本年度アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた映画『20センチュリー・ウーマン』が本日6月3日(土)より公開となる。マイク・ミルズ監督(『人生はビギナーズ』)が故郷サンタバーバラを舞台に、母親をモデルに「母と息子」の物語を描いた本作。互いを必要としているのに、うまく表現できない、愛情深いシングルマザーと反抗期の15歳の息子、そんな二人を助ける個性的な女性たちとの特別な夏を、パンク・ロックなどの当時のカルチャーとともにユーモアを交えて爽やかに描いた作品だ。同作で息子を演じる新星ルーカス・ジェイド・ズマンについてご紹介したい。
ルーカスは、現在Netflixで配信中の「赤毛のアン」のドラマシリーズ『アンという名の少女』でギルバートを演じている注目株。2001年生まれでまだあどけなさを残すルックスから、一部では「ちっちゃいオーランド・ブルーム」とも呼ばれている。すでに『センス8』や『シカゴ・ファイア』にも出演し、今後のさらなる活躍が楽しみな若手だ。プライベートでは、写真撮影、映画制作、ギター演奏、エアリアル・アーツ、武道、パルクールなどが趣味だという。
ミルズ監督は、そんなルーカスを自身を投影した息子ジェイミー役に抜擢した理由について、「自分と似てない人物」だったからと説明する。とはいえ、ルーカス自身は監督の要素を演技に取り入れていたそうで、「監督が僕たちキャストに話をしていた時、彼の言っていることを聞きながら、別の自分が彼を観察してメモを取っていた」と笑う。「ジェイミーの中にマイク(ミルズ監督)っぽいところを見つけてもらえたら嬉しいね。マイクとジェイミーは同一人物ではないけれど、魅力的で、クリエイティブなジェイミーを表現するために全力を尽くしたかったんだ」
ただし、ジェイミーとルーカス自身の共通点もある。リハーサル中、スケートボードが好きな理由について語ったセリフを回想するルーカス。「『この動く木片に乗っていると、バブル(気泡)の中にいるみたいな気がするんだ。何もジャッジされることなく、ただ人々の前を通り過ぎてゆく』。このセリフは、僕とジェイミー両方にとって真実だと思う」
21世紀生まれのルーカスは、何十年も前の時代を理解するため、1970年代のドキュメンタリーを見たり、パンクの解説本を読んだり、祖母から話を聞いたりして役作りに励んだ。そんな彼にとって最大の挑戦は、母親ドロシアを演じる、4度アカデミー賞にノミネートされた女優アネット・ベニングとの共演だった。「撮影前は『どうやったら期待に応えることができるんだ?』と不安だったけど、アネットとはすぐにしっくりいって、本当の母と息子みたいだった」とのこと。「彼女からすぐに"kid(息子)"と呼ばれるようになり、僕は"lady(レディ)"と呼んだ。皮肉なことに、僕とアネットは劇中よりもっと機能的な母子の関係を築いた。とはいえ、それが映画のテーマであり、僕たちはジェイミーとドロシアが持っていたつながりの瞬間を見つけることができたんだ」とルーカスはふり返る。彼を「並外れたティーンエイジャー」と表現するアネットは、「純粋なアプローチの仕方をまだ持っているので、多くを学んだわ」と若手から刺激を受けたそうだ。
ルーカスは本作によって俳優としてだけでなく、人間としても成長することができたと語る。「この映画は、知ることや自己を省みること、人生を考えることについて、僕をまったく別の場所に連れていってくれた。僕と同年代の人たちにとっても、そうであってほしい。そうすれば孤独を感じず、ありのままの自分であることを受け入れられると思う」とメッセージを送ってくれた。そんなルーカスの様々な表情をとらえた場面写真を当サイトのフォトギャラリーで掲載しているので、お見逃しなく!
1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアは、思春期を迎える息子ジェイミーの教育に悩んでいた。そんなある日、ドロシアはルームシェアで暮らすパンクな写真家アビーと、近所に住むジェイミーの幼なじみのジュリーに、「複雑な時代を生きるのは難しい。息子を助けてやって」と依頼。こうして、15歳のジェイミーと彼女たちの、二度と忘れることのない特別な夏が始まる...。
『20センチュリー・ウーマン』は6月3日(土)より丸の内ピカデリー/新宿ピカデリーほか全国公開。(海外ドラマNAVI)
Photo:ルーカス・ジェイド・ズマン
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