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Apple TV+『ロスト・バス』ポール・グリーングラス監督インタビュー

2025年9月30日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

ロスト・バス

2018年にカリフォルニア州の小さな町、パラダイスで実際に起きた出来事に着想を得たApple Original Films『ロスト・バス』が、Apple TV+にて10月3日(金)より配信される。全米史上最悪級の山火事を舞台に、道に迷ったスクールバスを運転するドライバーのケヴィン(『TRUE DETECTIVE』のマシュー・マコノヒー)と同乗する小学校教師のメアリー(『アグリー・ベティ』のアメリカ・フェレーラ)が、22人の子どもたちを救おうと奮闘する姿を描く。

監督・脚本を担当したのは、『ジェイソン・ボーン』シリーズや『ユナイテッド93』で知られるポール・グリーングラス。プロデューサーとしてジェイソン・ブラム(『ハロウィン』)とジェイミー・リー・カーティス(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)が名を連ねる。

『ロスト・バス』リリースに合わせて、キャスト・スタッフに話を聞いた全2回のインタビューより、2回目の今回登場するのはポール・グリーングラス監督。『ユナイテッド93』でアカデミー賞監督賞にノミネートされた、ドキュメンタリー出身の彼に、CGIを使うことなく迫力たっぷりの山火事シーンを描き出した方法や、本作に込めた思いを語ってもらった。

ロスト・バス

ロスト・バス
Apple TV+『ロスト・バス』マシュー・マコノヒー&ジェイミー・リー・カーティス インタビュー

2018年にカリフォルニア州の小さな町、パラダイスで実際に起 …

「マジックアワー」を活用し、不思議な光の状態を再現

――本作の火事の描写に感心しましたが、CGIではないんですね。驚くほど迫力がありましたが、どんな方法を採ったのですか?

ロスト・バス

実はそれには面白い話があって、最初は別の方法を考えていたんですが、まったく違うやり方に変更したんです。当初は、バーチャルセットでバスを囲って撮影する方法を考えていました。ラスベガスのSphere(球体のコンサート会場)でU2のコンサートを観て、壁を覆うスクリーンに映し出された砂漠の映像に感銘を受けたんです。本当に砂漠にいるのかと錯覚するほどでした。そこで、時間と費用をかけてその縮小版を作れるか試してみたんですが、結局このやり方に私が尻込みしてしまったんです。そういうバーチャルな手法は、映画制作者としての自分に合わないと感じました。私は現実の世界で撮影したかったんです。

最終的に、ニューメキシコ州サンタフェにある廃校のキャンパスを使うことにしました。道路が何本も走っている広大な敷地でリアルな撮影を行うことにし、セットを作り上げて本物の車両を用意し、ガス管を走らせました。当然ですが、森林火災を引き起こす恐れがあるので、燃焼した破片を空気中に放出するわけにはいきません。なので、安全なガスによる炎を使うことにしたのです。

実際には、一連のガス燃焼に視覚効果を組み合わせた映像を使いました。そして視覚効果による補強には、様々な場所で撮影した特定の炎の要素を使い、リアルさを感じさせるよう工夫しました。ただ、実際の炎の映像と組み合わせていくのは、本当に手間のかかる作業でした。結果としてはかなりうまくいったと思います。できる限りリアルに炎を映像化することを目指したつもりですが、最終的な判断はみなさんにお任せします。とにかくそれが私たちの目標でした。

あと、もう一つお伝えしておきたいのですが、大火災のリアリティを伝えるには光が重要です。あのような大規模な火災が発生した時は、煙がすぐに上昇して太陽を隠すため、光が遮断されて異様な雰囲気を生み出すのです。皆既日食のような感じですね。そういう現象が真っ昼間に発生したわけですから、それを再現するのが何よりも大変でした。明るくはないのに見ることはできる、という不思議な光の状態をどうやって生み出すか。その状態に最も近い現象は、日が落ちて夜が訪れる直前の、私たちの業界で「マジックアワー」と呼ばれる時間帯に起こります。場所や天候条件にもよりますが、およそ30分〜40分くらいの間続く現象です。

ですから映画の撮影時には、作品の始めと終わりに使われている日中の場面の撮影とは別に、一日一時間という特別な撮影時間を設けました。映画の大半がその「マジックアワー」の一時間内に撮影されています。一日かけてリハーサルをして、車やガスの配管、炎上の準備を整え、安全面の懸念事項への対策を講じました。そしてマシューやアメリカ、子どもたちと一緒にシーンのリハーサルをして、日食時の光の様子に近いリアルな状況で車を実際に動かしました。それがあの不気味な現実味を感じさせる鍵となったと思います。

ロスト・バス

実際の体験者×俳優で生まれる相乗効果

――本作には、あの日実際に火事に直面した人たちも何人か本人役で出演されていますね。そのようにした理由と、俳優と本人が混ざり合うことによってどのような形で影響を与え合ったのかをお話しいただけますか?

