Netflixのマーベル作品第2弾『ジェシカ・ジョーンズ』で、ヒロイン、ジェシカを演じるクリステン・リッターと、ジェシカの親友トリッシュを演じるレイチェル・テイラーが来日! 『ジェシカ・ジョーンズ』撮影秘話からNetflixの魅力まで、大いに語ってくれた。
――『ジェシカ・ジョーンズ』はアメコミベースの作品の中でもドラマ性を重視している作品だと思うのですが、お二人が演じる上で最も重視している点は何なのでしょう?
クリステン・リッター:キャラクターがスーパーヒーローだからと言って、役へのアプローチが何か変わるということはないの。私の場合はどのキャラクターでも大事にしているのは準備の段階。今回のジェシカ役も、原作コミックスの「エイリアス」を読み込むのはもちろん、フィジカル・トレーニングもしたし、何より素晴らしい脚本をもとにキャラクターを構築していったの。私はこのドラマに描かれる前の彼女の人生というのをすごく考えていて、もしかしたらその部分が役作りの中でも一番大きかったかもしれない。何が彼女に起きたのか、どんな影響を与えたのか、彼女の普段の所作を作り上げるバックストーリーの部分が重要だし、常に彼女を生きて演じるという事を大事にしているの。
レイチェル・テイラー:トリッシュはドラマの中で二人の人物と大きな関係性を築いていくんだけど、特にキャラクターを演じる上で一番のポイントになったのはジェシカとの女の友情だったわ。彼女とジェシカの友情にはインスピレーションを感じたし、興味深いものがある。二人はお互いに忠誠心を持っているけれど、過去に起こった何かがしこりとなって残っているという、決してひと言では説明できない複雑で深みのある関係なの。だから彼女を演じる時は自分自身の女友達との関係を応用したり、いろいろ考えながら演じていたわ。
――マーベルコミックスが原作ですが、本作以外でマーベル作品のお気に入りはありますか?
クリステン:実は『ジェシカ・ジョーンズ』をやるまで、コミックスは読んだ事がなかったの。この作品の原作「エイリアス」で初めてコミックスを読んだんだけど、その体験は素晴らしいものだった。すっかり没入してしまったし、想像力をすごく刺激してくれて、子どもの頃からこういうものを読んでいたかったと思ったわ。マーベル映画なら『アイアンマン』が好き。アイアンマンにはジェシカみたいなちょっと小生意気な感じがあるから(笑)。
レイチェル:私はタスマニア出身で、アメリカのような大きなコミック文化もなかったから、やっぱりあまりコミックスには触れずに成長してきたんだけど、映画なら私も『アイアンマン』が好き。でも本作以外で、って事だったけど、一番はやっぱり『ジェシカ・ジョーンズ』なの。すごくリアルに響くものがあるから。マーベル作品が素晴らしいのは超人的なキャラクターがどうこうというより、そのキャラクターの人間性を掘り下げているところ。そういう意味でもジェシカが大好きなの。
――他の共演者たちとの関係はいかがですか?
レイチェル:私の場合はクリステンと一緒のシーンが多いわけだけど、彼女は本当に素晴らしい女優だし、キャスティングされた段階から二人の間にはケミストリーがあったから、そこに自分の経験を加味しながらスムーズに関係性を作ることができたわ。もう一人、トリッシュに関わるキャラクターにウィルという人物がいるけど、実は彼もオーストラリア人なの。みなさんもどこかで日本人に会ったら、文化的なケミストリーが生まれると思うんだけど、そういうものがサブテクスト的にあったから、こちらもすごくスムーズだったわ。彼との関係性にはダークな部分もあったから、なかなか演じ甲斐もあったし楽しかったわ。
クリステン:私はもともと学生時代もカフェテリアで女子のテーブルがあったらそっちにふわーって行ってしまうような、女友達といるのが楽しいタイプなの。でもこのドラマでは出ずっぱりで一人のシーンも多かったし、ゲスト出演の俳優さんたちとの撮影も多かったから、撮影ではちょっと孤独を感じる事もあって。だからレイチェルと一緒のシーンの時は、もう「レイチェル~~!!」って感じになっちゃって(笑)。ルーク役のマイクにも同じような感じで、旧友に会ったような感覚になってたわ。ドラマそのものがジェシカの視点から描かれているし、彼女の心情風景を描いているような感じだから、どうしても孤独な時間ができてしまうのは仕方ないんだけどね。
レイチェル:スイッチをオン・オフできるタイプで良かったわよね。切れなかったらかなりの孤独感よ(笑)。
――撮影で大変だった事は?
