驚異的な観察眼で事件の糸口を見出していく主人公パトリック・ジェーンの活躍を描くクライム・サスペンス『THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル』。そのジェーンのお目付け役であり良き相棒でもあるテレサ・リズボンを好演中のロビン・タニーが来日。映画『バーティカル・リミット』のプロモーション以来10年ぶりの来日となる彼女。取材当日は少々時差ぼけに悩まされていたそう。
―― 時差ぼけの方は大丈夫ですか?
自分だけは時差ボケにならないと思ってたんだけど...(笑)。とにかく急に来るわよね。さっきまで普通にしてたのに、いきなり強烈な睡魔が襲ってくるんだもの。みんなに何日くらい時差ぼけが続くのか聞いて回ってるんだけど、なかなかいい答えが見つからないの。
―― がっつりお肉を食べるといいって聞きましたよ。ステーキとか、焼肉とか。
そうなの!? 他に何かいいアイデアはある?
―― 機内で寝ないとか、太陽の光を浴びるとかですかね。
太陽は聞いた事あるわ! でもお肉は初耳ね。いいこと聞いたわ!(笑)
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そんな時差ぼけ談義から始まったインタビューは、彼女の絶妙なユーモアのセンスとプロ意識の高さが随所に見受けられるものに――。
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―― では早速本題ですが、こういう男女のコンビが登場するドラマの場合、往々にして恋愛の空気を匂わせるものですけど、このドラマの場合はそれがあまりないのが新鮮ですね。
これに関しては、見る人それぞれに感じ方が違うみたい。二人は上手く行くのかな? とか、実はお互いを想ってるんじゃないかって言う人もいるし、あなたみたいにそうじゃないって捉える人もいるし。
―― もちろん二人の間に確固たる信頼関係があるのは伝わってくるんですけど、あえてそこに恋愛の匂いを加えていないように感じるんですよね。
そうね。TVシリーズの場合、まるっきりプラトニックな間柄の男女の主人公ってなかなかレアな存在よね。お互いに信頼して親しくなって、それで寝ないっていうのは難しいでしょ(笑) ただ、リズボンとジェーンについては、二人ともお互い以外に目を向けるところがあるのよね。ジェーンはレッドジョンに対する復讐心があって、まだ妻子のことに囚われてるし、リズボンはリズボンで、仕事と結婚しているような状態だから。
―― これまでリズボンの過去についてはあまり語られてきてないですけど、シーズン3ではその辺りも掘り下げられるんでしょうか?
シーズン3では少しずつ彼女の過去も明らかになってくるわよ。それに新しいボーイフレンドが出来るの。もちろん相手はジェーンじゃないわよ(笑)
―― そうするとまた話がややこしくなっちゃいますもんね(笑)
これはよく言われていることなんだけど、例えばシビル・シェパードとブルース・ウィリスが主演した『こちらブルームーン探偵社』はすごく人気があったシリーズだけど、ドラマの中で二人が恋人になったからシリーズが終わったって言われてるし、『Xファイル』なんかもそうよね。実際恋人になったはいいけど、そこから先はどうするの? ってなっちゃうもの。これがサブ・キャラクターなら全く問題ないんだけど。リグズビーとヴァンペルトが恋人になったり、離れたりするのはOKなのよ。二人は常に同じシーンにいるわけじゃないから。
でもジェーンとリズボンは常に同じシーンにいるし、そこでロマンティックなムードを匂わせると、二人が事件の事を話していても、視聴者は二人のロマンティックな関係にばかりフォーカスしてしまって、結局ドラマの本筋から離れてしまうことにもなりかねないから、難しいわよね。でも私、ラブシーンは好きなのよ。特にキスシーンは。だってセリフが少ないし、寝っ転がってできるでしょ(笑)
―― リズボンのキャラクターを作る時に参考にしている俳優さんなどはいるんですか?