これは私の作品で何度も使ってきた手法です。もちろん私が初めて行ったわけではありませんが、これまでも『ブラディ・サンデー』や『ユナイテッド93』『キャプテン・フィリップス』といった作品で採用してきました。今回の作品で特に重要だったのは、消火の過程をできる限り正確に描くということでした。そこで、実際の火事における消防活動の責任者だったジョン・メッシーナに会いました。彼は実際にあの日、パラダイスでの消火活動を指揮していたんです。劇中では、ユル・ヴァスケス演じる消防隊の責任者が彼に当たる人物として描かれており、ジョン自身は副隊長を演じています。このことは私たちの間でちょっとした笑いのネタになっています。作品の中で私が彼を降格させてしまった、というわけです。ジョンは当日出動していた消防隊仲間をたくさん連れてきてくれました。ですから劇中の消防隊メンバーは、ユルとケイト(・ウォートン)という二人の俳優以外はほとんど、当日に現場にいた消防士の人たちです。サンタフェの消防署からも数名参加してもらいましたが、大半はパラダイスの消防士たちです。

そのことが、作品に色濃いリアリティを与えてくれたと思います。彼らが混ざった時の波及効果については、以前の作品と同じようにとても興味深い効果がありました。何が起きるかというと、この作品に関しては、まず本物のプロフェッショナルたちに囲まれることで、俳優たちは自分の演技に自信を持てるようになります。現場で何をどのように話し、どんな合図が使われるのかということが分かりますし、自分の理解だけで消防士のフリをしているわけではないと思えるようになります。それはとても大きな助けになります。一方プロの消防士たちは、実際に彼らが体験したことを映画の中で演じる上で演技を教えてくれる俳優に囲まれていることに勇気づけられます。その融合がうまくいくと、俳優は演技するのではなく実際の人物になりきることができるし、一般の人たちは演技ができるようになるので、全体が一つにまとまるのです。それが作品に真実味を与え、映画の一部として物語を動かす重要な要素となっていきます。

ロスト・バス

――ドラマとサスペンス、さらにはアクションを組み合わせた作品を以前にも制作されているので、この物語に魅力をお感じになったのが分かります。今回の物語で特に関心を持たれたのはどういう点でしたか? また脚本上の工夫以外に、どのようにしてドラマとサスペンス、アクションという異なる要素のバランスを保ち、一つのジャンルに偏りすぎないようにしたのでしょうか?

それは料理に似ていると思います。正しい材料を正しく組み合わせれば、一つの作品が出来上がります。まずは伝えたい物語があるところからすべてが始まります。思い返すと、結局制作に至らなかった映画について長い間思い悩むこともしばしばありました。制作に至る映画というのは、本能的に惹かれる作品なのです。

プロデューサーのジェイミー・リー・カーティスとジェイソン・ブラムからこの映画の企画を見せられた時、私はすぐにやりたい、やり方も分かっている、と思いました。もちろんパラダイスで起きた山火事のことはよく覚えていましたし、森林火災を描く映画を作るのは現代の世界で絶対に必要なことだと感じました。近年、北米や南米では大規模な火災が相次いで発生しています。欧州や中東にも広がっており、今や全世界が直面する深刻な危機の一つとなっています。人々は「世界は燃えている」と感じており、恐ろしい現実として共有されています。

私がこの映画で気に入っているのは、学校教師やバスの運転手、子どもたち、そして火事に立ち向かう消防士たちという、身近で人間味あふれる存在を描いている点です。それでいながら、普遍的なメッセージを伝えているのです。その本質を描くため、それぞれがどう機能するかを理解し、バスという視点から見た危険要素を認識し、それを極力シンプルに抽出していきました。その中に実際にこの出来事を経験した方たちを加えることで、真実味が生まれるのです。

