世界中を興奮の渦に巻き込んだ『24-TWENTY FOUR-』。その最新作となる『24 リブ・アナザー・デイ』は、あの興奮が再び! という喜びと同時に、大きな驚きがつまったTVシリーズだ。
2010年に惜しまれながらもフィナーレを迎えた『24-TWENTY FOUR-』。その後映画化の話が浮かんでは消え、ファンを一喜一憂させてきた。しかし、もう映画化は無理なのか......と諦めモードに入った2013年に突如としてイベント・シリーズとして復活する事が発表され、世界中を驚かせた。
しかも今度は全12話構成というから驚きも2倍だ。『24-TWENTY FOUR-』と言えば1話1時間で1日の出来事を描く24話構成のリアルタイム進行が最大の特徴だった。それをいきなり半分の時間に短縮して大丈夫なのか!? と誰もが思った事だろう。だがこれも現在のアメリカTV業界がリアルに反映された結果だ。
アメリカで『24-TWENTY FOUR-』を放送しているのはFOXだが、ネットワーク局がケーブル局制作のドラマに押されるようになって久しい。さらに近年はNetflixに代表されるオンデマンド配信が台頭し、ネットワーク局を巡る状況はますます厳しくなっている。ケーブル局やネット配信のドラマの特徴は、1シーズンでおよそ13話前後で構成と、ネットワーク局より少ない話数に絞り、ネットワーク局がオフシーズンとなる夏の間にも新作を放送する事にある。話数を絞るのは制作費を抑えるのと同時に、俳優たちの拘束期間も短くなるというメリットがある。これによって映画俳優のTV界進出も急増し、映画並みのスケールで制作されるドラマも少なくない。短い話数に凝縮させる事で、作品のクオリティを高める事ができるため、今やこの方式が主流になりつつある。
また、視聴者のライフスタイルの変化も大きい。今やドラマはTVで見る時代ではなく、タブレットで見る時代。いつでも見たい時に、見たい場所に気軽にドラマを持ち出せる手軽さが重宝されるのだ。もちろんネットワーク局もオンデマンドで見逃し配信をするなど、そうした環境は日本よりはるかに整っている。それでも年間約9カ月もかけて、1シーズン22話前後のドラマを放送するというスタイルが、視聴者にフィットしなくなっているのも事実だ。
こうした状況を受け、ネットワーク局にも変化が生まれた。ここ2、3年の間に、かつては補欠的扱いだったミッド・シーズンに話題作を投入したり、再放送ばかりだったサマーシーズンにスタートする夏ドラマを放送したりしながら、13話構成のドラマを増やしてきたのだ。その結果、注目を集めるようになったのがイベント・シリーズと言われる企画ものだ。これはミニ・シリーズと似たようなものだが、イベント・シリーズはヒットすれば時期を置いて第二弾、第三弾と続ける事が可能であり、上手く行けばシリーズ化の可能性もある。要はミニ・シリーズと通常のTVシリーズのいいとこ取りをしたのがイベントだ。このイベント・シリーズは各局でも対応がまちまちで、FOXやNBCは積極派、CBSは慎重派となっている。『24 リブ・アナザー・デイ』の制作が発表された2013年といえばちょうどFOXがイベント・シリーズに力を入れようとしていた頃であり、『24-TWENTY FOUR-』はその目玉企画にうってつけだったのだ。
局の思惑は見事に当たり、『24 リブ・アナザー・デイ』は大きな成功を収めた。さらに『24-TWENTY FOUR-』の復活劇を受け、NBCは『HEROES』の新作『HEROES:REBORN』をイベント・シリーズとして復活させると発表。FOXは『24 リブ・アナザー・デイ』が成功を収めた事から、『Xファイル』や『プリズン・ブレイク』の新作企画をぶちあげ、ケーブル局のSHOWTIMEは『ツイン・ピークス』の新作を制作中と、かつてのヒット作が続々とイベント・シリーズとして復活している。番組終了から4年経ってもなお、新たなトレンドを生み出してしまうのだから、『24-TWENTY FOUR-』シリーズの影響力の大きさは計り知れない。
さて肝心の12話になった『24 リブ・アナザー・デイ』の仕上がりはいかがなものかと言えば、12話になってもそのテンションはいささかも衰えていない。だが、テンションがいささかも衰えていないのに、話数は半分に減ってしまっているわけだから、少々スピード感が溢れすぎているのは否めない。とはいえ、最初のキーファーのナレーションを聞いただけで、あっという間に『24-TWENTY FOUR-』の世界に入り込んでしまう、その吸引力はさすが。そしてあのスプリット画面にカウントダウンの音。これだけでパブロフの犬のように、否が応でも興奮が高まってしまうのだ。
Photo:『24リブ・アナザー・デイ』
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