世界が終末へと導かれようとする中、地球を守りたい悪魔が親友の天使と組んで反旗を翻す。Amazon Prime Original『グッド・オーメンズ』は、まったりとした語り口でハルマゲドンの到来を描く全6話のミニシリーズで、Amazon Prime Videoにて配信中だ。
【関連記事】「こは天使と悪魔のラブストーリー」『グッド・オーメンズ』出演者インタビュー
最初から間違いだらけの滅亡計画
ハルマゲドンのくだりはある夜、イギリスの片田舎の修道院でシスターたちが何やら密談しているところから始まる。彼女たちは悪魔信仰のシスターたちで、その夜に来院予定のアメリカ外交官の妻ハリエットの出産を手助けする際に、この世を終末へと導くサタンの赤ん坊"反キリスト"とのすり替えを計画していた。
ところが修道院に担ぎ込まれたのは、産気づいたハリエットだけでなく、一般人の妊婦デアドラの計二人。思いがけない急患によってシスター間の連携プレーが失敗したことから、反キリストは外交官宅でなく一般人デアドラの家で育てられることになってしまう。
さて、この計画に一枚噛んでいた悪魔のクロウリー(デヴィッド・テナント)は、実は世界が大好き。人間界で6000年もの時を過ごすうち、すっかり愛着が湧いてしまったのだ。彼と同じく人間界を気に入っているお人よしの天使アジラフェル(マイケル・シーン)を説き伏せ、ハルマゲドンは運命だとして受け入れている天国と地獄にバレないよう密かに阻止しようと試みる。そのため彼らは、そのカギを握る"反キリスト"をまっとうに育てようと、ハルマゲドン到来が予言されているその時までの数年をかけて善悪の教育を施す。当の子どもが、反キリストでなく、すり替えに失敗した普通の子だとは露知らず...。人間くさい天使と悪魔の、隙だらけな世紀末コメディだ。
相性ぴったりの主演コンビ
天使と悪魔を演じるマイケルとデヴィッドは、アメリカのメディアの間で高い評価を受けている。信じられないほど楽しく、エネルギーを感じる二人だ、と述べているのは米Hollywood Reporter紙。昨年話題を呼んだ『キリング・イヴ/Killing Eve』の主演コンビ(サンドラ・オー&ジョディ・カマー)と並び、現在のTV界において最も魅力ある主演コンビだとしている。彼ら二人のほかにも豪華な顔ぶれが揃い、著名人が一瞬だけ姿を現すカメオ出演もチラホラ。神とサタンの声も有名俳優が担当しているので、そうした点に注目するのも楽しいだろう。
天使と悪魔のキャスティングに関しては、米New York Times紙も納得の様子。これ以上しっくりくる配役は想像しにくいと、巧みなキャスティングを称賛する。皮肉屋だが情にもろい悪魔のクロウリーと、ファッショナブルな衣装に身を包んだ非常に気の良い天使のアジラフェル。決して口には出さないものの親友同士である彼らが、天国と地獄が待ち望む計画を打ち砕こうと四苦八苦する様子だけでなく、独特のキャラクター性でも魅了する。
原作者の遺志、ついに実現
本作『グッド・オーメンズ』の原作は、ファンタジー小説の重鎮であるテリー・プラチェットとニール・ゲイマンによる同名小説。プラチェットは2015年に亡くなっており、死の間際に本作の映像化をゲイマンに託したという経緯がある。
小説版に仕掛けられた巧妙なひねりは、ドラマでもしっかりと受け継がれている。物語をわかりやすくするため、頻繁に解説が挿入される点は映像作品ならではだ。小説よりも説明くさくなっている点について、米New York Times紙は原作ファンががっかりするかもしれないと危惧しつつ、『サウンド・オブ・ミュージック』のパロディをはじめとした数々のジョークとウィットに溢れた作品だともコメントしている。次第にハルマゲドンが近づくが、世界の終わりを描きながらもコメディ作品として成立しているのは、キャストたちの絶妙な演技に加えて、ゲイマンが製作に大きく関わっていることも大きいだろう。
なんとしても世界を救いたい天使と悪魔の友情と奮闘が魅力的な『グッド・オーメンズ』は、Amazon Prime Videoで配信中。視聴記録やレビューのつけられる海外ドラマNAVI作品データベースはこちら。(海外ドラマNAVI)
Photo:
Amazon Prime Original『グッド・オーメンズ』