オカルトにはまった"ロケットの父"の数奇な人生、実話ベースの『Strange Angel』

『Strange Angel(原題)』は、1952年に実験中の爆発事故で亡くなった工学者ジャック・パーソンズの奇想天外な人生を追う、実話ベースのドラマ。NASAの研究機関である「ジェット推進研究所」の創設メンバーでもあった彼は当時、絵空事と思われていたロケット開発に人生を賭ける一方、オカルトにのめり込むという意外な一面を持ち合わせていた。

■まだ誰も達したことのない空へ
舞台は1930年代のロサンゼルス。日中は火薬工場で働くジャック・パーソンズ(ジャック・レイナー『マクベス』)は、夜になると仲間のリチャード・オンステッド(ピーター・マーク・ケンドール『シカゴ・メッド』)と共に、ロケットの打ち上げに情熱を傾けていた。努力虚しく最初の打ち上げは失敗に終わるが、ジャックの熱が冷めることはない。家計を圧迫する実験費用に気を揉む妻のスーザン(ベラ・ヒースコート『TIME/タイム』)の心配もどこ吹く風で、まだ人類が夢にも思っていない有人宇宙飛行の実現を掲げて、実験に勤しむのだった。

ジャックの情熱に障壁があるとすれば、それは義理の父(マイケル・ガストン『メンタリスト』)の存在。何事も堅実に行う義父は、開発資金の調達に追われ早く成果を上げたいジャックの開発手法に細かく注文をつける。ロケット開発という壮大な計画をジャックは実現できるのだろうか?

■サイエンスとオカルトの融合
本作の興味深い点は、あくまで事実をベースとしている点だ。そのため事実に基づき、オカルトにのめり込んだ人物としてジャックを描いている。結果、両極端なSFとオカルトという2つのジャンルにまたがっている。

劇中では、ジャックの家の近所に、ヤギを連れたおかしな隣人アーネスト(ルパート・フレンド『HOMELAND』)が越してくる。そしてジャックは真夜中に、呪文を詠唱する人々、裸の女性、妖しげに光る短剣...など、儀式を目撃する。興味をもったジャックは、それからというものオカルトの世界に足を踏み入れてゆく。

ロケット工学者であるジャックは、オカルト信仰者でもあり、さらにスパイ疑惑もかけられていたと米Hollywood Reporterは伝えている。ロケット工学がまだSF小説の類だと思われていた時代に、壮大な夢を描いた科学者が、サイエンスとは対局の存在に興味を持っていたのは意外だろう。

ドラマ冒頭の数話は特に、オカルトな側面が目立つ。ロケット工学と超常現象という取り合わせに、米Washington Postは、かなり荒唐無稽だという印象を抱いたようだ。脚本のゴーサインが出そうにもない内容だが、主人公役のジャックのおかげで、興味を持って見続けられるドラマになっているという。

■もっと推進力を
『Strange Angel』は、シーズンの更新が決定していないためか、展開がスローに感じるとHollywood Reporterは述べている。一つ例を挙げると、打ち上げの実験シーンという大きな見せ場の後で、固体燃料や液体燃料という議論が続く点だという。ただし、第2話でメガホンを取ったデヴィッド・ロウリー監督の自然な演出には、かえってそのペースがマッチしていると感じられるシーンもある、とも評価。完璧な構図とエレガントな転換で魅せるロケット開発シーンには要注目。

米Los Angeles Timesも、同様にテンポがやや遅く感じられる点を指摘しつつも、それだけ時間をかけて自然な展開になったというメリットに目を向けている。

リドリー・スコット監督が手掛けていることでも話題の『Strange Angel』は、米CBSの有料動画配信サービスAll Accessで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Strange Angel(原題)』ジャック・レイナー
Kathy Hutchins / Shutterstock.com