イギリスのBBCが、8話構成の大型ドラマ『Troy: Fall of a City(原題)』をNetflixと共同製作する。「トロイの木馬」で有名な古代都市トロイアを舞台に、絶世の美女ヘレンの恋と、貿易都市として栄えたこの街に忍び寄る戦乱を描いた作品だ。米HBO製作の『ゲーム・オブ・スローンズ』が中世風のファンタジーとして世界的な人気を博す中、本作はそれと双璧を成す作品になるのではと期待が集まっている。
【関連記事】『ゲーム・オブ・スローンズ』中断期間に見るべきドラマシリーズ13選
◆強力な対抗馬
製作が進むイギリスでは、英紙Daily Mailが本作の概要を紹介している。物語中で絶世の美女ヘレンは、夫であるスパルタ国王のもとを離れ、恋人パリスが住むトロイアの街へと移る。国王は怒りに燃え、禁断の愛はやがて戦火を引き起こす。本作は今月より英BBC Oneで放送中で、その他の国と地域に向けてNetflixが配信する予定だ。
『ゲーム・オブ・スローンズ』が好評を博す中、本作はその対抗馬となることを目論んでいる。同紙は、BBCが一話あたりに200万ポンド(約3億円)と、同局史上最高クラスの予算を投じていることを指摘し、「BBCの上層部は、近日公開のシリーズ(『Troy: Fall of a City』)がライバルであるHBOの人気ファンタジー番組(『ゲーム・オブ・スローンズ』)に匹敵することを期待している」と報じる。
英紙Daily Mirrorも、『ゲーム・オブ・スローンズ』人気を背景に、BBCが独自作品を打ち出してきたことには何の不思議もないと捉えている。本作もアクションに力を入れており、特に第2話で展開する本格的な戦闘シーンは、心臓の弱い人にはおすすめできないほどのレベルだと紹介する。
◆ラブストーリーに焦点
そうした重厚なアクションに加え、主役であるヘレンとパリスの恋の行方も見逃せない。Daily Mail紙は、本作のようにギリシャ神話のトロイア戦争を題材にした作品では、二人の恋愛は脇に追いやられがちだとしている。しかし今回は、恋物語にもしっかりとスポットライトが当たっている模様だ。
Daily Mirror紙は、前述の戦闘映像のほかにも、第1話の開始数分でベッドシーンが展開するなど、大人向けの要素が満載だという点に注目している。戦争だけでなく恋愛パートにもしっかりとフォーカスするスタイルは、トロイア戦争を扱った作品としては異例のことだ。
英紙Guardianでは、脚本を執筆したデヴィッド・ファー(『ナイト・マネジャー』)のコメントを伝えている。羊飼いとして育てられながら、のちに王子であることが判明して王宮に引き戻されたパリスは、権力への戸惑いを隠せない中、結婚という鳥かごに束縛されていたヘレンと出会う。そして、ともに家庭に居場所のない者同士が落ちる禁断の恋が、都市の崩落という大惨事につながってゆく。美男美女の主役カップルだが、外見だけでなく内面の葛藤にも注目したい。
◆挑戦的なストーリーテリング
本作が型破りな点は、ラブストーリーの重視にとどまらない。多くの作品がトロイアを攻める立場から描くのに対し、包囲されたトロイア側の視点で進行するドラマ構成は斬新だ。Daily Mail紙はファーの発言を引用し、すでによく知られているストーリーに視点を変えるという手法を導入することでひねりを加えた、という狙いを説明する。
その効果もあってか、同紙によれば、ドラマ全体に切ないムードが溢れ、情熱的な登場人物たちが際立つようになっているという。『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場するキャラクターの多くは、目的のためには手段を選ばない冷徹さが目につくが、それとはまた一味違う路線だと言えるだろう。
早くから話題を呼んでいる本作は、早くもシーズン2の話が持ち上がっていると、Daily Mirror紙は報じている。(海外ドラマNAVI)
Photo:『Troy: Fall of a City』
(C) BBC