誰も知らないホロコーストがここに...。アカデミー賞本命『サウルの息子』本編映像解禁!

第2次世界大戦下に強制収容所へ送られたユダヤ人男性が、同胞の死体処理係(=ゾンダーコマンド)に任命され、生きるために自分を押し殺しながらも人間らしさを貫こうとする姿を描き、世界中で称賛の嵐を巻き起こしている映画『サウルの息子』。1月23日(土)より公開となる本作から、本編映像の一部が解禁された。

本作は、2015年カンヌ国際映画祭においてグランプリをはじめ4冠達成。さらにゴールデン・グローブ賞外国語映画賞やナショナル・ボード・オブ・レビュー外国語映画賞など、これまでに30以上の賞を手にしている。第88回アカデミー賞においても外国語映画賞でノミネートされ、最有力候補と言われる話題作だ。

今回解禁された映像では、主人公のサウルは仲間の写真撮影を助けるため、わざと戸口に立って作業しているふりをしながら彼の姿を隠そうとする。すると仲間はこの惨劇を世界に知らせるため、決死の想いでカメラのシャッターを切る。大量の遺体を焼却しているために立ち込める大量の煙を目の当たりにし、呆然と立ちすくむサウル。その煙の中からナチスの部隊が静かに近づいてくる...という場面。

このシーンは、本作が長編デビューとなるハンガリーの期待の新鋭ネメシュ・ラースロー監督が大きく影響を受けた、実在する4枚の写真がモデルとなっている。その写真は、1944年にアウシュヴィッツで撮影されたもので、収容者による写真はこの4枚しか存在しないと言われている。ネメシュ監督は「あの4枚の写真には深く影響されました。大量虐殺を証言する物的証拠となり、根本的な問いかけをしています。死や残酷さに直面した時、どんな視点に立つべきか? 我々はこれを、サウルが収容所内を旅する間、突然、ほんの一瞬だけ、虐殺の光景を構築することに参加するという形で、映画の中心部分に入れ込んでいます」とコメントしている。

これまでにもホロコーストをテーマとした作品はあったが、ここまでリアルにホロコーストの、そして強制収容所内の惨劇を見せてくれる映画はあっただろうか。解禁された映像では、ナチスの目を盗み、極限状態の中でも自分のできることを全うしようとする彼らの尊厳を感じることができる。そんな彼らの後ろでは遺体が運ばれており、次第に増えていく煙からでも悲惨な状況を想像せずにはいられない。

1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。サウル(ルーリグ・ゲーザ)はハンガリー系のユダヤ人で、ゾンダーコマンドとして働いている。ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊のこと。彼らは生き延びるためには、人間としての感情を押し殺すしか術がない。ある日サウルは、ガス室で生き残った息子とおぼしき少年を発見する。少年は彼の目の前ですぐさま殺されてしまうが、サウルはなんとかラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出し、ユダヤ教の教義にのっとって手厚く埋葬してやろうと収容所内を奔走する。そんな中、ゾンダーコマンドの間では収容所脱走計画が秘密裏に進んでいた...。

映画『サウルの息子』は、1月23日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。(海外ドラマNAVI)

Photo:映画『サウルの息子』
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