スティーヴン・キング原作『Castle Rock』 ショーシャンク刑務所に現れた謎の青年が...

スリラー小説の巨匠スティーヴン・キングの作品に何度も登場する架空の町がある。様々な恐怖物語の発信地となってきたその田舎町の名は、キャッスルロック。TVシリーズ『Castle Rock(原題)』は、まさにその町が舞台。夏にぴったりの身の毛もよだつサイコホラーだ。

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♦刑務所に忽然と現れた青年
メイン州立ショーシャンク刑務所内、今は使われていない鍵のかかった独房内に、謎の青年(ビル・スカルスガルド)が忽然と姿を現わす。青年は無口で従順だったが、突如として態度を一変。看守に対し、弁護士ヘンリー・ディーヴァー(アンドレ・ホーランド)との面会を執拗に求めるようになる。

生まれ故郷から遠ざかっていたヘンリーは、こうしてキャッスルロックの町に呼び戻される。しかしヘンリーが町を避けていたのにはある理由が...。その昔、ヘンリーと父親は森へ夜のハイキングに出かけたが、ヘンリーは失踪し、父親は崖の下でバラバラ死体として発見される。11日経って姿を現したヘンリーは、一切の記憶がないと主張するも父親殺しの容疑がかけられてしまう。そして町の住民たちはいまだ冷たい視線を彼に向けている。

青年の出現以来、日に日に正気を失ってゆくヘンリーの養母ルース(シシー・スペイセク)と、強固な信仰心に心を狂わせたヘンリーの父マシュー(アダム・ローゼンバーグ)。そして、異常な状況下の刑務所で必死に生き抜く術を探る看守の男(ノエル・フィッシャー)。町と刑務所は、キング特有の恐怖の世界にじわりじわりと呑み込まれてゆく。

♦スティーヴン・キングのファン必見
暗く重たい雰囲気の支配する本作には、まさにキングらしさが滲み出ている。ファンなら必見、議論の余地なしと米Forbesは断言する。脚本は緊迫感にあふれ、ディレクションは周到な計算の上で行われている、と絶賛。カメラと照明は不気味な雰囲気を醸し出しており、不意打ちの音響に思わず飛び上がらずにはいられないはず。

ファンにとってもう一つの見どころは、数々のキング小説とのさり気ないリンク。マーベル映画同様、キングの作品群は一つのユニバースを共有している。キャッスルロックの町は、1979年出版の小説「デッドゾーン」、1986年出版の「スタンド・バイ・ミー」などに登場。また、本作の画面に映る新聞の切り抜きをチェックすると、そこには「狂犬が町を駆け抜ける」との見出しが躍る。これは狂犬が母子に迫る小説「クージョ」に繋がるイースター・エッグ。米Entertainment Weeklyはこうしたトリビアを紹介し、本作は細部まで目を光らせて観るべき作品であり、その価値が十分あると推奨する。キングの世界観に浸れるシリーズになっている。

♦︎謎が徐々に明らかに
キングの小説ファンでなくとも、様々な謎が渦巻く本作には少なからず興味を引かれるだろう。独房で発見された青年の正体は何者か? 青年がヘンリーに会わせろと繰り返し訴えたのは何故なのか? 幼い頃ヘンリーの近所に住んでいたモーリー(メラニー・リンスキー)は、一体なぜヘンリーの父親の死について知っていたのか? こうした謎の数々は後のエピソードでしっかりと解き明かされてゆく。スリラーが先行し、謎が投げっ放しになる作品も多い中で、きちんとした回収を行なっている点は良心的だとEntertainment Weeklyは評価する。

一方、スリラーの部分について注文をつけているのは米Variety。恐怖感を煽るシーンを駆け足で終わらせてしまうのがもったいないと惜しむ。ただし、同じキング原作のスリラー映画『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』は、同じパターンの恐怖を繰り返し使いすぎるという問題があったが、本作は少なくとも今のところそのパターンには陥っておらず、毎回新鮮なスリルを期待できそうだ。

『Castle Rock』は、第1話が米Huluにて7月25日に公開予定。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Castle Rock』
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