『メイド・イン・ヘヴン ~運命の出会い~』は、二人の新鋭ウエディング・プランナーの物語。最高の晴れ舞台を用意しようと奔走する二人の前に、現地インド社会に色濃く残る伝統的価値観が立ちはだかる。Amazon Prime Videoで3月上旬から配信スタートした、インド発全9話のシリーズだ。
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誕生間もないウエディング会社が、名家の結婚式をプロデュース
生真面目な女性・タラ(ソビタ・ドゥリパラ)とお気楽者の男性・カラン(アルジュン・マートゥル)は、インド・デリーで働くウエディング・プランナーのコンビ。業界経験わずか2年の彼らに、一大企業の御曹司・アンガド(パヴェイル・グラティ)の結婚式を企画するビッグチャンスが到来する。しかし結婚に慎重なアンガドの両親は、新婦の身辺調査をせよと条件を提示。喉から手が出るほど契約が欲しいタラとカランは、人権を侵害することと知りながら依頼を引き受けてしまう。実はカランが契約を急いでいたのは、彼が多額の借金を負っているため。金貸しから返済の催促を受けたカランは、今回のウエディング企画の成功を当て込み、2日以内の返済を確約。
ところが身辺調査の結果、新婦は3年前に中絶を経験していたことが判明。処女でないと知った途端に新郎の母は、あの女は金目当てで近づいたのだと怒りに燃える。婚約破談の危機を回避したいカランは、中絶したのは新郎・アンガドとの間にできた子であり、付き合うまで彼女は処女だったと証言させる奇策を思いつき...。
『メイド・イン・ヘヴン ~運命の出会い~』予告編
インド社会の伝統と、相反する新郎新婦のマインド
非常に見応えのあるシリーズを生み続けるAmazonのインド発ドラマ。そのなかでも最新作となる本シリーズ『メイド・イン・ヘヴン』は、華麗な式だけでなく、新郎新婦に興味深いバックストーリーが設定された作品、と米Decider誌は評価。現代インドでミレニアル世代が経験する伝統的価値観との軋轢を、鋭い洞察力で描写する。名家の多いデリーには、いまだに家柄と血筋にこだわる風潮が根強い。そんななかでタラとカランは、価値観の違う世代同士の架け橋になろうと奮闘する。
現地インドのQuint誌も、豪華な挙式シーンだけでなく、その裏に流れる人間模様を描いたドラマだと表現。幸せな式が実現するまでに、新郎と新婦は秘密、嘘、不信に苛まれる。理不尽な伝統と習慣に屈しそうになるカップルたちを通じ、現代インド社会における伝統のあり方を問い掛けるシリーズだ。
主人公コンビにもドラマの予感
新婚カップルの側だけでなく、タラとカランにもそれぞれ深みのあるストーリーが用意されている。Decider誌は、旧態依然とした伝統的思考とそれぞれが闘っていると紹介。タラは女性だからといって家事に徹することはせず、カランとともに新鋭のウエディング会社を成長させようと熱意に燃える。
人に明かせぬ嘘とごまかしが主人公コンビにも内在する。ただ無口なだけに見えるタラだが、その沈黙には理由がある、とQuint誌は意味ありげな一言を掲載。カランの方も、男性とベッドをともに――。感情に訴えるシーンを通じてホモセクシュアルについての議論を仕掛ける作品は、インドのドラマとしては史上初かもしれない、と同メディアは本作のメッセージ性を評価している。
式場のカーテンの向こう側に、魅力あるインドの価値観が息づく『メイド・イン・ヘヴン ~運命の出会い~』は、Amazon Prime Videoで配信中。(海外ドラマNAVI)
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『メイド・イン・ヘヴン ~運命の出会い~』