イギリスの公共放送Channel 4が、ベネディクト・カンバーバッチを主演に起用した新ドラマ『Brexit(原題)』の製作を発表したことは、以前お伝えした通り。彼が今回挑むのは、政治アドバイザーのドミニク・カミングス。ブレグジット(イギリスのEU離脱)に関する英国民投票で、賛成派のキャンペーンを主導した人物だ。
ベネディクト、またも実在の人物を演じる
番組は2時間枠のドラマで、来年3月末のEU脱退と同時期の放送が予定されている。脚本を執筆するジェームズ・グラハムは、これまでにもメディアと政界の大物を扱った舞台『Ink』や『This House』で成功。彼は、キャンペーンの裏側を探ることによって、イギリスの将来を変えたあの8週間の間に起きたことの結果について問いたい、と語っている。
『SHERLOCK/シャーロック』でブレイクして以来、不動の人気を誇るベネディクトは、直近では『Patrick Melrose(原題)』で怠惰な生活を送る若き富豪を演じているほか、現在上映中の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ではマーベルヒーローのドクター・ストレンジとして独特のオーラを放つ。このように架空のキャラクターを演じることの多い彼だが、実在の人物としては、ウィキリークスの編集長であるジュリアン・アサンジ役に抜擢された実績も持つ。
タイミングが50年早すぎる!?
EU離脱はホットな話題とはいえ、このドラマが数字を稼げるかは未知数。英Times紙によると、Channel 4は近年増えているデータ・ドリブン型の選挙で何が行われているのかを本作で解き明かすとコメントしている。その発言からは、時事ネタをタイミング良く扱った自信がうかがえる。
ただし、50年後に歴史の一部として振り返るなら良いが、ドラマ化の時期が早すぎるのではないか、との意見もある。Guardian紙は、第二次世界大戦をテーマにした映画『ダンケルク』を例に挙げ、クリストファー・ノーランがメガホンを取った同作も、その終結から数十年後の2017年に公開されたからこそ受け入れられたのだ、という議論を展開している。
そもそもEU圏内に留まるべきだったとの世論は、選挙直後からイギリス国内でも高まっており、悔いの残る選択に焦点を当てた作品がどこまで国民に受け入れられるかは不透明だ。
社会性よりもエンターテイメント性を重視
テーマも懸念点。Guardian紙は、ブレグジットという題材自体が小難しいため、視聴者を退屈させると予測し、今作の製作決定は「EUを離脱することよりも愚かなアイデア」と手厳しい。カミングスは決してスター性のある人物ではないため、A級の演技力を誇るベネディクトを起用しても面白いドラマにはならないだろうと見ている。
こうした課題を意識してか、Channel 4はエンターテイメント性を強化したい意向を明かしている。米Varietyによると、Channel 4のドラマチームのリーダーはグラハムの脚本の腕を買っており、愉快かつ洞察に富んだストーリーに仕上げてくれるだろうと期待を寄せる。Times紙は、ニッチな層やインテリ向けの番組にはしたくないという同局ディレクターの意気込みを紹介していた。
Channel 4は政府直営メディアではあるものの、広告によって運営費を調達している。つまり、自ずと視聴率を意識した番組製作を行うことになるため、難解なトピックを親しみやすく料理したドラマが期待できるかもしれない。(海外ドラマNAVI)
Photo:ベネディクト・カンバーバッチ(C) Twocoms / Shutterstock.com