『NCIS』『シカゴ P.D.』も槍玉に...黒人暴行死で犯罪ドラマに寄せられる疑問の声

アメリカにおける犯罪ドラマ(刑事ドラマ)の歴史は、テレビそれ自体と同じくらい長いものだ。初期の犯罪ドラマは、善(警察)と悪(犯罪者)が明確に定義された物語だった。しかし、黒人の人々が警官によって命を落としたことをきっかけに、現実の世界だけでなく架空の世界の警察にも変化を求める声が強まっている。米Varietyが報じている。

日本でも人気の高い『○○警察24時』的な番組の元祖となった長寿のリアリティ番組『全米警察24時 コップス』が、31年の歴史に幕を閉じたことは先日お伝えした通り。1989年にスタートした同番組は1000回以上放送されていたが、アメリカで高まる抗議運動の中で、番組中の容疑者が大抵黒人かヒスパニック系の売人や泥棒であるのに対し、警官は白人が中心であることへの疑問も投げかけられて終了となった。それに似た形式の番組『Live PD』も、直後に同様の理由で終了に追い込まれている。

それらのリアリティ番組のほかにも、架空とはいえ多くの犯罪ドラマがある中、そちらにもアメリカ国民の厳しい目が向けられ始めている。

今度シーズン22へ突入する犯罪捜査ドラマ『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』でシーズン2から11シーズンにわたりショーランナーを務めたニール・ベアーは、以下のように今の思いを述べた。「もし同作に戻れるなら、野心的な要素に取り組みたいと思います。この作品は、かつては口外しがたいという認識だった犯罪の犠牲者を描写する上で非常に重要なのです。一方で、エリオット・ステイブラーは容疑者を殴りつけていましたが、今はもうそういう風には描かないと思います」

また、8シーズン続いた『名探偵モンク』の脚本家だったトム・シャープリングは今月、脚本家や俳優は「警官が善良な人間だという意識付けに暗黙のうちに貢献した」とツイート。黒人に対する暴力問題に切り込んだ社会派ドラマ『ウォッチマン』の脚本家であるコード・ジェファーソンは、多くの犯罪ドラマにはアメリカにおける警官の歴史や知識が欠落しており、それが今も続いていると発言。「私たちは、歴史的に、警察が階級の中に多くの白人至上主義者を抱えてきたという事実を描きたかったのです。そこで、アメリカの都市の多くで警官がKKKのメンバーでもあったという事実もストーリーに採り入れました。それが、今日もこの国が抱える問題なのです」

カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)でアフリカ系アメリカ人の社会学を教えるダーネル・ハント教授は、こう述べている。「刑事ドラマの多くは今でも、アメリカの警察、裁判、刑務所のシステムに、人種差別の要素は存在しないという誤った認識を助長しています。そうした番組では、警官はヒーローなのです。明白に語らないにしても、暗にそう描くことで、私たち視聴者は彼らの見方を受け入れてしまいます。つまり、警官は犯罪者を追っているのであり、犯罪者側は何をされても仕方がない、という考え方です。『NCIS』『LAW & ORDER』『シカゴ P.D.』など犯罪ドラマが数多くありますが、これらは年々、白人至上へ向かっています。そしてこのような番組を見るのは、見る側の考え方と合うからなのです。彼らは特定のコミュニティに恐れを抱くようになり、その結果、いろんな人が存在することに反対するのです。そうやってこの悪循環につながっていくのです」

ただ、犯罪ドラマは多くの視聴者を抱える人気ジャンルのため、ハント教授も製作を中止するのは難しいだろうと考えており、代わりに番組スタッフに多様性を持たせるよう求めている。彼が調べた9本の犯罪ドラマのうち、黒人のショーランナーがいた番組はゼロで、黒人の脚本家が複数いたのは1本だけ(同番組はすでに放送終了)だという。「様々な人を脚本家として迎え入れることです。ストーリーに多様性を持たせない限り、警察を描いたドラマは今の問題を悪化させるだけなのです」と主張している。(海外ドラマNAVI)

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『シカゴ P.D.』
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