似ている。だがもちろん、このドラマにデスラー総統は出て来ない。この世界の住人が目指すのはイスカンダルではなく、"Terra Nova"だ。

"Terra Nova"とは「新しい大地」を意味するラテン語。ここでは、科学者が発見した「時空の裂け目」を通って行く、8500万年前の地球を指す。恐竜をはじめとする巨大な爬虫類たちが跳梁跋扈する原始世界に、人類を少しずつタイム・トラベルさせ、人類のための新しい大地にしようというのだ。

"Terra Nova"で生きるということは、恐竜の世界で生きるということ。当然、人間が恐竜に襲われるシーンが出て来るし、それがこのドラマの「売り」なわけだが、かといって始めから終わりまで恐竜と鬼ごっこしているわけにもいかない。思い出していただきたい。『ゴジラ』だって街を破壊するシーンは映画全体からみればほんの一部だったし、『ウルトラマン』に至っては3分間でカラー・タイマーが鳴り、帰り支度だった。どんなに恐竜が看板娘でも、物語の土台を支えるのはヒューマン・ドラマの部分なのだ。

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しかし誠に遺憾ながら、最初の2エピソードを観た限りでは、『Terra Nova』はこの人間ドラマの部分が弱い。シャノン家の5人家族を軸に物語が進行するのだが、彼らがアメドラにありがちな「多少の問題(息子が父親に反発したり、妻の元カレが彼女の職場にいたり)は抱えていても、実は愛し合っているの私たち」的な、あまりに理想的かつ類型的なファミリーに思えるのだ。大人から子どもで楽しめるドラマを目指しているのはわかるが、物語の展開が見ているこちら側の予想の範囲を超えないので、ついついDVRを早送りしたくなってしまう。下手をすると、恐竜のシーンだけ観てあとは全部早送り、とこのドラマをAV扱いしてしまいそうな自分が怖い。

今のところ、恐竜以外で最も期待できそうなのは、"Terra Nova"で独裁的に指揮権を握っているコマンダー・テイラーだ。テイラー役に扮するのは、あの映画『アバター』で主人公の敵役である大佐を、ハラワタ煮えくり返るほど憎たらしく演じてみせてくれた、スティーブン・ラング。現時点ではまだ明らかにされていないが、実は"Terra Nova"には隠された秘密(『LOST』のあの島のように)があり、テイラーはその秘密を握る重要人物のようなのだ。

そもそもがタイム・トラベルから始まっているSFだから、何が起こっても不思議はないし、むしろ色々起こってほしいとも思うが、でも出来ればその前に、もちっとだけ看板娘に暴れていただきたい。パイロット版ではそこそこ活躍してくれていたのだが、第2話はプチ・プテラノドン的な小さな翼竜に襲われる話で、今ひとつ迫力に欠けた。ヒッチコックの『鳥』へのオマージュもよいが、やはり巨大な恐竜がズシン、ズシンと歩き、アオーンと吠えるところをもっと観てみたい。CGI作成に時間とお金がかかるから大変だとは思うが、人間ドラマの部分が刺激に欠ける現状では、それこそがこのドラマの醍醐味であり、ライフラインでもあると思うのだ。

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20111008_c04.jpg『Terra Nova (テラノバ) ~未来創世記』
FOXチャンネルにて12/13放送開始!
毎週火曜23:00-23:55 他 ※初回のみ2時間スペシャル!
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