ロスト・バス

俳優のキャスティングにおいては、マシュー(・マコノヒー)とアメリカ(・フェレーラ)を起用できたのが本当に幸運でした。彼らは優れた俳優であると同時に、私がこの作品で求めていた「現実の空気感」を備えた人たちだからです。そうやって、映画という一つの体験を創り上げていくのです。これがあなたの質問に対する答えになると思います。それは、交響曲のような一つの音楽作品を創り上げていくことにも似ています。その始まりは冒頭で描かれる、普段のようにバスを運転する運転手の姿です。彼は気づいていませんが、1時間後には見知らぬ人たちと想像を絶する体験をともにしながら、出口に向かって突き進むことになるのです。

そういった物語の様々な要素を結び付け、一つの音楽、映画という音楽を創り上げていくことこそが重要なのではないでしょうか。全体を見渡すことができれば、その中に入り込み、そこから抜け出すという感情的な繋がりを持つことができるのです。

ジャーナリスト出身者だからこその映画制作

――あなたはジャーナストとしての経歴をお持ちですが、その経験が山火事を現実的に描き出すアプローチに影響を与えたと思いますか?

ロスト・バス

影響はあったと思います。私は記事を執筆するジャーナリストとしての経験はありませんが、英国でドキュメンタリー番組の制作に携わっていました。大学卒業後、そこからキャリアをスタートさせたのです。ジャーナリズムの最前線にいながら、ドキュメンタリー番組を制作するという仕事でした。そのような形でドキュメンタリーを制作するには、世界各地に足を運び、様々な経験を積む必要があります。そのため、20代の頃はひたすら困難な場所に訪れて撮影を重ねていました。

そうして世界で起きていることに関わった経験は絶対に忘れません。私が当時携わった番組のタイトルは『World in Action(原題)』というのですが、そのタイトル通り世界中の出来事を見せてもらっているように感じていました。紛争地域などの問題が起きている場所に足を運ぶことは、紛争下の世界がどのようなものかを直接目にし、学ぶ体験になります。それは優れたジャーナリストやドキュメンタリー制作者にとって欠かせない経験だと思います。そうした自分の基盤となる体験は、決して忘れることはありません。

また、そういった世界をカメラで記録するということ、つまり自分が見ている現実の瞬間を観察して捉えるという体験も、決して忘れることはありません。ですが、私は十代の頃から映画を作ることを夢見ていたので、ドキュメンタリー制作の道を歩みながら、20代の終わりから30代の始め頃には映画を作ってみたいという思いが高まり、やがてその世界に進んでいきました。

しかし、私はそこで矛盾に直面することになります。20代の頃は自分の目の前で起きている現実を題材としてきました。ところが、低予算のドラマや映画作りから始めた映画制作の世界では、現実を観察するのではなく、むしろ創り出すことを求められたのです。どうすればその二つの感覚の折り合いを自分の中でつけられるのか、これは私にとって大きな課題でした。二つの感覚を融合させることには非常に苦労しましたが、およそ10年近くの歳月をかけて、ようやく自分なりのスタイルを見つけることができました。自分のルーツに正直でありながら、思い描いたような映画を制作できるようになったのです。

ですから先程の質問にお答えすると、そういった直感、つまり現実がどういうものかを感じ取り、それがどう見え、それをどう捉えるべきかというジャーナリストやドキュメンタリー制作者的な直感は、私の映画制作人生においてずっと持ち続けていることだと思います。そして今回の作品においては、それがまさに自分が本当にやりたかったことの中心にありました。あのような出来事の渦中にいるとはどんなことなのか、という現実を創造するわけです。その理由はシンプルで、一つにはこれは当時あの火事に巻き込まれた人々を描いた物語であるため、できる限りリアルに描くことは私の使命でもありました。

ロスト・バス

また、映画的な次元においても、強く感じたことがありました。ジェイソンとジェイミーが最初にこのプロジェクトを説明してくれた時に、うまくいけば映画的な演出を使って、より臨場感のある形で火事やそれに直面する人物たちに迫れるのではないかと思いました。みなさんにはまるで自分もバスに乗っていたかのように感じていただけたのではないかと思います。この状況を切り抜けられるだろうか、と不安になったのではないでしょうか。