クリステン:TVシリーズの撮影がハードだというのはみなさんも知っているかと思うんだけど、今回は夜間撮影も多かったから本当に大変だったの。夜通し撮影をして翌朝5時からまた撮影、というスケジュールもザラにあったし、そのイレギュラーに合わせるのが一番苦労したわ(笑)。
レイチェル:私は今回、助演というポジションだから、作品世界に出たり入ったりしなければならなくて、そこがクリステンとはある意味で逆の挑戦だったわ。原作に登場するパッツィ・ウォーカーというキャラクターが、この作品ではトリッシュの子ども時代という設定なんだけど、原作のパッツィは明るくて軽いトーン、でもドラマのトリッシュはもっとダークで、そのバランスを取るのも難しかった。でもクリエイターや監督たちを信じてついて行ったのよ。
――この作品に出演して発見した新しい出来事はありましたか?
レイチェル:ダークな部分を持った作品だから、自分自身の人生を考察する機会にもなったわ。メタファー的に女性に対する暴力であったり、トラウマであったり、虐待を含んだ関係性に触れているから、いろいろ考えさせられた。でも演じている時はそういう事に思いを馳せても、気持ちをきちんと切り替えて、オフになったらそこに留まらないようにしていたわ。
クリステン:もともと私は演技をしたいという気持ちが強くてこの世界に身を置いているわけなんだけど、おかげさまでこの作品ではめいいっぱい演技をする事ができたわ。私はちょっとコントロール・フリークなところがあって、周りの人をつい観察してしまうようなところがあるんだけど、『ジェシカ・ジョーンズ』では140日間の撮影でオフはたった2日というスケジュールだったおかげで、毎日じっくり現場を見て回れたし、最終的にはカメラのレンズの用途とか、照明の位置関係なんかも全部知る事が出来たの。言ってみれば監督になるための教育をタダで受けられたようなものだから、次はぜひ監督してみたいという気持ちになったわ。これが今回発見した事ね。
――クリステンさんはNetflixのドラマに出たいとずっと冷蔵庫に貼っていたそうですが、お二人から見たNetflix作品の魅力は? 実際に出演してみてどうでした?
クリステン:今TVシリーズの制作で最もクオリティの高い作品を制作するのがNetflixだと思うの。私が特に大好きなのは、どのドラマを見てもキャラクターが全員リアルに見えるところ。私自身こういうキャラクターを演じた事がなかったから、キャスティングにはリスクもあったと思うけど、Netflixの作品にはそういうキャスティングも多くて、リスクを引き受け、なおかつ成功しているわ。『ブラッドライン』で言えばベン・メンデルソーンなんかもそうだし、『フリークス学園』のリンダ・カーデリーニがこんなキャラクターを演じるの!? と驚かせてくれる。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』にしても、全員が本当にこういう人物がいそうと感じられるリアルな存在感があるでしょ。そうしたリアリティを生み出せる理由のひとつには、あまり説明セリフを入れなくていいという面があるのかも。Netflix作品は一挙配信だから、あまり説明セリフは必要ないし、その分キャラクターの内面を掘り下げる事ができるから。だからクリエイターも俳優もみんなNetflixで仕事をしたがるのよ。って、これじゃ私Netflixの営業もできるわね!(笑)
レイチェル:私も出演する前からNetflixのユーザーだったし、大好きだったの。見たい時に見られる、イッキ見したければできる、ユーザーのライフスタイルに合わせやすいシステムよね。これまでのTVシリーズだと現代のライフスタイルには少しフィットしなくなっている部分があるのは否めないから。これまではいちユーザーとして重宝していたけど、実際にNetflix作品に出演してみて分かったのは、Netflixがリスクを恐れずに作品を作る姿勢ね。CMが入らないからスポンサーにおもねらずにクリエイターが本当に作りたいものを制作する事ができる、そして視聴者が本当に見たい作品が制作できる。これは本当に素晴らしい事だと思うし、ドラマってやっぱりこうあるべきだと思うの。
『ジェシカ・ジョーンズ』はNetflixで配信中!
Photo:『ジェシカ・ジョーンズ』(C)Netflix. All Rights Reserved.
クリステン・リッター、レイチェル・テイラー