『ナイトライダー ネクスト』壺井正監督に突撃インタビュー!

20120315_s01.jpg今年、日本での放送スタート以降、大きな反響を呼んでいるのが『ナイトライダー ネクスト』。20年以上も前に放送され、大人気となった『ナイトライダー』の続編であり、主人公はマイケル・ナイト(デヴィッド・ハッセルホフ)から、息子のマイク(ジャスティ・ブルーニング)にバトンタッチした続編です。そこで、作品の見どころを元祖『ナイトライダー』に続き『ナイトライダー ネクスト』でも演出を務める、壷井正監督に伺ってきました!

 
 
取材は『映画好きすぎ!』(Ustream配信の番組)の出演の前の時間でさせていただくことになったのですが、取材現場に現れるや否や、「ナイト2000のラジコンカーがうちにあるのよ。今日の番組で動かそうと思ったんだけどリモコンのアンテナがなくて。動かないんじゃただの車だし、持ってこなかったよ。残念だなー」と笑顔の監督。大物を迎えてちょっと張り詰めていた現場の空気が一気になごんだのでした。

――『ナイトライダー ネクスト』(以下、ネクスト)が日本で放送されることになり、この演出を監督にお願いしたい、という話がきたときの率直なお気持ちは?

壷井正監督以前からアメリカで『ネクスト』という作品ができたよ、って話を聞いていたんです。それで「いつになったら日本でやるのかなあ」と思っていました。『ナイトライダー』の続きだし、KITTはどうなるんだろう?デヴォンさんはいるのかね?・・・そんなことを考えていました。その後(演出の話がきて)やらせてもらえるなら喜んで!と。だってほかの人が演出するのは嫌ですから(笑)。本当に嬉しかったですよ。

――元祖『ナイトライダー』も手がけている監督ですが、今回『ネクスト』を演出するにあたり、前作と変えようと思った点は?

マイケルの息子、マイクはさすがに(ささき)いさおちゃんでは無理だな、と。マイクの年齢がすごく若いので、あの顔からいさおちゃんの声・・・は違うだろう、と思いました。

――マイケルとマイクの違いは?

今回のマイクは最初ちょっとワルなんですよ。僕としては、マイクに汚い言葉を使わせるのは嫌だなあと思うくらいのワルで。でも序章のマイクをちょっとワルにしないと本編に話を繋げられなかったんでしょうね。マイクは色恋もあるし。初代のマイケルはそれに比べたらいい人でした。

――逆にこれは"元祖"と同じにしたいと思った点は?

やはりマイクとKITTのかけあいですね。これだけは譲れません。KITTの声を担当する野島昭生さんともそういう話をしてね。ただの機械がしゃべってる風なら何にも意味がない。人間くささを出していかないと、と。これをはずしたらやる意味がないって。20120315_s04.jpg

――野島さんとの打合せで、印象に残っていることは?

野島さんは『ネクスト』をやることになって、昔の『ナイトライダー』の映像を見返したそうですよ。「うわー今の自分とずいぶん違う!」って思ったと。そりゃあ24年前ですからね。『ナイトライダー』の頃のいろいろなことが刷り込まれているの彼としては「じゃあ、どういう風に『ネクスト』のKITTとして始めれば壺井が喜んでくれるかな?」って思いつつ悩んだんだと思います。もう年齢も上がっているし、昔ほどの早いしゃべりもできないし、とね。

でも、『ネクスト』の一発目のアフレコのときに、野島さんが「はい、マイケル」って言った瞬間、ザワアアアアッって鳥肌が立ちましたよ。

(野島)昭生ちゃんとはいつも普通にしゃべっているんですよ。そのときはなんとも思わないんです。でも「はい、マイケル」って言った瞬間に、「ああ、戻ってきたんだ」って胸が熱くなりました。

あと、昭生ちゃんは、KITTを人間くさくやりたがるフシがあってね。彼がちょっと人間くささを出しすぎたかなーと思ったら僕が「ここはもう少し抑えて」と止めたり、逆に彼が「この最後の言い回し、ちょっと変えたんだけどどう?」と聞いてくれば「うん、これはいいんじゃないかな」なんて受け入れたり、そんなことを何度もしましたね。
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――KITTの役作りにはものすごい思い入れがあるんですね!

元祖『ナイトライダー』のときは本当に大変だったの。もう何回録りなおしたか。今考えるとなんであんなに時間がかかったんだ、というくらい何度もやりました。一つテスト版を作って聞いては「これじゃない」「いや、これもダメだな」とまた作り直して。最初は本当に苦しかった。でもあのときに苦労したからこそ、何年たってもすぐポンってできるんでしょうね。

――今更ですが、KITTのしゃべり方が今のような丁寧口調になった決定打はなんだったんでしょうか。

さっき話したような試行錯誤の中から出てきたんですけどね。KITTの話し方はアメリカだときっとそこまでキャラが出てないんだと思います。ときどき英語で『このセリフはちょっと人間っぽいいいまわしがありますよ』って指示が入ってるんですが、日本版のような感じではないでしょうね。でも人工知能だし、人間のお友達としゃべっているような感じ、でも感情はないコンピュータだから生真面目。でも人工知能だからいろんなことを学習していくんです。で、それを今度試してみる。そのときに人間っぽくないと面白くないじゃないですか。そのあたりを野島さんと相談して・・・そのあたりが難しかったですね。20120315_s03.jpg

