大ヒットシリーズの最新作で、これまでの記録を次々と塗り替えている『トイ・ストーリー5』が公開中だ。今回の主人公は、想像力豊かで内気な少女・ボニーの成長を、そばで見守ってきたカウガール人形のジェシー。しかし、タブレット〈リリーパッド〉の登場で日常は大きく変化。ほかの子どもと同じように画面に夢中になったボニーから笑顔が失われていく…その一大事にジェシーは、ウッディに助けを求める。再びタッグを組んだウッディ、バズとともに、ジェシーはボニーの心を取り戻せるのか? 時が流れても、おもちゃにできること――冒険の果てに辿り着く究極の答えとは?
原点回帰した傑作と称賛される5作目を手掛けたケナ・ハリス(共同監督)、リンジー・コリンズ(製作)を直撃! この最新作に込めた思いや、シリーズを通して意識していることなどを語ってもらった。
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『トイ・ストーリー5』史上最大のライバル“リリーパッド”デザインのこだわりとは
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“小さな親”のおもちゃ中心だった当初から変化した理由

――30年ほど続く『トイ・ストーリー』シリーズは親子2世代、3世代にわたって愛されていますし、大人のファンも非常に多い作品ですよね。特にこの5作目は、ジェシーの「もう一度捨てられたくない」という発言のシーンが、子どもだけではなく大人にこそ響くのではないかと思いました。この30年間の積み重ねや、数世代にわたって愛され、大人も観ているシリーズであることを、制作の中でどのくらい意識されていたのでしょう?
コリンズ:私たちは毎回、制作中に何度も社内試写を行っています。今回は全部で8回行いました。その度にスタッフや監督などのピクサーのメンバーから率直なフィードバックをもらい、作品作りに反映しています。もちろん試写に参加するのは大人ですが、「大人向けに作ろう」という意識ではなく、一人の観客としてどう感じたかという率直な感想を集めているんです。
実際には、子どもの方が私たちの思っている以上に作品を理解してくれることも多いんです。大人からすると説明が必要かと思うようなことでも、子どもは自然に受け止めてくれることがあります。だから私たちは、「子ども向け」「大人向け」とターゲットを分けて考えるのではなく、誰も排除しない映画を作ろうという姿勢でずっとやってきました。
今回も約3年半かけて制作しましたが、その間もピクサーの仲間たちと何度も作品を見直し、フィードバックを重ねながら、これまで培ってきた価値観に沿って映画を作ってきたと言えると思います。

――『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ監督と『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリー監督はかつて、シリーズはこれで終わりで、もう続きはないと話していましたが、その後も新しい作品が作られています。改めて『トイ・ストーリー5』を作ろうと思ったきっかけや、まだ描くべきものがあると感じた理由について教えてください。
ハリス:まず、アンドリュー・スタントンが『トイ・ストーリー』シリーズの脚本を長年手掛けてきたことは、皆さんご存じだと思います。当時、『トイ・ストーリー4』の後に続編があり得るのかということについて、彼自身が考え始めていました。その時点で、実際に制作することが決まっていたわけではありませんが、彼は「これまでの『トイ・ストーリー』でまだ触れていないテーマがある」と考えたんです。それが、この10年から15年ほどで子どもたちの生活に深く入り込んできた、デジタルデバイスの存在でした。
私たちは、おもちゃの視点から物語を描いてきましたが、「子どもたちの周りに突然現れたデジタルデバイスを、おもちゃたちはどう見ているのだろう」というテーマには、まだ一度も向き合っていませんでした。それは非常に面白いテーマになるのではないか、と考えたんです。そこには豊かな物語の可能性がありました。
さらに今回は、これまでのようにウッディやバズを中心に据えるのではなく、ジェシーが物語を引っ張っていく作品にすることで、新しい可能性が見えてきました。
その新鮮さに、私たち自身が強く魅力を感じたことが、この作品を作る大きな理由になりました。

――先程ジェシーが主人公になったというお話がありましたが、彼女を主人公にしようというアイデアは、いつ頃、どのように生まれたのでしょう? また、ジェシー役のジョーン・キューザックはこの作品に参加するまでしばらく俳優業から離れ、普通の生活を楽しんでいたそうです。そんな彼女に再び戻ってきてもらうのは大変でしたか?
コリンズ:もともとアンドリューは、『トイ・ストーリー4』の中で、ウッディが保安官バッジをジェシーへ託すシーンを、どうしても入れたいと言っていました。もちろん、その時点で続編を作ることが決まっていたわけではありません。ただ、「もし将来続編を作ることがあるなら、その物語はここから広がっていくはずだ」という思いが、彼の中にはあったんです。つまり、続編を約束するためではなく、将来に繋がる“種”を蒔いていたということですね。
その理由の一つは、『トイ・ストーリー』ファンの多くが、ジェシーの物語をもっと見たがっていると感じていたからです。ジェシーはとてもエネルギッシュで大胆なキャラクターですが、一方でとても繊細で、自信を失うこともあります。さらに、捨てられたという深い心の傷を抱えたキャラクターでもあります。
シリーズ全体を振り返ってみても、彼女はほかのキャラクター以上に豊かなバックストーリーを持っています。だからこそ、その人生をもっと深く掘り下げる価値があると私たちは以前から考えていましたし、世界中の観客もそれを望んでくれていると感じていました。
そのため、5作目を企画し始めた段階から、主人公はジェシーにしようという考えがありました。
ハリス:ジョーン・キューザックは誰よりもジェシーというキャラクターを愛している人なんです。今回、ジェシーは主人公ですが、それと同時に、私たちは彼女自身を“癒やしたい”という思いも持っていました。
『トイ・ストーリー2』で描かれた彼女のつらい過去は、世界中の多くの人の心を動かしました。だからこそ、ジェシーには彼女にふさわしい結末を用意したかったんです。彼女自身が心から納得できるゴールに辿り着き、本当の意味で癒やされる物語を描きたいと考えていました。
その話をジョーンにしたところ、彼女は本当に喜んでくれて、「ぜひやりたい」と言ってくれたんです。

