世界最大のメディア企業グループを牛耳る、ロイ家。 一家を率いるローガンは高齢の上、健康状態にも問題がある。彼の引退を見越した家族たちは、グループ内での身の振り方をそれぞれ画策し始める...。家庭内の陰謀をシニカルに描く『キング・オブ・メディア』に、シーズン2が登場。米HBOで8月中旬から放送されている。
経営一族の内紛をシニカルに
年老いたCEOのローガン(『ボーン・アイデンティティー』のブライアン・コックス)は、80回目の誕生日の席で役職の続投を宣言。引退と権限の委譲を予期していた一家の面々は、思わぬ肩透かしを食らうことになる。しかしその直後、ローガンは脳出血により意識不明の重体に。彼の不在を好機と捉えた家族は次男のケンダル(『マスターズ・オブ・セックス』のジェレミー・ストロング)をCEOに仕立てるが、会社に多額の負債があることが発覚。未公開株の譲渡により返済資金を工面したケンダルだが、意識が回復したローガンの猛烈な怒りを買ってしまう。
スリリングかつシニカルな面白さはそのままに、物語は新章へ突入。まだまだ引退の気配がないCEOのローガンは、メディア企業の買収で自らの帝国をさらに拡大しようと試みる。一族の内部に走る駆け引きのスリルと、我が身可愛さに他人の足を引っ張り合う面々へのシニカルな視線が興味を掻き立てる。
"嫌われ者たち"でも明快なテーマで成功
難しい作品をうまく成功させたと見るのは米Hollywood Reporter誌。貪欲でモラルを欠く金持ち一族という設定は視聴者が好感を持ちづらい。しかし、メディア企業の主の健康問題を発端に子どもたちが経営権争いを繰り広げるという分かりやすいテーマを設定することにより、夢中になって観られるストーリーとなった。作品への評価は極めて良好であり、レビューサイトのRotten Tomatoesでは批評家・視聴者によるスコアともに90%以上をマーク。さらにシーズン1は本年度エミー賞で作品賞ほか5部門にノミネートされており、9月半ばからの受賞結果発表を待っている状態だ。
シーズン2では、まだまだ現役のローガンが打つ次の一手が焦点に。すでに巨大なメディア・コングロマリットとなったグループを、他企業の買収によってさらに拡大しようと試みる。こうした政治的駆け引きが生むスリルだけでなく、家庭内の緊迫した関係が興味深い、と米New Yorker誌。メディアグループという果てしなく大きな遺産を前に、家族の隠された本性が露になる。
ユーモアの巧みな利用法
ダークなテーマを柔らかに包み込むユーモアのセンスにも注目したい。これだけ緊張感のある一家の駆け引きを主題としていながらも、暗いストーリーになっていない。御しがたい傲慢な経営者であるローガンのシーンにさえシニカルな笑いのタネが仕込まれている。「パンがないならケーキでも食わせておけ」と言わんばかりの彼の態度は、高飛車でありながらも笑いを誘う。視聴者はこうしたユーモアに気を取られて、感情を刺激する大きな出来事が迫っていることにさえなかなか気づかない、とHollywood Reporter誌は指摘する。ダークな展開を直前まで覆い隠しておくテクニックが光っている。
コミカルなシーンの例としてNew Yorker誌は皮肉混じりの場面をいくつか挙げている。最低限のマナーだけ守ろうと定型文そのままで送られた弔辞など、一つひとつの言葉の機微にクスリとくるシーンが豊富だ。企業の相続をめぐるシリアスなドラマだけでなく、繊細な感覚で作り上げられたコメディとしても楽しみたい。
引退しそうでしないCEOに一家が揺れる『キング・オブ・メディア』シーズン2は、米HBOで放送中。シーズン1は、『サクセッション』というタイトルでAmazon Prime Videoにて配信しているほか、『メディア王 ~華麗なる一族~』というタイトルでDVDレンタル中だ。(海外ドラマNAVI)
Photo:『キング・オブ・メディア』
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