――機械相手なのに、何か心が通っている感がありますよね。

全部が一方通行のしゃべりだと会話にならないじゃないですか。カーナビとしゃべってるのって嫌でしょ?だからこっちを向いてしゃべっていてほしい。ピコピコってナイト2000のライトが点滅するでしょ?あれを「口」だと思って、人間の口パクだと思ってあの光っている長さにセリフを全部いれよう!ってことにしたんです。だから愛着もってみていただけるんだと思います。

――『ネクスト』の映像を初めて観たときのお気持ちは?

初めて観たとき「(マイケル役の)デヴィッド・ハッセルホフが出てる」って聞いて、どこだどこだ?全然出てこないぞって探しましたよ。そうしたら最後のほうで、道の向こうでぽつんって立ってる。徐々にアップになって顔が見えたとき、「これか!老いたなー」って思いながらもすごい嬉しかったですね。そして観ながら「これはやっぱり(ささき)いさおちゃんが演ってくれるといいなあ」って思いましたね。

――マイケルが見えた瞬間に目頭が熱くなりますよね。

そう、しますね!懐かしいのとか老いたなってのとかいろんな思いで。でも「おまえは俺の息子だ」って言われて「え?そんな話今まで出てこなかったぞ!」って驚きましたが。

――『ネクスト』は、まだ収録中ということですが、これまでに収録してきた中で印象に残る場面は?

全体的にカラーが違うんです。アメリカの作品って「いいアメリカ」と「強いアメリカ」というカラーを出してくるんです。例えるなら『エアーウルフ』『特攻野郎Aチーム』は「強いアメリカ」を出してる。その頃の『ナイトライダー』は「いいアメリカ」なんです。『超人ハルク』もある意味「いいアメリカ」かな。でも『ネクスト』では「強いアメリカ」が出てきている。このトーンの違いは感じますね。あとはマイクがマイケルと比べて「大人」になってる。画面自体が昔と違って明るいって思いますね。あと、きれいな女の人がいっぱい出てくる。これはちょっと楽しいですね。昔は男性ばかりでしたからね。20123015_s02.jpg

――監督は『HAWAII FIVE-0』など様々な海外ドラマの演出をも手がけていますが、その中でも『ナイトライダー』とはご自身にとってどんな作品ですか?

なんだろう・・・「楽しい」作品かな。ほかの作品だと演出を考えているときにああだこうだと考えたり怒ったり大変って思うことがあるんですが、『ナイトライダー』だと「楽しく」やれているんです。まあ、全てが現実っぽい作り物なので、何かあってもどうにでもなるさ、って気持ちもあるんですけどね。開き直れるというか。

――DVD&ブルーレイになることで、ようやく全国のファンが『ネクスト』を観れることになりますが、海外ドラマNAVIを見ている方にメッセージをお願いします!

全部見てください!(笑)

『ナイトライダー』ってこんなにいろんな話が作れるんだ!ってことを楽しんでほしいです。世界的な規模の話から『コレ、個人的なことじゃない?』ってくらいものすごくちっちゃい話まで彼らは一生懸命解決しようと思って動いてるんです。そう思うと(マイクとKITTは)非常にかわいい二人ですよ。また周りにいる人もおもしろいキャラクターですし。昔はマイケルとKITT中心の話で、周りにいる人は二人の後押ししかしてなかったが、『ネクスト』では周りの人の話も進行しているので、そっちも見てほしい。大人になったマイクと昔と変わらないKITTさんを楽しんでほしいですね。

――最後に...監督がいちばん好きなキャラクターは?

そりゃもちろんKITTですよ! 他の人がどんなキャラクターを勧めようとも、どんなきれいなおねえさんが出てこようともやっぱりKITTですね。KITTがしゃべらないとこの番組が成り立たないですからね!(笑)
(海外ドラマNAVI)
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壺井 正(ツボイ タダシ)
20120315_s07.jpg9月3日生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。グロービジョン入社後水曜ロードショー『ベン・ハー』で演出家デビュー。代表作『マイコン大作戦』(NHK)『白バイ野郎ジョン&パンチ』(NTV)『ナイトライダー』(ANB)『俺がハマーだ!』(TX)『チャームド・魔女三姉妹』(NHK)『こちらブルームーン探偵社』(NHK)『美しき日々』(NHK)『ロード・オブ・ザ・リング三部作』(劇場)『宮廷女官チャングムの誓い』(NHK)『イ・サン』(NHK)『ドクター・フー』(NHK)『朱蒙』(DVD)『ザ・ケープ』(WOWOW)『13デイズ』(NTV)『名犬ラッシー』(劇場)『トランスポーター』(テレビ朝日)他多数。
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『ナイトライダー ネクスト』Blu-ray BOX は、2012年7月3日(火)にフジテレビジョン/ポニーキャニオンから発売。26,000円(税込)
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