ユーモアの陰にも深いテーマを描写 崖っぷち女4人組のテンション高めコメディ『Florida Girls』

貧乏生活の真っただ中でも、テンションだけはいつも絶好調。そんなフロリダ女子たち4人組が騒動を繰り広げる『Florida Girls(原題)』が米Pop TVで7月上旬から放送されている。親友グループのやりたい放題な友情物語を、ときおり訪れる切ないシーンが引き締める。

貧乏仲間に裏切りの悲劇が

フロリダ州の西海岸、クリアウォーターの街に住む4人の女性たち。高校を中退した彼女たちはトレーラーハウスで共同生活を送り、バーでともに働きながら生計を立てている。

グループのまとめ役は、ケンカっ早い性格のケイトリン(メラニー・フィールド)。最近まで彼氏がいたが、運悪くワニがぱくり。帰らぬ人となった彼を忘れるかのように、毎晩どんちゃん騒ぎに興じている。ほかに、母親と犬猿の仲のエリカ(パティ・グッゲンハイム)と、彼氏にプロポーズさせようと策を巡らせるジェイラ(ラシ・モズリー)などが騒々しい日々のお供だ。貧乏ながらも楽しい日々を過ごしてきた。

そんな仲間とのビーチライフを楽しみつつも、どこか表情がさえないグループの常識屋・シェルビー(ローラ・チン)。というのも、元いた5人目の仲間が皆に内緒で高卒認定試験に合格し、トレーラーハウスを去ってしまったのだ。彼女に触発されたシェルビーは、人生の立て直しを決意。カオスそのものだった4人組に変化が訪れようとしていたが、そう簡単にはその性分は直らず...。

今日をエンジョイできるなら

バーで働くだけでは収入が足りず、無茶な計画に飛びつく羽目になるのがいつものパターン。ウォーターパークで遊ぼうと突然思い立った彼女たちだが、真面目なシェルビーが唯一の住居兼移動手段であるトレーラーハウスに乗って出かけてしまったことに気づく――。がくぜんとする仲間たち。それでもなんとかパークへたどり着くと、どうしてもボートに乗りたい彼女は、知り合いの金持ちから無理やり借りる約束を取りつける。生活資金もきちんとした車もない一味だが、遊びのためなら全力で道を開拓。そのガッツは尊敬して良いのやら悪いのやら。盗みを働いたり不用品を人に売りつけたりするのが彼女たちの常とう手段、とNew York Timesはコメントする。

米Hollywood Reporterは登場人物を、「驚くほど礼儀正しい露出狂」「痩せこけたドラッグ中毒者」「金に目がくらんだ質屋たち」などを列挙して紹介。健康保険もまっとうな寝場所もない主役たちの、困窮した崖っぷち生活に目が釘付けだ。

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悲しげな表情に心は揺れて

さらに話数を重ねると、ユーモアよりもメッセージ性の方がさらに強く心に残るように。ブルーカラーの暮らしの描写に始まり、混血、宗教、職場でのセクハラ問題へと徐々に視野を広げてゆく。場合によっては踏み込んだ語り口となっており、感情に訴えることすらある、とHollywood Reporterは指摘する。テンション高めのコメディだが、メッセージ性の深さという意外な一面に驚かされる。

いつも陽気に見える4人だが、その人生を振り返れば、親に恵まれなかったという悲しい過去が。親とともに夕食をとる習慣のなかったシェルビーは、家族の食卓という表現を聞いて混乱。「どういうこと? 感謝祭の日が永遠に続くような感じなの?」との反応には、ユーモアを超えて観ていて心が痛む。New York Timesが述べるように、親の不在や虐待が作品の陰のテーマとなっているようだ。

コミカルなストーリーに社会問題への洞察を練りこんだ『Florida Girls』は、米Pop TVで放送中。(海外ドラマNAVI)

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メラニー・フィールド
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