【日本未上陸】『トゥルーブラッド』アンナ・パキンが炎上セレブを救うプロに『Flack』

嘘を職業にした人間の末路とは――? スキャンダルの尻拭いを専門とする広告会社の女性社員が、あの手この手でセレブのピンチを救ってゆく。大胆な手段で窮地を切り抜けていたが、いつしか私生活まで虚飾まみれに。「広報担当者」を意味するタイトルのコメディ『Flack(原題)』は、米ケーブル局のPopで2月下旬から放送中。イギリスでも有料チャンネルのWにて3月中旬から放送されている。

助けて、炎上しました!

ロンドンの広告代理店に勤めるアメリカ人女性のロビン(『トゥルーブラッド』のアンナ・パキン)は、情報をコントロールしてクリーンなイメージを保つ手腕を持つことから、スキャダルにまみれたセレブたちの依頼を引き受けている。例えば、主婦受けの良かった有名シェフのアンソニー(『SUITS/スーツ』のマックス・ビーズリー)は、行きずりの女性たちと一夜限りの恋を謳歌しているという噂が立ち、女好きの性格が世間にバレる前に各紙の記事を揉み消してくれと頼んでくる。ロビンはあらゆる手段を駆使し、不可能に思えるリクエストに全力でぶつかってゆく。

一件落着に安堵したのも束の間、世の中に不祥事が尽きた試しはなく、ロビンの元には次から次へと難題が押し寄せる。事務所との契約打ち切りを隠したがる歌手の場合は、セックススキャンダルのフェイクニュースを流してマスコミの目を逸らすなど、奇想天外な一手で対応してクライアントを窮地から救うが、自身の私生活に逃げ場のないピンチが迫り......。

対処のプロは現実世界にも

ロビンの職業は決して創作ではない。アメリカに「スピンドクター」という俗語があるように、政治家やアイドルの情報をコントロールし、クリーンなイメージを築き上げる人は実在する。今日ではこうした職業の果たす役目が大きくなってきている、と米紙Los Angeles Timesは解説。失態を演じて炎上寸前まで追い詰められた著名人の活路を開く、なんともハードな役回りだ。劇中でロビンは、上司のキャロリン(『ホテル・ルワンダ』のソフィー・オコネドー)から、たとえ自動車事故でボロボロになっていても24時間いつでも携帯に出ろ、と無慈悲な指令を出されている。

興味深い職業をテーマにした本作は、さらに優秀な脚本とキャストにより、一段と見応えのある作品に昇華した。興奮するようなセリフに躍動感を与えるべく、一点の曇りもないキャストが揃った、と英紙Timesは絶賛。特にスキャンダルに苦しむシェフ、アンソニー役のマックスはあまりに素晴らしく、本当に渦中の人物なのでは、とうっかり信じそうになってしまうほどだ。

クライアントを救えるロビンが自身の私生活は破綻寸前なのは、妹と彼氏に嘘をつく癖があることが一因。また、コカインの常用やクライアントと体の関係を持つクセも、あまり褒められたものではない。十分な知能を備えながらも、人との関係構築を苦手としているロビン。自信満々の性格と悲惨な結果のギャップにTimes紙は魅力を感じたようだ。

彼女の虚言癖については、Los Angeles Times紙も取り上げている。職業柄か、プライベートでも嘘への抵抗が皆無になり、居場所や些細な行動まで偽るが、そのほとんどを家族はお見通し。本作はコメディでありながら、「変わろうとしている」と口癖のように繰り返すロビンの成長の物語とも言えるだろう。その点では、最初の3話でメガホンを取ったピーター・カッタネオ監督の過去作、失業した男たちがストリッパーとして一稼ぎすることを画策する『フル・モンティ』と似ていると言えるかもしれない。

嘘のプロフェッショナルが虚像の波に呑まれるコメディ『Flack』は、米Popと英Wで放送中。(海外ドラマNAVI)

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アンナ・パキン
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