TVドラマ界のアカデミー賞と謳われるエミー賞で歴代最多となる作品賞含む18冠を受賞するなど世界中の主要アワードを軒並み制覇し、日本でも大きな話題となった米FX『SHOGUN 将軍』。
今後のシーズンは、日本が撮影インフラとインセンティブ(助成金制度)の課題を解決すれば、日本国内で撮影できる可能性があると、同作プロデューサーの宮川絵里子(エリコ・ミヤガワ)が10月29日(水)に東京国際映画祭で行われた業界パネルディスカッション「MPAセミナー」で率直に語った。
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当初から日本での撮影を望んでいたが…
米Varietyから今後のシーズンを日本で撮影することについて尋ねられた宮川は「私の一存では決められませんが、個人的には日本で撮れることを望んでいます。今までもアイデアを提案していますし、これからもそうします」と語り、日本での撮影に強い意欲を示した。シーズン3の内容や脚本はまだ決まっていないものの、「実現を心から望んでいます」と話した。
『将軍』は当初から日本での撮影を望んでいたが、実現しなかったという。「本当に日本で撮りたかったのですが、ちょうどコロナ禍の真っただ中でした。クリエイターのジャスティン・マークスとレイチェル・コンドウがロケハンで来日できず、残念ながら諦めざるを得なかったのです」と宮川は説明した。
カナダでの撮影決定については「かなり批判も受けました。最終的な決定はスタジオ側が下すので、私からは何も言えない立場でした」と振り返る。バンクーバーが選ばれた理由については「撮影のためのインフラが整っており、宿泊施設の選択肢も多く、大規模スタジオまでのアクセスも良かった」と明かした。
今後、日本で『将軍』を撮影するには、いくつかの課題が残っているという。まず、広大なスタジオスペースや多様なロケーションといった「空間的な制約」だ。宮川は「『将軍』のような作品にはとにかく広さが必要」と指摘する。「大規模スタジオや漁村・城壁を再現できる多様なロケーションが求められます。日本の映画スタジオは総じて小規模で、最大級の東宝スタジオでさえハリウッドの基準からするとまだ非常に小さい」とのこと。
また、助成金制度の運用面での改善も不可欠だという。宮川とともに登壇したFilm Solutions代表の楠純子は、日本政府が導入した映像制作支援制度に「実務上の問題が多い」と指摘した。「助成金の採択時期が不透明で、スタッフを雇用し予算を組まないと申請できないのに、不採択になると全てが無駄になります。“採択されませんでした”となると、結果的に制作をタイなどに移すか、中止せざるを得ない場合もある」と語った。
こうした制度面・インフラ面の課題を克服できれば、『将軍』が日本に戻ってくる可能性は十分にあると宮川は強調した。「年々、ハリウッド側も日本人スタッフと協働することに積極的になっています。『将軍』のような作品が、次こそ日本で撮影される日が来ることを願っています」と語った。
『SHOGUN 将軍』プロデューサーの宮川絵里子氏。
『SHOGUN 将軍』はDisney+(ディズニープラス)の「スター」にて独占配信中。(海外ドラマNAVI)



