Netflixで配信中のオリジナルドラマ『ロスト・イン・スペース』。1960年代に日本でも放送され、人気を博した海外ドラマ『宇宙家族ロビンソン』をオリジナルとし、新たに映像化したSFアドベンチャー・ドラマシリーズだ。
宇宙への入植が現実のものとなった30年後の未来。よりよい世界での新しい生活を求めて旅立つロビンソン一家。多くの移住者と共に新天地へ向かう途中、宇宙船が突然軌道を外れる事態が発生する。本来の目的地からはるか遠く離れた見知らぬ危険な場所で、一家は力を合わせて生きていくことを余儀なくされる......。
第一回目ではロビンソン一家の3姉弟を演じるテイラー・ラッセル、ミナ・サンドウォール、マックスウェル・ジェンキンスのインタビューをお届けしていたが、今回はロビンソン一家を支える両親を演じるトビー・スティーブンス(ジョン・ロビンソン役)とモリー・パーカー(モーリーン・ロビンソン役)の二人を直撃! 作品や演じたキャラクターについて語ってもらった。
――お二人とも初来日ということですが、日本を楽しめていますか?
モリー:ずっと日本を訪れたいと思っていました。桜がすごく綺麗だし、とても良い時期に来られて嬉しいです。
トビー:滞在が本当に短いので、もうちょっと長い期間で滞在したいね(笑)
――ロビンソン一家の姉弟を演じるテイラー・ラッセル、ミナ・サンドウォール、マックスウェル・ジェンキンスの3人と一緒に来日されているので、まるでロビンソン一家の家族旅行みたいですね(笑)
トビー:そう言われると、その通りだね(笑)
モリー:私も本当にそう思うわ(笑) 子どもたちはそれぞれの親と一緒に来ていますから、私たちは面倒を見なくていいんですけどね。とにかく3人とも育ちがいいと言いましょうか、良い家庭に恵まれていて、本当に良い子たちなんです。3人との仕事では、私もトビーも全く苦労しませんでした。
――お二人とも本格的なSFドラマシリーズへの出演は初めてではないでしょうか?
モリー:私にとって25年間の女優生活で初めてのSF作品への出演なので、とても興奮しています。SF作品ではありますが、本作には家族というものが土台にちゃんとあるんですよ。宇宙が舞台ではあるものの、やっていることは普通の家族の営みなんです。
トビー:このドラマに出演することで、今まで経験したことのないようなことがたくさんできたよ。本当に楽しいことがたくさんあるんだ。普通のドラマならば地球上の物語だけど、そうじゃないところから物語は始まって、ロボットが出てきたり、宇宙怪獣みたいなのが出てきたりと盛りだくさんだからね。そういった意味では、役者として想像力をフルに使うというのが大事だったんだ。それと、あまり自意識過剰にならないこと。あまり考えすぎてしまうと演技ができなくなるのでね。宇宙服を着ているけど、リアルにするということで視聴者の皆さんが信じられるようにすることが重要だと思っているんだ。
モリー:そう、本当に想像力の仕事ね。私もいつもそのように心掛けていました。
トビー:グリーンバックのようなCGを使用するシーンでの撮影では、信用するということが大事だったね。そういう撮影では、自分が何を見ているか分からないんだが、とにかくそれに反応しなければいけないんだ。だから、テレビで初めて見た時に「あれを見ていたのか」という風に分かることがあるんだよ。
――オリジナルの『宇宙家族ロビンソン』は日本でも1960年代に放送されていて、人気のあった作品ですが、お二人はオリジナル版を見たことはありますか?
モリー:残念ながら見たことはなかったんです。
トビー:私も同じく放送されていたのを見たことはなかったね。
――さすがに50年以上も前ですからね(笑)
モリー:そう。50年以上も前の作品ですからね。フォロー助かるわ(笑)
トビー:(笑)
モリー:でも、再放送が何度もされていたのは知っていたんですよ。オリジナル版を知らなかったわけですから、出演への判断は脚本だったんです。脚本はとてもワクワクするものでしたし、驚きがいっぱいありました。そして、家族というものが本当に描かれていたんです。だから、オリジナル版を見ていなくても、このシリーズを十分に楽しめると思います。もちろん、オリジナル版を見ていて好きだった方は、また新たな目線でこのシリーズを楽しめるんじゃないでしょうか。
トビー:私としてはポップカルチャー的な面でオリジナル版のことは知っていたんだ。放送を見たことはなかったが、児童文学である『スイスのロビンソン』がベースになっていて、そしてロボットがいて、ドクター・スミスという悪役が出てくるみたいなことをね。その当時は、『人気家族パートリッジ』のような理想的なファミリーを描いたドラマが結構あったと思うんだが、私がこの脚本に反応したのは、そういう理想的なファミリーじゃないんだよ。色々な問題を抱えている人間関係が本当に描かれていることだったんだ。どんなに理想的に見える家族でも問題を抱えているというのが現実だからね。その点が非常に上手く描かれている作品なんだよ。あまりにも理想的な家族だと、見る側もしらけると思うんだ。ロビンソン一家はサバイバルも必要だけど、よりよい夫や妻とか、よりよい親にならなければいけないんだ。現在、テレビ界というのは気持ちが落ち込むような内容のドラマが多いよね。そういう中で、こういう自分たちと共感できるキャラクターが出てきて、応援できる家族の物語というのはとても新鮮だと思うね。
――演じているキャラクターのどこに魅力を感じますか?
