「観ずにはいられない」ヘンテコ殺し屋のプライベート・ライフ コメディー『Mr Inbetween』

『Mr Inbetween(原題)』は、オーストラリアで製作されたクライムコメディ。殺し屋のレイ(スコット・ライアン)は、狙った獲物は逃がさない、任務に忠実な男。その腕力を正義のために使っていると信じているが…。少しズレた大男を不条理な状況が襲う本シリーズは、米FXで9月25日(火)から放送がスタートし、昨日シーズン2への更新決定も明らかとなった話題作だ。

残虐な殺し屋、「善行」にご執心

いつも落ち着き払った様子で、ターゲットへの暴行や殺害を冷酷にこなすレイ。ボスのフレディー(デイモン・ヘリマン)の依頼とあらば、躊躇なく獲物に手をかける。今日も残忍な笑顔を浮かべ、仕事に邁進中。その行動に自信満々の彼は、殺めるに相応しい理由があるから殺しているのだと言って憚らない。しかし周囲から見れば、金をもらっているからだとしか思えないケースも。

彼の勘違いは私生活においてさらに顕著だ。殺し屋でありながら、元夫、父親、彼氏、友人として愛する者たちや街のために闘う守護者を自負している。しかし、娘のアイスクリームを台無しにしたチンピラ二人組を路地裏でボコボコに打ちのめすなど、その行動の端々からはどこかピント外れの正義感が滲み出る。良き父でありたいと願う殺し屋の、少しズレた感覚が笑いを誘うブラックコメディだ。

脱力系アサシン

身内の安全を守りたいという心配性の一面と、大真面目で無表情な殺し屋としての行動の両方を併せ持つレイ。この両極端な二面性が絶妙なバランスを保っており、笑いを生んでいると米New York Timesは述べる。カジュアルで即興劇のような雰囲気を感じる作品だと紹介している。作中では、息絶えたと思いきや生きていた死体、実は警官だった共犯者など、もはやおなじみとも言える展開もたっぷり。ゆるいドタバタ喜劇のようなアクシデントが、完璧に計算されたタイミングで起こり、殺人や誘拐などをテーマにしつつもコミカルな作品になっている。

シリアスな暴力シーンもありつつ、同時にありとあらゆる突拍子もない依頼のラッシュで笑いを仕掛けてくるのが本作の特色。米Rolling Stoneは、アブノーマルなポルノビデオが妻に見つかった友人から、レイのものを預かっていたことにしてくれないかと頼まれるくだりを紹介。ふだんは何事にも動じないレイが、この時ばかりは狼狽する姿が笑いを誘う。腕利きの殺人者が直面する、力が抜けるようなシチュエーションが見どころだ。

主演は、製作・脚本のスコット・ライアン

主演は、本作の製作・脚本もこなすスコット・ライアン。Rolling Stoneは、主演俳優としてのスコットの才能に注目している。そのルックスは魅力的で、観ずにはいられないと紹介。細身で禿げ上がった頭というワイルドな風貌と、殺しの直前でも落ち着き払っている態度が印象的だ。

スコットの脚本家としての仕事に賛辞を送るのはNew York Times。力の抜けるような不条理なシーンを寄せ集め、ドラマとしてきちんと成立させている点を評価する。本作でレイを悩ませる状況はさまざま。前述のポルノ・コレクションを隠すくだりや、誘拐犯と被害者の間にできた子にどんな名前をつけるかをめぐる揉め事など、殺し屋稼業とは離れた日常の瑣末ごとに振り回される。

腕利きのアサシンの意外なプライベート・ライフに笑みがこぼれる『Mr Inbetween』は、米FXにて全6話構成で放送中。(海外ドラマNAVI)

Photo:スコット・ライアン
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