『ドクター・フー』16年前の打ち切りは「BBCの愚かな決断」と製作者

11月23日(土)にイギリスなどで50周年記念エピソードが放送される『ドクター・フー』。本作が1989年に一度打ち切られたことについて、製作総指揮者のスティーヴン・モファットは歯に衣着せぬ口調で批判した。

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英Radio Timesでモファットは次のように述べている。「『ドクター・フー』は50年間にわたってずっと放送されていたわけではない。BBCの紛うことなき愚かさと許し難き無知によって(すみません、でもこれは言っておかなければ)、16年間の空白期間があるのです」

それでも、この空白期間があったために『ドクター・フー』は特別な番組になったとも。「おかげで不朽の存在になりました。『ドクター・フー』は今後もずっとカムバックし続ける番組になったのです。打ち切りにするには覚悟がいりますよ。私みたいな者に愚か者とののしられ、大勢の人たちからもそのように思われてしまうんですから」

モファットはさらに、『ドクター・フー』が生きながらえたのは、イギリスのTV界では前例のない形で、視聴者が打ち切りに対してノーを突きつけたからだと指摘している。「BBCが首をたてに振らなかった時期にも、ラッセル・T・デイヴィスやマーク・ゲイティス、ポール・コーネルのような人たちが小説を執筆していました。アメリカではアクションを盛り込んだTVムービーが作られ、ハリウッドで映画化するウワサも後を絶たなかった。メイキングを詳細に記した『ドクター・フー』の雑誌は、TV番組が作られていないときでも立派に刊行され続けていたのです」

なお、当の打ち切りの責任者で、モファットに「愚か者」と断罪されてしまった元BBC経営委員長のマイケル・グレイドは、最近刊行された本のなかで、「打ち切りにしたのは私だが、当時は正しい決断だった。番組は情けないほどに死に体をさらし、道を見失っていた」と述べている。

16年前の打ち切りが正しかったかどうかは別にして、『ドクター・フー』がいまや、イギリスの大衆文化に深く浸透しているのは間違いない。これからも視聴者を楽しませ続けてほしいものだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ドクター・フー』
(c)BBC 2008