【お先見!海外ドラマ日記】"妻たち"系ドラマのダークホース、『アーミー・ワイフ』が ついに日本に上陸する!!

20130502_c03.jpg今年7シーズン目を迎えた、 "ワイフたち(妻)" を題材にした優良ドラマがある。
去る3月に最新シーズン放送をスタートさせた本作はスペシャル・ゲスト・スター枠でブルック・シールズを出演陣に
追加したことでも話題だ。

米国で放送しているのは、Lifetime(ライフタイム・テレビジョン)というネットワーク。
Lifetimeといえば、未来を担うデザイナーたちにファッションの腕をバトルで競わせるリアリティーショー『プロジェクト・ランウェイ』やジェニファー・ラブ・ヒューイットが秘密の顔を持つ主婦を、変わらぬ魅力的なルックスで演じるドラマ『クライアント・リスト』を現在放送する、女性視聴者をメインのターゲットにしているテレビ局 だ。

2007年6月に Lifetimeで第1シーズンがお披露目された『アーミー・ワイフ』は、10代後半~50代(特に20~30代)の女性たちに圧倒的な支持を受け、Lifetimeの当時の視聴記録をいくつも塗り替えたという。
6年前、僕はまだ米国には住んでおらず、6月はちょうどハリウッドの芸能エージェントに売り込みを必死にかけるため、ロサンゼルスを短期で訪れていた時期で、その頃はLifetimeのチャンネルのこと自体もまだ知らず、男の視野ではつい見過ごしてしまっていた。しかし人気が根強いことを後になって知った。
製作があっという間にキャンセルされるドラマ作品が少なくない中で、海外ドラマブームに日本でも火がつき始めた07年当時から現在まで、人気の落ちないドラマの存在は貴重である 。
女性目線の物語でありながら、サウスカロライナ州のチャールストン空軍基地でもロケーション撮影されているスケール感の大きな映像と舞台も人気の理由かもしれない。

その『アーミー・ワイフ』が、日本ではひかりTVで独占初放送されることが決まり、ついに海外ドラマファンの目に届くことになった!

しかしなぜ、このドラマはこれほどに長寿となり得たのだろう?
その理由を僕なりの目線で探ってみた。

このシリーズは、一見 "ソープオペラ(メロドラマ)的" に見えて、実はそうではない部分に好感が持てる。米国の軍人たちを夫に持つ妻たちが直面する生活や条件というのは、全てが美しかったり、楽しさが溢れているものではない。夫が海外の戦線や基地に長期で配置される間は、留守の家庭を守らなければならず、淋しさとも闘わねばならない。軍の規律や暗黙の重圧を、夫だけでなく妻も子も受けることがある。また夫の任務は常に "死" や "危険" と隣り合わせであり、その悲哀がドラマの背後に静かに流れている。世界各地の戦闘地に配属されている軍人とその家族の、"今の時代の、目の前にある葛藤、トラウマ、恐れ" を描いているのだ。もちろん愛情のもつれや微妙な人間関係が物語の軸になるとしても、話題がロマンスやセックスばかりになりがちな女性向けドラマとは一線を画している。20130505_o02.jpg

そして、それらの劇的な環境にある妻たちを決して重苦しくではなく、むしろ生き生きと表情豊かに描いているのがいい。突然若い軍人の妻となる主人公ロキシーを演じるサリー・プレスマンは、軍の内外にある階級差別をものともせずに突き進む痛快さがある。美人でもグラマラスなタイプではないことにむしろリアリティーを感じさせ、愛されるキャラクターだ。

もうひとり、陸軍中佐の妻デニスを演じるキャサリン・ベルも目を引く。
それは彼女が美人だからではなく、抱える問題が複雑だからだ。満たされた生活を送っているように見えるデニスは、世間が眉をしかめるような家庭不和に悩み、それでも慎ましく懸命に向き合っている。特に、軍人一家にはあっては
いけない問題を彼女はどうクリアしていくのか...? そのことに視聴者はつい注目してしまう。
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一筋縄ではいかないキャラクターたちを演じる女優陣たちは、まだ日本の市場ではほとんど知られていない存在だろう。だが群像劇という のは、『GLEE』や『HEROES/ヒーローズ』などのように "スターになる直前の人たち" が演じるほうが設定を信じ込める。『アーミー・ワイフ』のクリエーター、キャサリン・ファゲイトは後に映画『バレンタインデー』や『ニューイヤーズ・イヴ』(これらは "人気スター" ばかりの配役になってしまった...)で脚本家としても起用されているが、登場人物が多くても無理なく見せる『アーミー・ワイフ』を生み出した手腕が評価されてのことだろう。

決して深刻すぎず、コメディ的な要素さえあるこのドラマだが、
女優/俳優たちが大袈裟に演じていない所が僕は好きだ。
デニスの夫であるを演じるテリー・セルピコには陸軍中佐らしい説得力と渋さがあり、その他の男性陣にもほどよい落ち着きがあり、軽くない。
全体的に、騒々しさのない、しかし個性がしっかり際立つ第一シーズンのオリジナルキャストは、エイプリル・ウェブスターという一線級のキャスティング・ディレクターが配役に関わっ た。
(※ エイプリルは、J.J. エイブラムス製作の『エイリアス』『LOST』『FRINGE/フリンジ』『スタートレック』シリーズ『M:I3&ゴースト・プロトコル』など、歴代のヒット作の配役を手がけてきた、業界でも知る人ぞ知る存在)

アメリカでは、すでに長寿ドラマの仲間入り。
日本では、ここから初めて認知されるフレッシュな顔ぶれたち。
現代の、軍の基地の中での結婚生活という、日本では通常知り得ない、
意外でもある硬派な舞台設定。

いったい、この "妻たち" のドラマ中から、日本では誰が "次のスター" となっていくのか?
とても楽しみな作品である。