私はそのために、登場人物たちの物語を描きたいと思いました。作品内で交差する様々な物語では、登場人物たちが「もう手遅れなのか?」と葛藤する姿を描いています。ケヴィンはもちろんですがメアリーも、また通信指令官や消防隊長を演じたユル・ヴァスケスも、「動くのが遅すぎたのでは?」という疑問に苦しみます。それはまさに、今日の世界を伝える物語なのではないでしょうか。

――先程の質問の続きとしてお聞きしますが、消防隊長が「毎年山火事が拡大している。それが事実なんだ。我々は本当に愚かだ」と語る台詞がありますね。

あれはこの問題についての唯一の台詞であり、とても重要な意味を持っています。この問題に関する台詞は一言に収めたかったので、ほかでは含みを持たせるだけにしています。あの台詞はまさに私たちがみな考えていること、感じていることですから、入れるべきだと考えました。

現実を映画で描くのではなく、「現実が映画全体に入り込んできた」

ロスト・バス

――リジー・ジョンソンの原著に対して、そしてパラダイスの山火事の被害を受けた方々に対して、責任をお感じになりましたか? また本作制作・編集中にカリフォルニアでさらなる山火事が次々と発生しましたが、この映画が2025年に公開されることになった今、そのことにも責任を感じましたか?

それはあると思います。私はこれまでにも実際の出来事をもとにした作品をたくさん制作してきました。そういう作品では、出来事を体験した人々や、あなたの言うように今体験している人々に対して、常に責任を持つべきだと思います。また、その映画が現実の世界に与える影響に対しても責任があります。だからこそ、この分野の映画を作ることはとても素晴らしいことなのです。運に恵まれ、適切に表現することできて、全員が協力して成功すれば、より大きな真実へと言葉以上に畳みかけてくる作品となるのですから。

もちろん制作者である私は、この作品についての判断はできません。みなさんが審判です。でも私は最後にこう考えていたのを覚えています。あと2週間で完成という最後の編集段階で、ロサンゼルスの山火事が発生したんです。それはショッキングで不穏な出来事で、なんだか非現実的な恐ろしい感じを受けました。ビリー(ウィリアム)・ゴールデンバーグは本作を見事に編集してくれましたが、急いで帰宅しなければなりませんでした。家や家族を失いかけていたのです。

現実が映画に入り込んできた、いや映画全体に入り込んできた、と言う方が適切かもしれません。そしてこの夏には欧州、フランスで100年に一度の大火災が発生しています。この映画はそれについて取り上げた物語だと感じる人もいるでしょう。実際にはこの作品が描いているのは当時のあの登場人物たち、つまりあの時に、あの場所で、あの火災に遭った人々なのですが、何かしらの形でそういった普遍的な真実も伝えられたらと思っています。その意図は伝わっていると思いますが、それを判断されるのはみなさんです。

ロスト・バス

――本作はあなたにとって5年ぶりの作品ですね。本当に取り組みたいと思えるアイデアやプロジェクトを見つけることは難しくなってきていますか?

時々「何年も休んでいましたね」と言われるのですが、私自身はそのようには感じていません。前作『この茫漠たる荒野で』がコロナ禍の最初の年(2020年)に発表されたことも関係していると思います。あの作品に関しては、その年に制作を完了せざるを得ず、年の終わりに公開でしたが、当時映画館は開いていませんでした。もともとクリスマスシーズンに合わせた公開だったんですが、あまり見られなかった印象があります。でも非常に誇りに思っている作品なので、機会があったら是非見てください。

この空白の期間が休んでいたと思われる理由なのでしょうが、実際には私はずっと忙しくしていました。もうすぐ撮影が始まる映画の脚本を書いていましたし、『ロスト・バス』も制作していましたから、家でじっとしていたわけではないんです。せっせと働いていましたよ。

作りたい題材を見つけるのが難しくなってきているか、という質問については、作りたいと思えるものを見つけるのはいつだって難しいものです。でも諦めずに取り組んでいれば、自然と見つかります。自分でアイデアを見つけることもあれば、いいアイデアが持ち込まれることもあります。そして運が良ければ、制作を実現できる人たちが見つかり、制作に取り掛かるわけです。決して当然のこととは思ってはいません。映画を作ることができるということは、人生における大きな恵みであり、特権なのです。私は若い映画制作者と話す時には、自分が作りたいと思う映画を作れ、と伝えています。人々が見たいと思う映画や、ほかの誰かがあなたが作るべきだと考える映画、作らなければという重圧から作られる映画ではなく、自分が何を伝えたいのかに正直に、忠実にしていれば間違えることはないのです。もし失敗したとしても、責めるべきなのは自分だけです。それが最善のやり方だと思います。自分自身に忠実に、自らの旅路を進むようにし、ほかの人がやっていることを気にしすぎず、技術を磨いてください。