モリー:私は女優として、欠陥のある役や秘密を持っているような謎めいた役が好きなんです。モーリーンは単なるお母さんとか、科学者だけじゃなくて、人間的に色々な層があって掘り下げられる役だと思っているから、とても好きな役ですね。すごく粘り強くて、頭が良いこともあって、学ばされることが多いキャラクターですよ。
トビー:ジョンは軍人としては優れているんだけど、父親として、また夫として良い人物になるには、まだまだ見当がついていないところがあるんだ。だから、この家族の一員として、ちゃんと機能するためにはもっと謙虚になる必要があるんだよ。そして、学ぶべきこともいっぱいあって、子どもからたくさんのことを学ぶんだ。そういう不完全さこそがジョンの魅力だね。
――先ほども話がありましたが、オリジナルのドラマはSF版"古き良きアメリカ"の家族ドラマでしたけど、本作は家族関係が非常にリアリティーのある形で描かれていますね。そういった作品に夫婦として共演してみていかがでしたか?
モリー:本作の脚本は、洗練された印象があるんです。それは視聴者も洗練されてきたことで、すごくリアルな人間関係を見たいわけですし、ビジュアルとしても良いものを見たいという期待度がとりわけ高くなっているからだと思うんです。夫婦関係についてはトビーと私も色々と話し合いをしました。それに、脚本家たちとも話し合いをしていたんですよ。できるだけ、リアル感が出るようにと思っていたんです。本作は大人も子どもも見る番組なので、あまりにも重いテーマになってしまってはいけないと思うんです。でも、リアル感が存在しないと、この人たちのことはどうでもいいと思われてしまって、サバイバルをしようがしまいが、関係なくなってしまうんですよね。今の時代、親が別居や離婚をしているという家族は多いですよね。そういう時代背景も含めて、そのようなリアルな人たちが描かれていた作品でしたね。
トビー:モリーとは結婚や夫婦間の関係について色々と話し合っていたんだ。結婚当初、ジョンとモーリーンはものすごく情熱的で良い関係だったと思っているんだよ。お互いを尊敬し合っていてね。だけど、ジョンの色々な選択ミスによって、結果的にうまく機能しなくなっているわけなんだ。それというのは、他人から見てもすごく共感できる部分だと思うね。そこから、このシリーズの中では、2人がまたお互いを再発見して、そして関係を再構築することもあるんだ。以前、モリーが言っていたんだけど、これは父親と母親の究極的なロマンス作品でもあるんだよ。そんなことを言ったら、10代の若者や子どもたちはかなりしらけるかもしれないがね(笑) でも、すごくハートのあるシリーズであるし、こういうドラマを感傷的にならずにできれば、とても感動できる作品になると思うんだ。
――両親のロマンスについては、第1話のフラッシュバック・シーンで、ジョンがモーリーンと抱き合ってキスするシーンがあって、子どもたちがしらけていましたね(笑)
モリー、トビー:(笑)
トビー:そうそう。まさしく、あれはそういうシーンだね(笑)
――ストーリーが進むにつれて、ジョンとモーリーンにその時のような熱い情熱が戻ってくるのかもしれませんね。
モリー:ただ、二人は関係が色々と悪化しているとはいえ、チームなんですよ。子どもたちのために一緒に頑張らないと生き延びられないという状況にあることから、心は通い合っているんですよ。
――テイラー、ミナ、マックスウェルへのインタビューで、お二人との共演について「家族のようになれた」とおっしゃっていました。3人との共演はどういったものでしたか?
モリー:俳優たちって、「家族みたいになりました」とよく言いますけど、私はほとんど信じないんですよ(笑) でも、この3人の子どもたちはものすごく特別なんです。3人とも、それぞれ幸せな家庭で育っているので、ハリウッドですれている子という感じではないんですよ。それもあって、このキャスティングには非常に新鮮な感じがしていますね。
トビー:私たちは大人だから、3人と比べてもっと経験は豊富と言えるんだけど、むしろ子どもたちのほうが優れている点もあったね。例えば、グリーンバックの撮影で「さあ、ここを見て。こういうものがあるよ」と言われた時でも、3人はすぐ演技ができるんだ。私たちは「ちょっと待って。どういうものがあるんだい?」ともっと説明を求めてしまって、時間がかかるんだよ。だから、そういう意味で3人から学ばされることもあったね。
SFアドベンチャーを壮大なスケールで新たに映像化したNetflixオリジナルドラマシリーズ『ロスト・イン・スペース』は、Netflixで独占配信中。
(取材/文:豹坂@櫻井宏充)
Photo:『ロスト・イン・スペース』