魅力の新作と新シーズンに恵まれた2019年も、そろそろ終わりを告げようとしている。今年の秀作を振り返る米New York Times誌の推薦作を参考に、今年のベストドラマを振り返ってみよう。
目次
個性派キャラクターが織りなすヒューマンドラマ
■『Fleabag フリーバッグ』
絶大な支持を集めるAmazonオリジナルの人気シリーズ『Fleabag フリーバッグ』に、2年ぶりとなるシーズン2が登場。破滅的な人生を歩むロンドン女性・フリーバッグが、父の再婚の挙式で司式者を務めることになった神父に特別な感情を抱く。主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジは、なんと自身でシリーズの脚本を手がけている。演技も執筆もパーフェクトにこなすその離れ業は、まるで至高のヴァイオリンであるストラディバリウス自体が作曲も行うようなもの、とNew York Timesは絶賛している。Amazon Prime Videoで全2シーズン配信中だ。
■『サクセッション』
続いて紹介する米HBO製作の『サクセッション』は、巨大メディア産業をテーマにしたコメディ。笑いだけでなくピリついた空気感が心地よい。一大企業グループを牛耳る老いたCEOと、彼の引退を狙う子供たちの思惑が交錯。現在はシーズン1がAmazon Prime Videoで配信中。『キング・オブ・メディア』や『メディア王~華麗なる一族~』というタイトルで放送・DVDリリースもされている。本国でシーズン3のリリースを2020年に控える好調のシリーズだ。
■『アンビリーバブル たった1つの真実』
変わって『アンビリーバブル たった1つの真実』は、実際の事件に着想を得たずしりと重たい作品。若い女性のマリーは、自宅で眠っていたところを侵入者にレイプされたと訴える。初めは親身になっていた警察も、彼女が証言をたびたび変えることから作り話だと断定。しかしその3年後、離れた場所で手口の酷似した事件が発生する。Netflixで配信中だ。
■『ボクらを見る目』
同じく正義を追求するミニシリーズから、『ボクらを見る目』もリスト入りしている。ニューヨークで発生した暴行事件の被疑者として、治安の良くないハーレム地区に住む少年5人が検挙される。アフリカ系への偏見が不利に働き、少年たちの半生は大きく変わってしまう。疑われる者たちの無念が、視聴者の心の奥底に呼びかける。Netflixで配信されている。
タイムスリップがトレンドに?
続いては変わり種として、タイムスリップを題材とした2点を紹介する。
■『ロシアン・ドール: 謎のタイムループ』
Netflixオリジナル作品の『ロシアン・ドール: 謎のタイムループ』は、不運にも誕生日に交通事故で死亡した女性が、その日を何度もループするコメディ・シリーズ。どんなにあがこうとも、どれだけ注意深く行動しようとも、一日の終わりまでに何らかのアクシデントで死亡してしまう。ループの原因を突き止め、死の連続から抜け出そうとする。全8話が配信中だ。
■『アンダン 〜時を超える者〜』
もう一作の『アンダン 〜時を超える者〜』は、ドラマとアニメの良いとこ取りをしたAmazonオリジナルシリーズ。ふとしたきっかけでタイムリープの能力を得た女性が、何者かに死に追いやられた父の運命を変えようと奮闘。実写映像をトレースするロトスコープという手法により、妙にリアルな新感覚のアニメーションが生まれた。
日本上陸が待たれる魅力作
続いては、日本未上陸のドラマを先取りして紹介する。
■『Better Things(原題)』
『カリフォルニケーション』のパメラ・アドロン出演の2016年から続く日常系コメディ。パメラ演じる女優のサムはハリウッドでのポジションを維持するため、毎日想像を絶するストレスにさらされている。さらに家庭に戻れば、3人の娘たちを育てるシングルマザーとしてせわしない時間が。日々の暮らしのなかに息づく希望と失望を、母娘3世代の登場人物たちにより賑やかかつ感情豊かに映し出す。米FXでシーズン3まで放送済みで、2020年にシーズン4の放送を予定している。
■『Catastrophe(原題)』
ずばり「大災害」を意味する『Catastrophe』は、行きずりの恋に始まった一組の男女を追ったイギリス発のコメディ。旅行先で偶然知り合い、そのまま燃えるような夜を過ごした二人。一夜限りの関係が終わりを告げるとそれぞれの人生へ戻るが、その数週間後、予想外の妊娠が発覚してしまう。二人の選ぶ道とは――。本国では英Channel 4で、アメリカではAmazonで配信されている。 映画『ゲーム・ナイト』のシャロン・ホーガンと『デッドプール2』のロブ・ディレイニーが出演している。
■『Documentary Now!(原題)』
ドキュメンタリー番組のスタイルで贈るコメディ・ショー。ヒップスターや高齢化社会、そして怪しい宗教団体など毎話違ったテーマを取り上げる。インタビューや古風な「資料映像」を交えた信憑性たっぷりのフォーマットに騙されそうになるが、よくよく聞くと耳を疑うような作り話がひょうひょうと語られている。本作は現在国内での配信はされていないが、同様なスタイルのモキュメンタリー作品をお探しの方にはNetflixで配信中の『アメリカを荒らす者たち』もおすすめだ。
■『PEN15(原題)』
特殊な趣向のコメディとして『PEN15(原題)』の名が挙がっている。アラサー女優二人が中学生女子を演じるという思い切ったキャスティングで話題に。タイトルの後半をISに読み替えるとピンと来るが、いろいろなことに興味が出てくる思春期を題材にした、ちょっぴりお下品なコメディだ。
グラフィックノベルを原作としたドラマ作品
■『ウォッチメン』
最後はアクション作品『ウォッチメン』。米ソ冷戦を機に核戦争が目前まで迫ってしまったもう一つの歴史世界で、人種差別主義者たちの勢いは増すばかり。刑事のアバーは善き心を持った警察署長とともに、保身のためマスクで素顔を隠しながら悪に立ち向かう。こちらはグラフィックノベルのドラマ化であり、すでに同じ作品を原作とする映画『ウォッチメン』もリリースされており、Netflixで視聴可能。ドラマ版は2020年1月31日(金)よりスターチャンネルにて独占日本初放送。
New York Times誌が推薦する上記作品を参考に、年末年始はドラマライフに浸ってみてはいかがだろうか。(海外ドラマNAVI)
Photo:『Fleabag フリーバッグ』© 2016 Amazon Studios/ Netflixオリジナルシリーズ『ボクらを見る目』© Atsushi Nishijima/Netflix/ Netflixオリジナルシリーズ『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』/ 『アンビリーバブル たった1つの真実』 (C)Beth Dubber/Netflix/ Amazon Original『アンダン ~時を超える者~』 シーズン1/ 『Better Things』© 2014 FX Networks, LLC All Rights Reserved/ 『ウォッチメン』©2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc./『サクセッション』© 2018 - HBO