最高の悪役のモデルはジョフリー!『ゲーム・オブ・スローンズ』×『キングダム』鼎談

ジョージ・R・R・マーティンの世界的ベストセラー小説をドラマ化した大河ファンタジー『ゲーム・オブ・スローンズ』が、今年5月ついに完結した。そして、人気漫画の実写映画化である『キングダム』は4月より公開された。史実とファンタジーがほど良く混じり合った魅力的な群像劇を作る秘訣とは何なのか? 『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターであるデヴィッド・ベニオフD・B・ワイス、『キングダム』の原作者である原泰久が、鼎談で語ってくれた。

日本に来るのが念願だった『ゲーム・オブ・スローンズ』のプロデューサーコンビは、「ずっと前から僕とダニエル(ワイス)は日本に来たくて、HBOにリクエストし続けていたんだ」とベニオフが言うと、ワイスも「若い頃から日本のストーリーテリングの文化やアートに魅せられてきた僕らにとって、日本で成功することは大きな意味を持つんだ。14歳の頃から来たかった場所にようやく来られて嬉しいよ」と笑顔で続けた。

MCから『ゲーム・オブ・スローンズ』を作り終えた感想を聞かれたベニオフは、「ほろ苦い気分だね。この作品は僕らの人生において多くの時間を占めてきたから。14年前に原作を読み、13年前にHBOに企画を売り込んだ当初は僕らのどちらも子どもがいなかったけど、その後に僕は3人、ダニエルは2人の子どもに恵まれたように、大きく人生が変わっているんだ」と、費やしてきた10年以上の歳月を振り返った。

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また、製作を通して築いてきた"ファミリー"との別れも辛かったという。「この作品で関わってきた人たちは一つのファミリーなんだ。すべての撮影を終えてキット・ハリントン(ジョン・スノウ役)やピーター・ディンクレイジ(ティリオン・ラニスター役)、エミリア・クラーク(デナーリス・ターガリエン役)と別れる時も、(音楽担当の)ラミン・ジャヴァディや音響チームと別れる時も悲しかった。HBOのおかげで最後まで僕らの作りたいように作れたことはありがたく思っているけど、もうみんなと一緒に過ごせないことはずっと寂しく思うだろうね」とベニオフ。

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友人から薦められて『ゲーム・オブ・スローンズ』の大ファンになったという原は、最終章について、「第一章から一貫して観ている側の予想を裏切る展開がすごく、最終章は特に裏切りの連続で、それでもしっかり結末を迎えていて大満足でした。ただ、続きがもう見られないのは寂しいですね」とコメント。さらに本作の魅力について「群像劇なんですが主人公が誰か分からないという新しいスタイルで、第一章でネッド(・スターク)が死んだ時に心を掴まれました。そこから興奮の繰り返しですよね。いろんなドラマが同時進行するにもかかわらず、それが混乱せず、どのキャラのストーリーも面白いという、計算し尽くされた脚本です」と熱弁をふるった。

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ここで『キングダム』の予告編を見たベニオフは、クリエイターならではの視点で分析。「僕らが『ゲーム・オブ・スローンズ』を8シーズン分撮影したことで学んだものの一つが、群衆や馬のいるシーンの撮影の難しさなんだ。でもこの作品ではそれらはもちろん、戦いのシーンも非常に美しい。時間と技術をかけられた作品であることが伝わってきたよ。そして肝心なポイントである、キャラクターがしっかり作り込まれているということもね」

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また、映画版の脚本に関わった原が、原作を読んでいる人と読んでいない人の双方が楽しめるものにする大変さを振り返るとベニオフたちも賛同。「ジョージ・R・R・マーティンの原作では何千ページも費やしていろんなキャラクターを背景まで含めて描き込んでいるけど、ドラマでは尺の関係でそうした記述を削ることもあった。さらにキャラクターが考えていることを本と違ってそのまま映像にするわけにはいかないから、大胆に翻案しなければならない。映像でこそ語れる語り口というのを生かしつつ、ほど良く複雑に語る方法を考えなければならなかったんだ」

どのように物語を作り上げているかという質問に、原は「僕が大事にしているのは人物相関図ですね。血縁でなくポリシーや立ち位置を示したものですが、奴隷と王様のように両極端にあるものが結びつくのはドラマチックだと思うので、それを意識して作っています」と説明。ワイスは「『ゲーム・オブ・スローンズ』は日本や西欧やネイティブ・アメリカなどの様々な歴史を元にしているけど、その時代を生きている人にとっては『現在』であり『現実』なわけだよね。そのリアル感をいかに出していくかを意識しながら作っていたよ」と解説した。

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製作過程が似ている両作にはキャラクターにも被るものが多いようだ。『キングダム』で奴隷の身から大将軍へと駆け上がっていく信は『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョン・スノウに、山の民を率いる楊端和はデナーリスに重なる部分があるという話の流れで、原から、山の民の筋肉はドスラク人をイメージしていること、映画の成蟜(せいきょう)を誰が見ても嫌いだけどどこか惹きつけられる悪役にする上で、彼にとって最高の悪役であるジョフリーを参考にするよう映画スタッフに伝えていたことが明かされた。

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それを聞いたベニオフは、自分たちも黒澤明監督の『乱』の撮影方法に影響を受けていると告白。その『乱』はウィリアム・シェイクスピアの影響を受けていることも引き合いに出し、「インスピレーションを与えるということは国境も時代も超えるものなんだね」とニッコリ。

最後に、個人的に好きなキャラクターと、クリエイターとして書いていて楽しかったキャラクターを聞かれた3人。

ベニオフは「もちろんどのキャラクターも好きだけど、あえて一人挙げるならサムウェル(・ターリー)かな。『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界には戦士や王、女王が存在するが、僕らが体験として唯一共感できるのは本好きなサムウェルなんだ。彼は図書室で本を読んでいるのが一番好きという人物だが、ヒーローの素質も持っている」と、ジョンの親友を挙げた上で、このキャスティングに関する裏話も教えてくれた。「実はサムウェル役は別の俳優になるはずだったんだ。でも、オーディションの最後に会ったのがジョン・ブラッドリーだった。エレベーターのないビルの6階にある会場に来るため、階段を駆け上がってきた彼は全身汗だくでね。そんな姿を見てすぐに僕らは、"彼こそサムウェルだ"と思ったんだよ。彼があまりにも素晴らしいので、出演シーンを増やすことにしたんだ」

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一つ目の質問は答えるのが難しいからとスキップしたワイスが、ついつい膨らませてしまったキャラクターは「ティリオン」。演じるピーターが素晴らしいあまり、出番がどんどん増えていき、ティリオンがひたすら語るモノローグのシーンを7ページも書いた時には、「僕には家族もいて睡眠時間をこれ以上削るわけにはいかないのに、なんで『ハムレット』並みに台詞があるんだい?」と文句を言われたりもしたんだとか。

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そして原は、個人的に好きなキャラクターには、「山﨑賢人くんが演じてくれて、さらに好きになった」という信をチョイス。想像以上に成長してしまったのは王騎だそうで、亡くなった記述しか史記に書かれていなかった彼が勝手にどんどん強くなって最終的にどうやって倒したらいいのか分からなくなってしまったため、「最後は僕と王騎の戦いみたいになっていました」という舞台裏を披露した。

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■『ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』商品情報
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11月6日(水)ブルーレイ&DVD発売
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11月6日(水)ブルーレイ&DVDレンタル開始
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10月9日(水)より先行配信
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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デヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス、原泰久
『ゲーム・オブ・スローンズ』
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『キングダム』
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