尊敬する俳優はたくさんいるわ。メリル・ストリープもそうだし、ダニエル・デイ・ルイスもそうだし。それに最近は若手の女優たちの中にも上手い人が大勢いるわ。でも大事なのは自分がどういう人間なのか、そしてどういう役者なのかを受け入れる事だと思うの。何か演じるたび、「メリルならどうする?」なんて考えて、彼女と自分を比較するような事をするのは良くないと思うの。
―― 自分とリズボンの違いなどは意識するんですか?
そうね。リズボンは感情をあまり表に出さない方だけど、私自身は往々にして出すタイプね。でも中身的な部分より、フィジカルな部分で違いを感じる事が多いの。例えば歩き方なんだけど、私はクセでつま先をこうやって開いて歩いちゃうの。(と言って実演し出す) だけどこの歩き方で銃を構えるのはすごくおかしいから、「こんな風に歩いちゃダメ!歩いちゃダメ!」っていつも自分に言い聞かせてるのよ(笑)でもそうね、これは仕事量の違いもあるんだけど、映画に比べてTVシリーズの方が、自分がどういう人間であるかというのが役に投影されやすい気がするわ。
―― それはシリーズが長期化してその分キャラクターに対する掘り下げも映画より深くなってくるからですか?
それもあるけど、同時に脚本家たちが私を念頭にリズボンのキャラクターを描くようになっているという事もあると思う。シーズン1の頃に比べると今のリズボンは笑うようになったし、ジョークも言う。(クリエイターの)ブルーノ(・ヘラー)に「シリーズが始まった当初はリズボンが笑ったりジョークを言う事なんて思いもしなかった」って言われた事があるんだけど、彼は「今はあなたのリズボンだから」って言ってくれるし、そうやってキャラクターも変化していくのね。リズボンがいて、私がいて、それがシリーズを重ねるごとにどんどん合体していくのよ。だからこそ、演技をする上でいつもベストを尽くさなければと心がけているわ。
すごくシビアな話だけど、やっぱり演技が上手くなかったり、不評だったりすると、どんどん出演シーンが削られていくのよ。新しい台本をもらって読み進めたら出演シーンが4つしかない、なんて事が実際にある。ものすごくシビアよね。だから自分の演技の水準を下げずにがんばらなきゃって気持ちは常に持っているわ。
―― アメリカでも高視聴率が続き、シリーズを通して高い水準が保たれてると思うんですけど、長い間モチベーションを保つ秘訣はどこにあるんでしょう?
やっぱりサイモンの存在は大きいわ。彼は素晴らしい俳優だし、その彼が共演者であるというのはすごく大きな助けになってると思う。それと脚本ね。このドラマはとても脚本が優秀だから。あとは失業したくないというのが大きなモチベーションね(笑) ちゃんと演技しないで番組を下されちゃったら困るし(笑)
―― 『メンタリスト』を放送しているCBSはネットワーク局の中でも視聴率に対するハードルが一番高いと思うんです。その中で視聴率に対するプレッシャーというのも、他の局の番組より大きいんじゃないかという気がするんですが、その辺りはどうなんでしょう?
ラッキーだったと思うのは、このドラマは1話目からかなり視聴率が良かったことね。アメリカのドラマはすぐに打ち切られたり、1シーズン続かないいわゆるバブル・シリーズが本当に多いし、他のシリーズに出演している私の友人も、いつまで続くか分からないという不安感を持って仕事をしている人たちが大勢いるわ。
そう考えると、このドラマが順調なスタートを切れたことはかなりラッキーだったと思う。無職になりたくないという冗談はさておき、質を落とさず作り続けられる限り、私はこのドラマに出演したいと思ってるわ。仕事があったりなかったりするのはこの仕事の常だけど、20年間女優をやってきたプライドもあるし、質を落としてまで、お金のために仕事をしたいとは思わない。そういう意味でもこのドラマは本当にいい番組で、私自身誇りに思っている作品なの。
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しっかりとした考えを持ちつつ、時にはユーモアを交え、身振り手振り、時には実演までして質問に答えてくれるロビン。さらに写真撮影でも彼女の茶目っ気が爆発。カメラマンさんのとある要望に「こんなこと、疲れてなきゃやらないわよ~」と言いながら、実際はノリノリでポーズ。実にサービス精神も旺盛で魅力的な女性でした。