ミュージカルドラマが人気の昨今。特に、カルチャーに関心のある都会派インテリ女子たちが夢中なのが、NYのブロードウェイが舞台のショービズドラマ『ＳＭＡＳＨ／スマッシュ』。マリリン・モンローを描いた劇中劇のミュージカル「Bombshell」を取り巻く女優たちが、現代を生きる女性を魅了します。
元カントリーガールのキャリアウーマンなら、このドラマの主役である新人女優カレン（キャサリン・マクフィー）の夢を追う姿に自分自身の姿を重ねるはず。そして、競争の激しい都会でがんばる女性は誰しも、カレンのライバルで、ビッチ臭を匂わせながらも繊細で脆い部分のあるアイヴィー（メーガン・ヒルティ）に悶えながらも共感してしまうのです。
今回は、そんな『ＳＭＡＳＨ』のシーズン2の話です。
シーズン1のラストでは、ボストンのプレビュー公演で大喝采を受けた「Bombshell」。その波に乗ってシーズン2では、「Bombshell」ブロードウェイ上演へまっしぐら！...というわけには当然いかず、不正な出資、プロデューサーの変更、シナリオの大改稿など、シーズン1同様にミュージカル製作の裏側ではトラブル続き。さすがスキャンダラスな人生を送ったマリリン・モンローを描いた作品らしく、作品自体の運命も波荒く翻弄されます。
シーズン2でも「Bombshell」のプロデュースを巡って元夫婦のアイリーン（アンジェリカ・ヒューストン）とジェリーの攻防、作曲家トム（クリスチャン・ポール）と演出家デレク（ジャック・ダヴェンポート）のライバル争い、カレンとアイヴィーの駆け引き...などは相変わらず。だけど、舞台裏のゴタゴタのみに集中しているところがシーズン1とは異なるところ。
シーズン1では、養子問題、不倫、息子の家出など、いろいろあった作詞家ジュリア（デブラ・メッシング）のプライベートなサブストーリーはばっさりさっぱりなくなっています。やっぱり、シアター外での出来事いろいろ盛り過ぎだろ！ という批判がすごかったからでしょうか。
さらに、シリーズ2では「Bombshell」以外のミュージカル作品とその裏側についても描かれているのが、ブロードウェイ好きには嬉しいポイント。
ニューフェイスの才能あふれるジミー（ジェレミー・ジョーダン）を筆頭とした若い世代のミュージカル「Hit List」、ジェニファー・ハドソン演じるヴェロニカのワンマンショー、アイヴィー出演のミュージカル「Dangerous Liaisons／危険な関係」など、各舞台の裏側で起きるドラマが楽しめます。
で、気になる新人女優カレンの成長具合と言えば、シーズン2では女王様スターにのし上がっています。アイヴィーを鼻であしらい、あの皮肉やで女たらしの演出家デレクと対等にやり合い、いや、時には彼を思い切り手のひらで転がします。強くなったなー、やっぱりショービズって怖いわね、と思いきや、彼女のナイーブな面もしっかり残っています。とりわけ、ジミーへの恋心を歌うカレンの切ない歌声に、見ている方がキュンとしちゃいます。
このシーズン2の見どころのひとつは、このカレンとジミーのデュオ。カレン役のキャサリン・マクフィーの美声は語るまでもなく、ブロードウェイで活躍してきたジェレミー・ジョーダンの実力は高く、ふたりの迫力ある情熱的なパフォーマンスに圧倒されます。俳優陣の魂のこもったショーを楽しむのが『ＳＭＡＳＨ』の最も正しい見方だと改めて実感。
さて、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮のミュージカルドラマ！ ということで、鳴り物入りで始まった『ＳＭＡＳＨ』ですが、ふたを開けてみれば視聴率は下がる一方で「スマッシュ＝爆発的人気」からはどんどん遠ざかっています。さらに1年近くの間を空けて始まったシーズン2は、ファンの熱も冷めたのか、挽回するどころかまったくぱっとせず。ドラマ自体は面白くなっているはずなんですが...。
残念ながら、シーズン3はあり得ないとほぼ確定。シーズン2ファイナルはドラマ自体のラストともとれるような終わり方となるそう。ま、納得の行くクオリティの音楽やキャストで最後までやり通せたので、製作側もこれで終わっても本望だとか。数字とクリエイティブな完成度って比例するとは限らないんだな、ああ無情。
波瀾万丈な「Bombshell」製作と同じく、このドラマ自体の早すぎる終焉もまた、マリリン・モンローの生き急ぎすぎた人生にも似て感慨深い、とまとめておきましょうか。
しかし、忘れてはいけないのが、ドラマ内のミュージカルを本場のブロードウェイで公演する、という本来のスピルバーグの構想。『ＳＭＡＳＨ』が終了しても、いつかブロードウェイで「Bombshell」を見られる日が来るかもしれません。期待して待っていたいですね。
