アカデミー賞授賞式前日の部外者取材が好評だったので、翌日にも会場を勝手に取材に行ってきた。現場はわずか12時間前にアカデミー賞式典が開かれていたのが信じられないくらい落ち着いていた。
会場前のストリートに設置された大掛かりなテントとそれを囲むフェンス以外は、いつもと変わらぬ様子だ。LAには珍しく雨が降っていたこともあり、少し寂しい印象。
すぐ前にあるディズニー旗艦映画館のエル・カピタンシアターでは『借りぐらしのアリエッティ』を絶賛上映中!
建物の中はカーテンやカーペットなど全て取り払われている。がらんとのんびりした雰囲気だ。
但し式典会場自体はまだ立入禁止。
だからボックスオフィス(映画鑑賞券を購入するところ)にいる警備員もヒマで携帯電話で遊んでいる(推測)。
毎年アカデミー賞式典が開かれるこの場所、この機会に一体どういうところなのか紹介したい。
住所がハリウッド通りにあるというだけで、実際の住所はロサンゼルス市である。誤解されている方が多いが、ハリウッド市というものは存在しないのだ。ロサンゼルス・ダウンタウンから西に20分。ハリウッド・ハイランドは便利に地下鉄も敷設している。ビバリーヒルズまで車で同じく20分少々だ。
観光名所のチャイニーズシアターを併設し、スターの手形足形が刻印されたウォーク・オブ・フェームに面している「ハリウッド・ハイランド」と呼ばれる巨大ショッピングセンターの中にアカデミー賞式典会場はある。少し目を上に向ければ、有名なハリウッドサインを拝むことが出来るし、ジェームズ・ディーンの『理由なき犯行』や、『ターミネーター』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロケ地として有名なグリフィス天文台もすぐ近く。
毎年世界中から数多くの観光客が詰めかける一大観光名所であ~る!
というのがハリウッドの一般の見方であろう。
しかし筆者はここにネガティブな印象を持っている...この観光名所のダークサイドを皆様にあえてお伝えしたい。
筆者こそハリウッドに憧れて来た日本人のひとりで、初めて来た時に非常にがっかりしたことを覚えている。そして今改めてここで取材をして、当時(12年前)抱いたネガティブな印象は決して思い違いでなかったと確信出きる。
まずはこの写真をご覧頂きたい。
アカデミー賞式典会場のすぐ横の通りだ。チープなお土産物屋さんが軒を連ねている。ちなみに筆者がアメリカに来て、一番最初に住んだ場所はこれらの店の並びである。
この会場を中心に、世界中の観光客相手にチープなお土産物が集中している。そして怪しい雰囲気のお店もたくさんある。この取材中に私の側を横切った白人の青年の一人はおそらく大麻を吸っていただろう。
会場のすぐ前でキッコーマンの醤油の箱でドラム演奏する人もいる。
しかし一番気をつけなければいけないのはどこかで見たことのある衣装に身を包んだ偽物キャラクター達だ。
彼らはチャイニーズシアターにも、コダックシアターにも全く関係のない人たちだ。面白いからと写真を撮るとチップをしつこく強請られる。あまりにもタチが悪いので昨年警察が動いて一斉検挙したが、彼らはまだ存在していたことに驚いた。
筆者が「幾らですか?」と試しに取材してみたところ、「完全にチップ制ですので、お気持ちを」と模範回答であった。しかしこの写真に映るソニックが中国人と思われる集団に対して「6ドル!6ドル!」と叫んでいたので、先ほどの模範解答は警察に通報されないための詭弁であろう。
テレビで観るきらびやかなアカデミー賞式典の様子とは、正反対の現実がここには存在する。
「あれは夢の世界で、やっぱり現実には存在しないんだ」という見方も出来るが、筆者はこの哀しい現実からあの素晴らしい虚飾の世界を創り出すハリウッドの仕事力に感嘆する。
今も昔もハリウッドは夢を見せるところだ。