――今回は、おなじみのおもちゃだけでなく、ボニーの新しい友達、リリーパッドのようなテクノロジーを搭載した存在も登場します。子どもたちにとっては、友達になれる存在であれば相手は何でもいいのでしょうか。それとも、やはり実際に触れ合える、人と人とのコミュニケーションのような、身体性を伴った関係が大切なのでしょうか。オンライン上の繋がりも含めて、「友達」とはどういう存在なのか。この作品ではその問いも描かれているように感じました。このテーマについての考えを教えてください。
コリンズ:まさにおっしゃる通りで、「友情とは何か」「友情にはどんな形があるのか」ということは、今回の物語を作る上で非常に大きなテーマになりました。特にボニーに関するストーリーでは、そのことを強く意識しています。
振り返ってみると、『トイ・ストーリー』シリーズでは、子どもたちが実際にどのようなことを考え、どんな経験をしているのかを、ここまで深く描いたことはありませんでした。これまでの作品では、おもちゃたち自身の問題や冒険が物語の中心でしたから。子どもたちの心の中で何が起きているのかは、おもちゃたちには基本的に分からない、という前提だったんです。
しかし今回は、その部分に初めて踏み込んでいます。ボニーが友達を求め、人と繋がりたいと思いながらも、うまくいかない葛藤を抱えていることが描かれます。
その中で、「オンラインの繋がりでも十分なのか」「実際に会って、一緒に遊び、触れ合える関係が必要なのか」という問いが、脚本を書き直す度に何度も浮かび上がってきました。
結果として、それが作品全体を貫くテーマになっていったんです。
ハリス:私たちは最初から、画面ばかり見ている今の子どもたちを批判したり、ジャッジしたりするつもりはまったくありませんでした。現代には、本当に様々な形の繋がりがあります。
『トイ・ストーリー』シリーズもこれまで、「人との繋がりにはいろいろな形がある」ことを描いてきた作品だと思っています。
相手が動物でもいいかもしれない。
親戚でもいいかもしれない。
画面越しの相手でもいいかもしれない。
もちろん、実際の友達でもいい。
大切なのは、「今の子どもたちが実際にどういう世界で生きているのか」を、できる限り誠実に、リアルに描くことでした。
そしてボニーは、少し特別な子どもです。彼女はとても豊かな内面世界を持っています。
ジェシーは、そのことを誰よりも理解している存在です。だからこそジェシーは、ボニーが本当に心を通わせられる友達を見つけてほしいと願っています。
遊びを通して友情を育み、人との繋がりを見つけてほしい。その思いが、ジェシーの行動の原動力になっているのです。

――今回印象的だったことの一つは、ウッディにも年齢を感じさせる変化が描かれていたことです。少し体型が変わったりと見た目にも年月を感じさせるような描写があり、「おもちゃも年を重ねる」という発想がとても興味深かったです。また、このシリーズではおもちゃの持ち主がアンディからボニーへ変わったり、子どもたちを取り巻く環境がデジタルデバイスの登場によって変化したりと、時代の変化そのものが物語に取り入れられてきました。こうした「変化」を作品の中で描き続けることについては、どのように考えていらっしゃるのでしょう?
ハリス:フランチャイズ作品であっても5作目まで作られることは多くありません。つまり、1作目から月日が経つとともに、皆さんも成長してきたわけです。当初からシリーズに関わってきたアンドリュー・スタントンやピート・ドクターがこのシリーズで一貫して描いてきたことは、どうやって私たちは大人になっていくのか?ということ。遊ぶのが好きだった子どもから、誰かの世話をするような大人にどうなっていくのか。この世界のおもちゃたちは小さな親みたいなところがあって、子どもの面倒を自分たちが見ているんだと考えているんです。
観客も成長し、1作目を子どもの頃に観たミレニアル世代が、親になって自分の子どもと5作目を観ていたりします。彼らは子ども時代とは作品の受け取り方も変化するだろうから、そうした彼らの成長もどこかに見えるような作品になっているよう、意識しています。
そのように時代に合わせて変化し続けるからこそ、『トイ・ストーリー』シリーズは色褪せないんじゃないかと思います。その中で、ウッディの頭に変化が訪れたみたいに、おもちゃも変わり続けるんです(笑) ジェシーの場合は感情面で成長していますよね。そうした心身双方の成長があるわけです。
『トイ・ストーリー5』(配給表記:ウォルト・ディズニー・ジャパン)は大ヒット公開中。(海外ドラマNAVI)









