『プリズン・ブレイク』もついに復活! 刑務所ドラマはなぜ面白いのか?

ついに復活する『プリズン・ブレイク』。刑務所からの脱獄に始まり、毎シーズン、手を変え品を変え、スリリングなストーリーでファンを魅了してきた。待望の復活版では新たな刑務所を舞台に、ドラマの原点でもある脱獄劇が展開される。アメリカン・ドラマには『プリズン・ブレイク』のほかにも魅力的な刑務所ドラマが多いが、その醍醐味の一つが脱獄劇だ。厳重な警備をどう切り抜け、外の世界に出るのか。そして脱獄が成功したとして、果たして逃げ切れるのか。次々と現れる障害の難易度が高ければ高いほど、そのスリルもまた高まっていく。『プリズン・ブレイク』ではシーズン1で全身に刑務所の見取り図を入れ墨したマイケルが、その高い知能を駆使してフォックス・リバー刑務所を脱獄するまでを描き、シーズン2では脱獄に成功したマイケルたちの逃亡劇を描く。そしてシーズン3では再び脱獄劇、というようにシーズンごとにテーマを変えることで、視聴者を飽きさせることなく、スリルを提供し続けた。

 

一方、脱獄囚を追う側の視点で描いていく刑務所ドラマが『アルカトラズ』だ。大物マフィア、アル・カポネも収容されていたアルカトラズ刑務所に収容されていた脱獄囚を追う、サンフランシスコ市警の女刑事とFBIの特殊部門チームの活躍を描いた本作は、凶悪犯罪者を追う追走劇に、その犯罪者が50年後にタイムスリップした者というSF要素を加えたもの。犯罪者を捕えるだけでなく、タイムスリップの謎を追うという2重の追走劇がポイントだ。

刑務所ドラマはスリルが大事だが、それ以上の醍醐味となるのが人間ドラマ。そのあまりにも濃い人間関係を大胆に描き、高く評価されたのが『OZ/オズ』だ。今やハイクオリティ作品の代名詞となっているHBOが1997年初めて手掛けたドラマシリーズである同作には、放送コードが厳しいネットワーク作品では表現できないヴァイオレンスや人種差別、性描写などが生々しく描かれている。凶悪犯罪者ばかりが収容されているオズワルド刑務所内にある多くの人種グループが集められた実験的区画、エムシティを舞台に、派閥間の抗争、日常的に起こる暴力・殺人、そんな掃き溜めの中で生まれる純愛まで幅広く描かれる人間ドラマは、放送開始から20年が経ち、多くのケーブル局や配信サービスが乱立する"ドラマ戦国時代"の現在においても強烈なインパクトを残す傑作だ。

 

そして女性版『OZ/オズ』とも言える作品が『ウェントワース女子刑務所』。オーストラリア製作の同作は、その名の通りウェントワース女子刑務所を舞台に、やがて刑務所内のボスとして君臨する主人公、ビーが成り上がっていく姿を描いたドラマだ。刑務所内ヒエラルキーを浮き彫りにしていく同作は、囚人だけでなく看守側の人間ドラマもまた生々しく描いているのがポイント。ドラマはやがてビーVS刑務所所長という構図になっていくが、この所長であるファーガソンが相当にヤバい人物で、そのヤバさがシーズンを重ねるほどに加速していくという、脱獄劇とは違ったスリルが味わえる。

 

女子刑務所が舞台のドラマには、NETFLIXの『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』もある。同じ女子刑務所を舞台にしていても、こちらはコメディ風味。といってもおなかを抱えて笑うようなコメディではなく、刑務所内での悲喜こもごもをシニカルに描いたブラックな笑いだ。いかにして刑務所というジャングルをサバイブしていくかという点ではどちらも同じだが、少しテイストが変わるだけでこれほど違うというのが明確になるので、比較して観るのも面白い。

しかしどの作品にも共通しているのは、刑務所という閉鎖的な環境だからこそ生まれる逃れようもない人間関係が、とことん煮詰められ、濃密なドラマが繰り広げられる点だ。脱獄劇がメインの『プリズン・ブレイク』にしても、悪役である凶悪変態囚人ティーバッグや、小物感満載の看守のベリックが、いつの間にか何やら憎めないような気すらしてしまうようになるほど、個々のキャラクターの人間味が際立っているからこそ、よりドラマの世界にのめり込んでしまうのだ。

 

Photo:
『プリズン・ブレイク』 (C)2005 - 2006 Twentieth Century Fox Film Corporation.
『アルカトラズ』 (C) Everett Collection/amanaimages
『ウェントワース女子刑務所』 (C)FremantleMedia Ltd.
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』 (C) JoJo Whilden/Netflix
『プリズン・ブレイク』 (C) 2017 Fox and its related entities. All rights reserved.