近年で昔ながらのシットコムが少なくなった理由とは?

ここ近年のハリウッドではシンプルな昔ながらのシットコムが激減し、クロスジャンルなシリーズが増えているが、それはなぜなのだろうか? 米Varietyがその理由を分析しているので紹介したい。

『フレンズ』や『フルハウス』『となりのサインフェルド』などから、近年では『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』『モダン・ファミリー』まで4台ぐらいのカメラで製作されるシチュエーション・コメディ。しかし、1980~90年代に人気を博したシットコムの時代は過ぎ去り、配信サービスの普及によりドラマの作品数が倍増。一昔前と比べて視聴者は賢くなり、作品に求めるクオリティや期待する要素が複雑化してきている。よって、作り手は混雑し合う配信サービスで作品を際立たせるために、新しいジャンルを打ち立てる必要に迫られているのだという。

コメディジャンルでも単に笑えるだけでなく、ダークなトーンを加えたり、重いテーマをブレンドすることで、他の作品と差別化を図る傾向が強くなっているようだ。YouTubeからNetflixへプラットフォームが移った『コブラ会』で共同クリエイターを務めるジョシュ・ヒールドは、ジャンルをブレンドすることで、全体的にニュアンスのあるストーリーテリングが実現できたと語っている。

また、第78回ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされた米HBO Maxの『フライト・アテンダント』もジャンルはコメディに括られるが、主人公キャシーは過去のトラウマがあり、深刻なアルコール依存症の問題を抱えているという設定だ。シリーズでクリエイターを務めるスティーヴ・ヨーキーにとっては、生死をかけた緊張感のあるダーク・コメディを書くことが大切なのだという。コメディだからこそ随所でダークなトーンを投入することが可能になり、その緊張感により、視聴者を引き付けるリズムをシリーズで作ろうとしていると述べている。

また、近年のハリウッドでは多様性が重視されているが、コメディ番組を新鮮かつモダンに保つ他の需要な要素が、異なる文化を背景に持つ人々やLGBTQコミュニティなどと接点を持たせること。Netflixのアンサンブル・コメディドラマ『マスター・オブ・ゼロ』は、ニューヨークが中心となったシーズン1&2とは打って変わり、シーズン3では自然に囲まれた田舎を舞台に、壊れゆく黒人レズビアンカップルの結婚生活がユーモアを交えながらも、ゆったりとしたペースで描かれた。

視聴者が数多くの番組を選択できる状況で、視聴者の好みが洗練されてきたからこそ、製作側も彼らのニーズに応える必要に迫られており、今後はコメディ番組だけでなく様々なジャンルの作品が進化を遂げていきそうだ。(海外ドラマNAVI)

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『フレンズ』『ビッグバン★セオリー ~ギークなボクらの恋愛法則』©Warner Bros. Entertainment Inc./『フライト・アテンダント』©2021 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license. /Netflix『マスター・オブ・ゼロ』