『SUITS』待望のスピンオフ『Pearson』 ジェシカ・ピアソンが新天地シカゴで奮闘

法廷ドラマの人気作といえば、『SUITS/スーツ』を思い浮かべる人も多いだろう。残念ながら、今年7月17日(水)から米USA Networkで放送中のシーズン9をもって幕を閉じることが決定しているが、心配は無用だ。メインキャラクターのひとり、ジェシカ・ピアソンを主人公に起用した新作『Pearson(原題)』がスピンオフとして登場。こちらも同日より同ネットワークにて放送が始まっている。

シカゴ政治界の壁

NYの辣腕弁護士たちの活躍をスタイリッシュに描いた本家『SUITS』。そのスピンオフとなる本作『Pearson』は舞台をシカゴに移している。弁護士企業で生き馬の目を抜くような日々を過ごしてきたジェシカ(ジーナ・トーレス)だが、競争社会から距離を置くことを決意。家族との時間を大切にしようと、昔親しんだシカゴに移り住むことに。

そのシカゴの街では、市長(モーガン・スペクター)が大規模な再開発計画を推進中。雑然とした街にテコを入れ、高級化を進めようと目論んでいる。経歴を買われたジェシカは、すぐに市長の右腕として抜てきされることに。意気揚々と職場に赴くが、ここで思わぬ壁に直面することになる。望めば誰もが彼女の意のままに動いたNY時代とは異なり、シカゴ流の進め方を重視する周囲は彼女を完全によそ者扱い。めげずに持ち前の反骨精神をフルに発揮するジェシカだが、それがさらなる問題を引き起こしてしまう。

人間関係にスポットライト

才能あふれる弁護士たちのスマートな日々を描いた本家から一変、スピンオフ『Pearson』は人間ドラマに軸足を移した印象だ。『SUITS』のバージョン2.0というわけでは決してない、と米TV Guide誌は断言。ジェシカは職場では一目置かれていたが、その私生活では家族とわだかまりを抱えたままだった。新作スピンオフは、そんな彼女の再出発の物語となる。舞台をシカゴに移し、そこに住む家族をドラマに登場させたことで、ジェシカの内面を描くための舞台装置が整った。

本家とのトーンの違いに視聴者は戸惑いを覚えるかもしれない。しかし人間味重視にかじを切ったことで、ジェシカの内面を深く描写できるようになったのは大きなメリットだ。より価値あるキャラクターに感じられるようになった、と米Paste誌は評価している。作品全体について同誌は、本家がリーガル・スリラーであるのに対し、本スピンオフはポリティカル・スリラーであると指摘。トーンが違うのと同様、テーマにもかなり違いがあることを意識しておいたほうが良さそうだ。

構成にも変化が

オリジナルとの差異はほかにも多くあり、新しいトーンを導入しようとした工夫の痕を端々に感じることができる。構成の違いに注目するTV Guide誌は、スピンオフではフラッシュ・フォワードを採用している点を指摘している。気になるシーンが冒頭で提示され、シーズンのクライマックス近くになってその意味が明かされるという趣向だ。また、終始明るいトーンで意欲に燃える弁護士集団を描いていた『SUITS』からはムードが一変。政界と企業とのドロドロした関係を描くスタイルを採用し、視聴者をこれまでとは違った心理に誘う。

難をつけるとすれば、従来とは違う環境を構築しているため、シーズン丸ごとが状況説明のように感じてしまうことも。Paste誌はその点を認めつつも、シーズン1はプロローグのようなものであるとも擁護。今後の展開の良さは間違いないと述べ、趣向を変えたスピンオフに期待感を示している。

人間の内面に迫る『Pearson』は、USA Networkで放送中。本家『SUITS/スーツ』は、HuluおよびNetflixで配信中だ。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Pearson』
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