その際に重要なポイントは、何を伝えたいのか?を考えることです。どんな物語を書く時でも、作品を作る時でも、自分はここで何を伝えたいのか、と自問すること。それがいわば創作活動の原点です。何を伝えたいのかを考えることから始めれば、言葉やイメージは後からついてきます。私はいつもそのように心がけています。映画制作の経験を重ね、年齢を重ね、そしてできれば徐々に成熟もしていく中で、自分が伝えたいことに正直でいられる自信がついてきます。そしてそれを信じて、迷うことなく信念を貫けるようになるのです。

――バス内で次第に緊張感が高まっていく様子が描かれており、特にアメリカが演じる箇所にはとても緊迫感がありましたが、あの部分はどのようにして思いついたのですか?

ロスト・バス

先程の話に戻りますが、最も重要なポイントは、デジタル処理しようという考えから一転し、実際の道路や交通状況の中でガスの炎の間をバスが走り抜けていくことにしたことだと思います。それにより現実感あふれる描写が実現しました。次に、映画ではよく使われる手法なのですが、バスに照明を取り付けませんでした。というのも、バスに照明を取り付けると、バスが非常に重くなるため通常通り運転するのが難しくなり、危険度も増します。またいかにも映画風に照らされてしまうと現実味も失われます。

そのため、「マジックアワー」と呼ばれる限られた時間帯に撮影する方向に向かいました。ただそれが意味していたのは、つまりあなたの質問の答えになるかと思うのですが、バスの中で感じるリアリティは本物だということです。実際にバスを運転していたので、観客のみなさんが見る内容は彼らが見ていたものと同じなのです。また、極めて限られた時間での撮影だったため、リハーサルに6、7時間かけ、安全面や演技に関する問題をすべて事前に確認していました。実際の撮影では(時間の関係で)数テイクしか撮ることができなかったため、バスの中にも緊張感が生まれたのだと思います。失敗はできないと全員が理解していたからです。

それは子どもたちにも影響を与えました。バスに乗っていた大勢の子どもは演技経験がなく、全員サンタフェの学校から来ていました。素晴らしい子たちでしたよ。現実を表現しようと必死に取り組んでくれました。でも子どもたちですから一日に何時間も働かせるわけにはいきません。非常に短い撮影時間に集中したおかげで、フレッシュな気持ちを保てたという利点もありました。1時間という短い時間で、子どもたちから迫力のある演技を引き出すことができたのです。

最後にもちろん、マシューとアメリカの貢献も大きいです。バスに乗っての撮影は楽ではありません。極めて狭い空間で、通路も非常に細い。座席も微妙に高く、乗っている人の顔もあまり見えません。でも、私は手を加えることはしたくありませんでしたから、実際のスクールバスを使い、そうした制約を受け入れることにしたのです。

そのため、マシューはすべての運転を自らしなければならず、アメリカもずっとバスに乗っていました。バスを降りる時間的な余裕はなかったので、彼らは何時間もバスに座ったままで過ごし、絆を深めました。いわば全員で恐ろしい体験を共有したわけで、それが最終的にはこの作品の鍵となったのだと思います。マシューとアメリカが子どもたちと一緒に体験したことが、この作品に強烈なリアリティと感情を与えたのでしょう。映画の最後、彼らが炎の中から脱出し帰途に着く時の演技は本当に素晴らしく現実味がありました。親たちの演技も素晴らしかったです。この映画の制作という体験全体を通して特別なものがありましたし、終わった時には全員にとって極めて感慨深い、現実味のある経験となりました。それが本編に現れているのだと思います。

Apple Original Films『ロスト・バス』は、Apple TV+にて10月3日(金)配信スタート。

(海外ドラマNAVI)


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Photo:『ロスト・バス』画像・映像提供 Apple

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海外ドラマNAVI編集部

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