ドラマ版「ライラの冒険」、原作へのリスペクトに満ちた秀作 本国での評価は?

ベストセラー小説「ライラの冒険」三部作をドラマ化した『ヒズ・ダーク・マテリアルズ(原題)/His Dark Materials』が、英BBC、米HBOなどで11月上旬から放送されている。ある時はファンタジーの世界に胸を躍らせ、またある時は辛辣な描写とキャラクターのセリフに心を動かされるという、原作小説の読書体験をそのまま映像化した秀作だと評価が高い。本国でのレビューを紹介しよう。

評議会の陰謀に立ち向かう少女

『His Dark Materials』は、小説が描く重厚なストーリーを3シーズン・全24話で映像化する一大プロジェクトだ。BBCとHBOが共同製作し、前者がイギリス国内で放送、後者が世界に配給する。

作品の主人公は、身寄りがなく大学の寮に預けられた12歳の少女・ライラ(ダフネ・キーン)。マスターと呼ばれる男(クラーク・ピータース)や図書館司書のチャールズ(イアン・ゲルダー)などに面倒を見られながら、何不自由ない暮らしを送っていた。しかし親友のロジャー(リューイン・ロイド)が何者かに連れ去られたことで、ありふれた日常は一変。慣れ親しんだオックスフォードの地を離れ、危険な旅に出ることになる。

道中耳にした噂によると、コールター夫人(ルース・ウィルソン)率いる総献身評議会と呼ばれる集団が、どうやら子供たちを連れ去り良からぬ計画に利用している模様。ライラは知恵と度胸を頼りに、ダイモンと呼ばれる動物の守護霊が存在する不思議な世界で、友人を救うための冒険を繰り広げる。

原作へのリスペクトが好評

著名局が総力を挙げて製作する『His Dark Materials』を英The Telegraph紙は、豪華で秀逸な作品だと評している。第1話ではまだ想像を超えた驚きに満ちた作品という印象ではないものの、原作小説の持つ不思議な魅力をそのまま再現している。児童文学である同作は、子供たちの好奇心を刺激しながらも、大人でさえたじろぐような辛辣で容赦ない表現をも盛り込んだ魅力ある作品だ。万人が好むようなエンターテイメント小説であると同時に、まるで警句のような知的表現を会話の端々に織り込んでいる。かといってインテリな表現が鼻につくことは決してなく、スリル溢れる冒険ストーリーが読者を物語世界へと引き込む。ドラマ版でもこうした原作の特徴をしっかりと受け継いでいる。

2007年には『ライラの冒険 黄金の羅針盤』として映画化も行われているが、そちらはいまひとつ冴えず、興行的にも失敗に終わったと米Los Angeles Times紙は厳しく指摘している。一方、ドラマ版の今作について同記事では、原作に忠実になるよう配慮が行き届いており、小説版のファンも満足できると太鼓判。主要なポイントでカットされたものは何一つ見あたらないといい、世界を虜にしたベストセラー小説の世界を心ゆくまで楽しむことができる。

子役の自然な演技が引き立てるファンタジー世界

主役のライラを演じるのは、14歳の子役・ダフネだ。イギリス出身の俳優ウィル・キーンとスペイン出身の女優マリア・フェルナンデス・アチェという、ともに俳優である両親の元に生まれた。2014年、父親が出演するテレビシリーズ『The Refugees(原題)』で子役デビュー。彼女についてThe Telegraph紙は、若い視聴者層に好まれるであろう現代っ子らしさと、大人も満足させることのできる肝の座った演技力の両方を持ち合わせた逸材だと評価。イギリスの子役は総じて芝居がかった傾向があるというが、ダフネの場合は自然な演技も強みだ。本作でも実は父ウィルと親子共演を果たしている。

彼女のほかにも、北極グマの戦士に魔女など、ファンタジーならではのキャラクターたちが画面を賑わせる。宇宙から舞い降りるダストと呼ばれる謎の物質や、オーロラの向こうに浮かぶ天上都市など、イマジネーションをかき立てる世界観をLos Angeles Times紙は紹介。濃厚な想像上の世界がテレビ画面いっぱいに広がる。

少女ライラが冒険の旅路へと誘う『ヒズ・ダーク・マテリアルズ(原題)/His Dark Materials』は、英BBC、米HBOなどで放送中だ。(海外ドラマNAVI)

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