『LOST』当初は3年計画だった、脚本家が赤裸々に告白

TV史上最も意見の相違を生んだ1作ともいえるサバイバルドラマ『LOST』。この背後にあったのは、3シーズンで終わらせたいと考えていたクリエイティブチームと、もっと続けて欲しいという要求をした放送局米ABCの幹部との意見の相違。当時のこの過程について、脚本家のデイモン・リンデロフが真相を語った。米Comicbookが伝えている。

飛行機事故の生存者たちが孤島でサバイバルを繰り広げながら、不可解な飛行機事故の真相に迫るという人間ドラマとミステリーを融合された展開が世界中の視聴者の心を掴み、社会現象にもなった『LOST』。しかし、6シーズンの間で浮き沈みを繰り返し、最終的には一部の視聴者から批判が噴出するというフィナーレで幕を下ろすことに。

「僕はうまく駆け引きをしようとしていたわけではなく、ショーを終了させたいという話はパイロットの頃からしていた」と、リンデロフは米Colliderのインタビューで打ち明けた。そしてその考えの通り、シーズン3で終わらせる考えであることをABCにも伝えたが、「人々が見たいと思う番組を作ることがどれだけ難しいかわかるか? 人々が気に入っている番組を終わらせるのはなぜか? 見たいと思ってもらえている番組を終わらせないでくれ」と反応されたという。

ABCは作品の引き出しを増やしてしまえばキャラクターと島を取り巻くミステリーへの関心が制限されてしまうことを理解していなかったのだろう。ABCから"なぜ終わらせたいのですか?"と聞かれるたびに、リンデロフたちは「このフラッシュバックには限りがある」「新しいキャラクターを投入することもできるが、視聴者はオリジナルキャラクターを気に入っている」などとその理由を説明していたものの、納得してもらえなかったそうだ。

そして、ABCの反応を受け、リンデロフと(製作総指揮の)カールトン・キューズは、シリーズを終わらせる意思をさらに強く伝えるようになり、シーズン2が終わる頃に正式な話し合いをしようと進めていた。リンデロフとキューズは2シーズンの契約を交わしていたため、ちょうど契約について話し合うタイミングでもあった。局側とは考えのすれ違いなどもあったが、リンデロフとキューズは1年間の延長に同意。シーズン3のあとは、他の誰かへ引き継ぐことになるのだと思っていたという。

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2006年にシーズン3が放送されるが、このシーズンで初めて"クオリティが下がった"という声も上がるように。どうにかキャラクターを維持し、物語を続けようとすることで脚本家たちは徐々にフラストレーションが溜まるようになったという。「(ヘンリー・ゲイル/ベン・ライナス役の)マイケル・エマーソンや(デズモンド・ヒューム役の)ヘンリー・イアン・キュージックをレギュラーに加えるなど、一部の展開はうまく機能したが、他は全くだった」とリンデロフは話した。

ここまで来て、ようやく本当の話し合いをする機会を得て、『LOST』を終了させることにも同意を得ることができたという。しかし、リンデロフがABCのスティーヴ・マクファーソン社長に「ありがとうございます。これがこのドラマにとって最善です」と伝えたところ、彼は「我々は10シーズン考えていた」と返されたそう。これには、結局のところ、「10シーズンも続けられるドラマがどれだけあるんだ」という意味が含まれていて、リンデロフは"彼らは作品を終わらせる気はなかったということだった"と感じたそうだ。

そして、「当時の僕は、"シーズン4については考えていた"という感じだった。交渉中だったからではなく、ある程度オーシャニック6のストーリーを練っていたから。シーズン3の後半の頃にはもう1シーズン、フルシーズン製作できると思えるようになっていた」と振り返る。

しかしABCは「9ならどう?」とリンデロフたちの考えを理解したとは思えない返答をしたといい、結果的に6シーズンの製作で合意し、1シーズンの話数を減らすことでシーズンの間隔を空け、どう展開させるか考える時間を増やしたのだという。「そしてシーズン4は脚本家のストライキによって打ち切られたが、他は全て比較的計画通りに進んだ。僕たちがしていたことは全てがうまくいったとは言えないが、計画があって、その計画は実行したよ」と締めくくった。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『LOST』(c)ABC Studios.