米NBCにて1999年から7シーズンにわたって放送され、高い人気と評価を得た政治ドラマ『ザ・ホワイトハウス』。放送終了から10年以上が経った今年、本国アメリカの大統領選に合わせて特別版が製作され、10月に米HBO Maxにて配信された。その特別編に再集結したオリジナルキャストの一人が、涙を流すほど喜んだという今回のリユニオンについて語っている。
この特別版は、クリエイターのアーロン・ソーキンがシーズン3第15話「一触即発」を舞台劇にしたバージョンで、ジェド・バートレット大統領が再戦を目指すキャンペーンを描く内容となり、ある小さな町における選挙の勝敗が再選を左右するというストーリーだ。そんな舞台劇は、全米でお披露目された際、10年以上前に放送されたドラマ版よりもパワフルとの声も上がるほど素晴らしい出来になった。
今回のリユニオンはファンにとって嬉しいものだったことは間違いないが、誰よりも喜んだのはバートレット大統領役のマーティン・シーンのようだ。米Entertainment Weeklyの取材に応じたマーティンは、「喜びのあまり泣いてしまった」と、作品に対するあふれる想いを口にしている。
Martin Sheen explains why he "wept with joy" at #TheWestWing reunion. https://t.co/Am6Fvd1sEV
— Entertainment Weekly (@EW) December 2, 2020
マーティンによれば、2006年の番組終了後もキャスト同士で連絡を取り合うことはあったが、新型コロナウイルス(COVID-19)が大流行した今年は直接会えなかった。そのため、感染予防策が講じられた中ではあったものの、久しぶりに一堂に会することができたのは、何よりも個人的に嬉しかったそう。「ポッドキャストなどで再会して話すことはあったが、一緒に演じることは15年近くなかった。だからこそ、今回はとても特別なものになったよ。もともと、エピソードの朗読とされていたから、我われは何も覚える必要はなく、台本を持ってきてそれを口に出して読むだけで良かったんだ。でも、誰もが全員分の台詞を頭に入れた状態で集まった。みんな、それがどれだけアーロン・ソーキンにとって大切なのかが分かっていたからね。彼は、作曲家が作曲するように脚本を執筆する。それぞれの役者は特定の音符を与えられ、自分の音が鳴らない場面も知っておく必要がある。ここには素晴らしい演奏家たちが集まっていて、それぞれが自分の"楽器"を持ち寄ってオーケストラとなり、一緒だと本当に素晴らしいんだ」
続けてマーティンは、「(収録が)終わった後、私は喜びのあまり泣いてしまった」と当時の心境を吐露。撮影が行われた劇場は、まるで犯罪現場のように入場を禁止する黄色のテープが貼られており、劇場内での様々な行動も制限され、参加者は3日間で計6回の検査を受けることになった。制作にはのべ84人が関わったが、徹底した対策により、誰一人感染者を出すことなくやり遂げられたという。
特殊なステージでの再演となったわけだが、「まったくとまどうことはなかった」とマーティンは話している。「(音楽担当の)スナッフィ・ウォルデンは弦楽器だけで番組テーマを演奏していた。トランペットもパーカッションもない。とても不思議だった。とてもやさしい音色で、まるで思い出のようだったよ。セットは最小限で、デスク、椅子、ドア、階段、照明だけ。でも、対話とキャラクター間の相互作用があった。だからうまくいったのだろう」
ちなみに、マーティンにとってシリーズ全155話の中で一番のお気に入りはシーズン1第10話「聖なる日」だそう。「ワシントンの路上で死んでいるところを発見される、朝鮮戦争を戦った退役軍人のホームレスの話なんだ。その男が着ていたコートにリチャード・シフ(演じるトビー)の名刺が入っていたため、彼が呼ばれ、(トビーはその男を放っておくことができず)葬儀にも行くことになった。それはクリスマスのことで、ホワイトハウスには子どもたちがやってきて『リトル・ドラマー・ボーイ』を歌っている。そして、アーリントン国立墓地では私が手配した(トビーが大統領の名義で勝手に葬儀を手配したため)軍葬が行われたんだ」
ちなみに、マーティン演じるバートレット大統領は「アメリカ人が考える理想の大統領」で1位になったこともある人気キャラクターだが、彼自身は政界に興味はないそう。「いろんな人から政界入りするよう言われるけど、みんなに言いたいのは、現実と幻想を混同してはいけないということだ。私は俳優で、大統領を演じただけなんだからね」と話している。(海外ドラマNAVI)