近年ハリウッドでは映画界とドラマ界の垣根がますます低くなり、映画スターがドラマシリーズに出演するケースがこれまで以上に増えるとともに、動画配信サービスの急増もあって出演料が跳ね上がっているようだ。米Varietyが人気スターのドラマ出演料を報じているので、インフラが起きている理由とともに紹介したい。
映画界を中心に活躍してきたニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンは、2017年にスタートした米HBOのサスペンスドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』を機に、引き続きドラマ界で女優・プロデューサーとして活動中。また、ハリソン・フォードがドキュメンタリー番組『ザ・ステアケース ~階段で何が起きたのか~』のドラマ版に、マーベル映画『キャプテン・アメリカ』シリーズのクリス・エヴァンスが「Apple TV+」の新作ドラマ『Defending Jacob(原題)』にそれぞれ主演することが発表されていた。
今回発表された、ドラマ界の主なサラリー(一話あたり)は以下の通り。※下記ドラマタイトル&配信情報を2020年7月13日に修正済み
●ハリソン・フォード:Netflixで配信中『ザ・ステアケース ~階段で何が起きたのか~』...120万ドル(約1億3000万円)
●リース・ウィザースプーン:Amazon Prime Videoで配信中『リトル・ファイアー~彼女たちの秘密~』...110万ドル(約1億2000万円)
●ニコール・キッドマン:Hulu『Nine Perfect Strangers(原題)』...100万ドル(約1億1000万円)
●ジェフ・ブリッジス:FX/Hulu『The Old Man(原題)』...100万ドル(約1億1000万円)
●スティーヴン・カレル:Netflixで配信中『スペース・フォース』...100万ドル(約1億1000万円)
●クリス・エヴァンス:Apple TV+『ジェイコブを守るため』...75万ドル(約8200万円)
●パトリック・スチュワート:Amazon Prime Videoで配信中『スター・トレック:ピカード』...75万ドル(約8200万円)
●ブライアン・クランストン:Showtime『Your Honor(原題)』...70万ドル(約7700万円)
●ジュリア・ロバーツ:Amazon Prime Videoで配信中『ホームカミング』...65万ドル(約7200万円)
●ジェイソン・モモア:Apple TV+『SEE ~暗闇の世界~』...60万ドル(約6600万円)
●アンセル・エルゴート:HBO Max『Tokyo Vice(原題)』...50万ドル(約5500万円)
●ケヴィン・コスナー:Paramount Network『Yellowstone(原題)』...50万ドル(約5500万円)
●ジュリー・ボーウェン:ABC『モダン・ファミリー』...50万ドル(約5500万円)
●ポール・ラッド:Netflixで配信中『僕と生きる人生』...45万ドル(約4900万円)
●レネー・ゼルウィガー:Netflixで配信中『What/If 選択の連鎖』...40万ドル(約4400万円)
●ヒラリー・スワンク:Netflixで2020年9月4日配信開始『Away -遠く離れて-』...40万ドル(約4400万円)
●ミリー・ボビー・ブラウン:Netflixで配信中『ストレンジャー・シングス 未知の世界』...35万ドル(約3800万円)
●オーランド・ブルーム:Amazon Prime Videoで配信中『カーニバル・ロウ』...35万ドル(約3800万円)
●ロザムンド・パイク:Amazon『Wheel Of Time(原題)』...35万ドル(約3800万円)
●レイチェル・ブロズナハン:Amazon Prime Videoで配信中『マーベラス・ミセス・メイゼル』...30万ドル(約3300万円)
●スターリング・K・ブラウン:NBC『THIS IS US/ディス・イズ・アス』...25万ドル(約2700万円)
●スティーヴン・アメル:Starz『Heels(原題)』...25万ドル(約2700万円)
一話あたり100万ドルを超える人も散見される中、際立つのが動画配信サービス作品の高額ぶりだ。それ以外で唯一高額だったケーブル局Showtimeのエンターテイメント部門責任者であるゲイリー・レヴィンはこのように述べている。「給料は劇的に上がっているよ。新たに参入してきた動画配信サービスが積極的に動いているからね。その結果、我々も持っている以上の額を支払わざるを得ない。しかし、サラリーの高騰が市場の混乱を招かないように気を付けなければ」
ハリソンのような映画スターの参入はこれからも続きそうだ。ある代理人は、「どんな俳優もドラマに出る可能性はある。かつては『ドラマに興味はない』と言っていたが、今はレオナルド・ディカプリオだって例外じゃないんだ。例えば、全8話のリミテッドシリーズなら映画感覚で出られるからね」
レオナルドやトム・クルーズ、ブラッド・ピットのような超大物なら、一話あたり200万ドルに達するかもしれない。実際、ハリソンが120万ドルを受け取るほか、クリス・プラット(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)が140万ドルの契約を近々結ぶと見られているのだ。映画スターがドラマに進出するきっかけを作ったと言われる2014年のサスペンスドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』で、マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンのサラリーが20万ドルずつだったことを考えると大きな変化だ。
『フレンズ』の終盤で6人のレギュラーのサラリーが100万ドルずつだと話題になったのは約15年前。近年は、『ビッグバン★セオリー ギークな僕らの恋愛法則』や『ゲーム・オブ・スローンズ』のレギュラー陣、『ウォーキング・デッド』のノーマン・リーダスも同額を受け取るようになった。ただし、それだけ稼げるのは実際にヒットを飛ばしたからだったはずが、製作開始当初から高額という例も増えてきている。ある代理人は「そういうナンセンスなことを始めたのはAppleだ。我々代理人にとってはありがたい話だが、法外な金額だよね」と語る。「かつてはネットワークで10年以上にわたって愛される作品が大金を生み出していた。だが、4シーズン以内で終わることが多いNetflixやAmazonではそういう長寿ドラマは生まれないだろう」
今年11月に「Disney+」と「Apple TV+」が始まったほか、2020年春にはアメリカでWarnerMediaによる「HBO Max」、構成話数が少なく尺が短い番組のみを配信するサービス「Quibi」がスタート予定で、引き続き配信サービスの競争が激化するものと見られる。それに比例するように、他と差をつけるために革新的でクリエイティブ的にもチャレンジ性に満ちた番組が増えていき、それに引き寄せられた映画スターの参入が加速するという傾向が今後いっそう強まることになりそうだ。(海外ドラマNAVI)
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クリス・エヴァンス (C)NYKC
ハリソン・フォード (C)AVTA/FAMOUS