映画版が撮影された高校を舞台にリアルな学園生活を描いた『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』

2006年にディズニー・チャンネルで放映され、瞬く間に社会現象を巻き起こした伝説のTV映画『ハイスクール・ミュージカル』。ティーンを中心に大旋風を巻き起こした同作は、シリーズ3作目まで製作され、さらなる続編の製作がいまかいまかと待ち望まれていたのだが、ディズニープラス(Disney+)オリジナル作品として新たに登場した『ハイスクール・ミュージカル』は周囲の想像を覆す斬新な設定とストーリーで人々を驚かせた。ここでは、復活を遂げた『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』の魅力を紹介しよう!

『ハイスクール・ミュージカル』とは?

そもそも『ハイスクール・ミュージカル』(HSM)とは、2006年にディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービーとして製作されたミュージカル映画。バスケ少年トロイ・ボルトンと数学が得意な天才少女の転校生ガブリエラ・モンテスが、周囲からの反対や不安をはねのけ、ミュージカルという新しいことに挑戦していく姿を描いた。1億6000万人以上が視聴したと言われ、エミー賞も2部門受賞。サウンドトラックもビルボード1位を記録した。

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まさに社会現象とでも言うべき一大旋風を巻き起こした『ハイスクール・ミュージカル』は、2007年に続編となる『ハイスクール・ミュージカル2』が、2008年にはそれまでのTV映画という枠組みから飛び出し、劇場版として『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』が公開され、ここ日本でも大きな人気を博した。主演のザック・エフロン、ヴァネッサ・ハジェンズ、アシュレイ・ティスデイルといったスターたちは大ブレイクを果たし、映画界から音楽界にいたるまで、幅広い活躍を見せている。

そんな『ハイスクール・ミュージカル』は、米ユタ州に実在するイースト高校で撮影が行われ、映画の中で印象を残したカフェテリアやシャーペイのロッカーなどはそのまま残されている。イースト高校が実在しているからこそ、あの伝説的な映画の舞台となった高校に通っている生徒たちは、どんな学園生活を送っているのかも気になるものだ。そういった経緯を活かして製作されたのが、『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』なのである。

まさにリアル版『ハイスクール・ミュージカル』

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『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』は、オリジナルの映画版の続編やリメイクといったものではなく、言うなればオリジナルを"引用"した作品である。かつて『ハイスクール・ミュージカル』が撮影されたイースト高校が舞台となり、新任の演劇部の顧問ジェン先生が、同校でいまだかつて『ハイスクール・ミュージカル』が上演されていない事実から、生徒たちによる「ハイスクール・ミュージカル」を上演しようとするストーリー。だから『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』というタイトルなのだ。

主人公のリッキーとニニは恋人関係にあったものの、あることがきっかけで仲違いしてしまい、そこへ水球部の人気者EJが現れたことから、さらにギクシャクした関係へと発展してしまう。その最中にオーディションが開催され、リッキーとEJはトロイ役を争い、ガブリエラ役に決定したニニの相手役に相応しいのは自分であると証明しようとする。

リッキー、ニニ、EJのほかにも、イースト高校に転校してきた才能豊かなジーナ、リッキーの親友ビッグ・レッド、ニニの親友コートニー、ジェン先生をサポートするHSMオタクのカルロスなど、個性豊かで様々なバックグラウンドを持ったキャラクターたちが生き生きとした存在感を放っており、非常に面白い雰囲気を醸し出す。

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リッキー(ジョシュア・バセット)、EJ(マット・コーネット)

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ジーナ(ソフィア・ワイリー)

本作は、主にミュージカル上演までのリハーサルを通して築かれていく人間関係をメインに映し出しており、オリジナル版とは異なる夢物語だけではないリアルな学園生活の描写が印象深い。どこか『ハイスクール・ミュージカル』を自虐的に捉えている部分もあり、ファンとしては少し身構えてしまうのもあるのだが、オリジナル版でおなじみの名曲をクールにアレンジした楽曲とドラマ版オリジナルの楽曲を織り交ぜて繰り広げられるミュージカルパートは必聴であり必見。

さらに、映画版でアシュレイ・ティスデイルが演じたシャーペイ役を男子生徒に演じさせるといったところなど、これまでの概念を覆すような斬新なアイデアが盛りだくさんなのも魅力となっている。まさに全く新しい『ハイスクール・ミュージカル』が誕生したというわけだ。

これからのハリウッドを担うであろう若手キャストたち

オリジナル版ではザック・エフロンなどの人気スターを輩出した『ハイスクール・ミュージカル』だが、今回のドラマ版でも注目すべきキャストの好演が光っている。

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ニニ(オリヴィア・ロドリゴ)

物語の中心となるニニ役には、ディズニー・チャンネルのTVシリーズ『やりすぎ配信!ビザードバーク』のオリヴィア・ロドリゴが抜擢され、個性的な歌声で素晴らしいパフォーマンスを披露する。またニニのライバル的存在であるジーナ役には『アンディ・マック』のソフィア・ワイリーが起用されており、ディズニー・チャンネルでおなじみのキャストたちが出演。リッキー役のジョシュア・バセットやEJ役のマット・コーネットなど、比較的キャリアの浅い俳優陣で固められているため、そういったところもリアリティを醸し出している要因と言えそうだ。彼らが、どこにでもいるような普通の高校生たちを演じているため、どこか歌声やパフォーマンスにも"普通っぽさ"が漂っているのだ。現実味のあるそれらのパフォーマンスもまた、より感情移入を誘う理由であろう。

そして、『ハイスクール・ミュージカル』ファンであれば絶対に見逃せないカメオ出演もある。オリジナル版でヒップホップダンスが得意なマーサ・コックスを演じたケイシー・ストローとシャーペイの双子の弟ライアン・エヴァンスを演じたルーカス・グラビールが、あるエピソードに登場。ルーカスにいたっては、久しぶりの歌声も聞くことができるので見逃し厳禁だ。

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筆者は個人的に『ハイスクール・ミュージカル』の大ファンである。シリーズ3作品すべてのセリフを暗記しているほどのガチファンだ。正直なところ、ドラマ版を見始めた頃は受け入れるのに時間がかかった...。そこには新キャストであることへの嫉妬や全く異なる作品であるが故に、古参ファンならではの批判意識が働いていたのかもしれない。

しかし、エピソードを重ねるごとに、オリジナルで印象的だったセリフの引用や『ハイスクール・ミュージカル』を愛するキャラクターたちの熱心な姿が大いに伝わってきて、大きく心を動かされてしまった。シーズン・フィナーレを迎える頃には大ファンになってしまい、今後の展開が楽しみで仕方ない。

すでにシーズン2の製作も決定しており、彼らの「第二幕」は一体どんな形になるのか気になるところ。これからも『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』に注目していきたい!

オリジナル版『ハイスクール・ミュージカル』、そして新シリーズ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』はディズニープラス(Disney+)で配信中。

(文/zash)

Photo:『ハイスクール・ミュージカル』『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』(c) 2020 Disney