2019年の最も優れたドラマランキングを各紙が発表するなか、英Guardian紙は独自のランキングを公開している。アイルランドが登場する『Catastrophe(原題)』やヨーロッパ中を不安に陥れた事件を描く『チェルノブイリ』、英政界の未来を占う『Years and Years(原題)』にロンドンが舞台の『Fleabag フリーバッグ』と、イギリスらしさを感じさせる顔ぶれだ。同ランキングからトップ10をご紹介したい。なお、かっこ内はオリジナルの放送媒体での放送または配信年と、現時点での日本での視聴方法を示している。
期待の10位からカウントダウン
10位:『ユーフォリア/EUPHORIA』
(2019年/Amazon Prime VideoチャンネルのスターチャンネルEX)
うわべだけの幸福がSNSに溢れるこの時代に、まだ何者でもない少女たちが「幸せとは何か」を自身に問い続ける。『ティーン・スパイ K.C.』や『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でティーンのカリスマ的存在のゼンデイヤを主人公に、ドラッグとセックスに興じる若者像を見せる米HBOの衝撃作。
9位:『Catastrophe』
(2015年~2019年/現在国内配信なし)
一夜限りの恋から始まる人生最大の「大惨事」を描くコメディ作品。アメリカから出張でアイルランドを訪れたロブ(ロブ・ディレイニー『デッドプール2』)は、現地のシャロン(シャロン・ホーガン『ゲーム・ナイト』)に一目惚れ。燃えるような夜を過ごした後でそれぞれの人生に戻った二人だが、帰国したロブの元にシャロン妊娠の報せが届く。
8位:『This Time With Alan Partridge(原題)』
(2019年/現在国内配信なし)
トークショーの形式で贈るコメディ番組。冴えない人生が続いていた中年男のアランに、トーク番組の司会というビッグチャンスが到来。当面の間だけという契約だが、レギュラーの座を射止めることはできるのか? 映画『あなたを抱きしめる日まで』のスティーヴ・クーガンが主人公アランを務める。
8位と9位の2作品は現時点で日本未配信となっており、登場が待たれるところだ。
7位:『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
(2019年/Netflix)
ニューヨークに住むナディア(ナターシャ・リオン『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』)は誕生パーティーを楽しんだ帰りに、酔ったまま車に引かれてあっさり死亡。その瞬間から、同じ日を何度も生きるという奇妙なループが始まった。負けん気が強い彼女は一日を生きたまま終えてループを脱しようと試みるが、慎重すぎるほどに気を張って暮らしても、何らかの死因に襲われてしまう...コメディを基調としながら生死という深いテーマを扱う作品だ。Netflixオリジナルシリーズ。
6位:『アンビリーバブル たった1つの真実』(2019年/Netflix)
犯罪事件の被害者の心境に焦点を置いたリミテッド・シリーズ。自宅で侵入者に襲われ、性的暴行を受けた少女・マリー(ケイトリン・デヴァー『ビューティフル・ボーイ』)。しかし決定的な証拠がなく、警察の取り調べに怯えるマリー自身の証言も不安定だった事から、事件はでっち上げだと判断されてしまう。しかしその数年後、手口が酷似した別の暴行事件が発生し...。実際に起きたレイプ事件を元に、被害者少女の苦痛と警察から向けられる理不尽な疑いを描く。Netflixオリジナルシリーズ。
5位:『The Virtues(原題)』
(2019年/現在国内配信なし)
中年男のジョセフ(スティーヴン・グレアム『ボードウォーク・エンパイア』)は、離婚により妻と子から同時に引き離される。ショックで昔のトラウマが蘇るようになった彼は、自身の過去と向き合おうと心に決め、辛い少年時代を過ごしたアイルランドの地へ。一人の男の挫折と再起の物語が始まるヒューマンドラマ。
4位:『Years and Years』
(2019年/現在国内配信なし)
政治色豊かなリミテッド・シリーズ。テレビの生放送中に失態を演じてしまった政治家のヴィヴィアン(エマ・トンプソン『いつか晴れた日に』)だが、持ち前の胆力と奇抜なアイデアで引き続き民衆の話題に。ブレグジットの余波に揺れるイギリスの15年先までの未来を、ヴィヴィアンと彼女の家族を通じて描く意欲作だ。
今年の話題作が揃ったトップ3
3位:『チェルノブイリ』
(2019年/Amazon Prime VideoチャンネルのスターチャンネルEX)
HBOが1986年の原発事故を克明に描く、実話ベースのスリラー。混乱する発電所敷地内、何も知らされないまま放射線にさらされる市民、そして極力事実を伏せようとする上層部など、ウクライナの発電所で起きた史上最悪のインシデントをそれぞれの立場から振り返る。『ザ・クラウン』のジャレッド・ハリスと『RIVER リバー』のステラン・スカルスガルドの熱演が評判となった。
2位:『Fleabag フリーバッグ』
(2016年~2019年/Amazon Prime Video)
本作は今年のランキング常連だ。現代社会に適合できないまま気丈に生きる主人公女性を、脚本を手掛けるフィービー・ウォーラー=ブリッジ自身が演じる。持って生まれた皮肉屋の性格を悪びれることもなく、今日も我が道を行くフリーバッグ。シーズン1のフィナーレで炸裂した母娘バトルの記憶も新しいうちに、今年配信が始まったシーズン2では父親との確執が焦点に。さらに思わぬところから恋の物語も芽生えるが、はたしてフリーバッグの想いは成就するのだろうか。米Amazon Prime オリジナル作品。
1位:『サクセッション』
(2018年~2019年/Amazon Prime Video)
こちらは巨大メディア産業の物語だ。放送局や新聞社などを経営する一大グループに、お家騒動が勃発。老いてなお眼光鋭いCEOと、彼の引退を狙う跡取りたち。ちょっとした皮肉の応酬から内密に進む買収計画までを、HBOが壮大なスケールで描く。ランキングを編集したGuardianは、グループ傘下の映画企業を取り仕切るローマン(キーラン・カルキン『FARGO/ファーゴ』)に注目。腹黒い人物がこれでもかと登場する本作だが、なかでもローマンは想像を超えた薄汚い一手を打ってくる。観ていて嫌気が差すような人物がてんこ盛りで、それなのに観始めると止まらないという不思議な魅力のあるシリーズだ。日本では『キング・オブ・メディア』『メディア王~華麗なる一族~』というタイトルで放送やDVDリリースもされている。
以上、英Guardianによる2019年のドラマトップ10をお伝えした。年末年始の作品選びのご参考に!(海外ドラマNAVI)
Photo:『ユーフォリア/EUPHORIA』 (c) 2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc./ Netflixオリジナルシリーズ『ロシアン・ドール』は独占配信中。/『チェルノブイリ』© Home Box Office./『Fleabag フリーバッグ』© 2016 Amazon Studios/『サクセッション』(c)2018 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.